14話 マッスル説明会
通された先は石造りの大広間。
室内競技場ほどの広い空間に、男の挨拶がこだまする。
「諸君!おはマッスル!今日もナイスなバルクを目指して精進し給え!」
「「「…………………」」」
筋骨隆々な体躯にスキンヘッド。
鋭い視線で一同を捉えるこの男こそ、先程話に出ていた「教官」だろう。
「元気が足りんぞ!おはマッスル!!!」
「「「………おはマッスル!!!」」」
「声がデカいわ!バカ者共!!」
((えー……))
開幕から自由すぎる男の言動に、一同ドン引き。
しかし、当の本人はそんなもの意に介さないといった様子で、話し始めた。
「俺の名はザッパだ、冒険者見習いの育成を任されている。気軽にザッパ教官と呼んでくれていいぞ、呼び捨てにしたら殺すがな!ガァッハッハ!えー……それでは試験の説明を始める。」
情緒が掴めな過ぎて怖ぇぇ。
冗談を言ってるのか本心で言ってるのか、いや本心で言ってそうだなこれ。
集められた者はざっと見ただけでも200人以上。
その半数が、教官の支離滅裂な言動に戸惑っていた。
では、もう半数はというと。
「おい、あいつ女だぞ…。」
「どうして女がここに…?」
「めちゃくちゃ美人だな……。」
「バカ、さっきヴィル様が話してただろ…。戦えるんだとよ…。」
「あの子の近く、いい匂いした…。」
ヒソヒソとした話し声が聞こえてくる。
話題はやはり私である。
いや、約1名キモくなかったか?
注目を集めてしまうのは仕方ないが、全身に視線が刺さりくすぐったい。
教官の説明聞きいてなさいよ。これだから男は。
前世の自分は棚に上げ、私は周囲の男達に向けてため息をついた。
とはいえ、こればかりは慣れるしかないのだろう。
強くなって実力者だと周囲に認知されれば、あからさまな視線を送ってくるものも減る……ハズだ。
それより今は試験である。
確かウンベールの話だと、合格まで3ヶ月程は掛かるとか。
「この部屋に入った際、諸君らには魔法を仕掛けさせて貰った。各々、右手に魔力を込め給え。」
「おお!なんだこれ!」
「手の甲から数字が浮かんできたぞ!」
「その数字、ポイントを初期値である『0』から規定値に上げるのが試験合格の条件だ。」
言われて魔力を右手に集める。
手の甲から数字が…数字…あれ、出ない。
辺りを見回しても、数字が浮かばないのは私だけのようだ。
「あのー、何も出てこないんですけど…。」
「む、あぁ確か君はギルドマスターが言ってた子だな。魔力ゼロというワケでもないはずだが……仕方ない、俺の使い魔を貸してやろう。名前は『ハンゾウ』こいつが君のポイントを管理してくれる。」
めちゃくちゃ話し通じるじゃん教官!
ってかギルドマスターって……?
疑問に思った次の瞬間、教官の影から使い魔の黒猫が現れた。
黒猫は教官の元から私の影の中へとスルリと移動する。
何やら和風な名前が気になるが、ひとまずそこは黙っておこう。
「では次に、ポイントを増やす方法だが、これは大きく分けて二つある。『ギルド地下のダンジョンにて魔物を討伐する』または『闘技場にて他の冒険者見習いとポイントを奪い合う』だな。」
ここの地下にダンジョンがあるのか。
あまりに設備が整いすぎてるなギルド。
「ダンジョンは全十階層の地下構造だ。下の階層へ進むほど魔物は強力になるが、その分得られるポイントは大きい。
パーティー人数は連携を取れる上限の五人まで。ただし!最下層の十階層のみ人数の上限は設けない。ここにいる全員で挑んでもいいぞ?過半数は死ぬがな!ガァッハッハ!」
大笑いが広間に響く。
ひとしきり笑った後、教官はまたスンと落ち着いた表情に戻った。
「闘技場では各々好きに戦ってくれたまえ。双方が納得の上なら死合でも構わない。だが、審判はギルド側から出すため、ポイントの八百長は出来ないからな。当然、闘技場では戦わずダンジョンのみに専念するのも自由だ。」
なるほど。
ダンジョンでは背中を預ける仲間であり、闘技場では競い合うライバルでもあると。
いかにも冒険者らしいルールである。
説明し終えた教官は「最後に!」と付け加えた。
「気になるポイントの規定値だが、昔は五万ポイントが条件だった。しかし!知っての通り昨今は人材強化の為、二十万ポイントが規定ラインだ!おおよそ一年は掛かるな!」
はぁ!?一年!?
そんなに掛かるって聞いてないぞウンベール!
私が持っている滞在費は3ヶ月を目安にしたものだ。
一年なんてとてもじゃないが保たない!
「詳しい事は、各々割り振られた寮棟の部屋にて確認せよ!以上!解ァ散!」
お金…どうしよ……。




