11話 スキル
〈スキル〉、それは魂に呼応する異能。
魔力というエネルギ―を身体に宿すコトで拡張された、身体機能の一つとも言われている。
原則として、〈スキル〉は幼少の頃に発現した一種類のみに限られるが、その効果は絶大である。
例えばゴトウの「未来視」や、魔力を込めた武器を創れるミーシャの「魔具鍛造」がそれだ。
これらの能力は魔法でさえ再現不可能な超常であり、まさしく異能と呼ぶに相応しい。
だが、〈スキル〉は基本的に男性にしか発現しない。
女性で〈スキル〉が発現する例は珍しく、それ故にミーシャは特別なのだ。うちの幼馴染みホント天才。
因みに、私も他の女性達の例に漏れず〈スキル〉は無い。
この「特殊な眼」がそうなのかもと思っていたが、ウンベールのスキル「鑑定」で診て貰ったところ、眼はただの膨大な魔力炉でしかないらしい。
〈スキル〉も発現して欲しかったが、魔力量が多いに越したことはない。
話が少し逸れた。
要するにそれだけ〈スキル〉は特殊な力というコトだ。
「あの人の名はヴィル。ジブンと同じく今日から冒険者見習いになる予定で、始まりの冒険者様と同じ容姿に同じ〈スキル〉を持つ。『次代の英雄』『英雄の生まれ変わり』と呼ばれてる人ッス。」
カニス君は一呼吸置いてから、更に続けた。
「お二人もご存知と思うッスけど、〈スキル〉は持ち主の在り方で能力が決まるッス。つまり、あの人は生まれながらの英雄なんスよ。加えてあの外見ッスからね……。」
やはり思う所があるのか、複雑な表情で言い終える。
ヴィルと呼ばれた青年の方を向きながら、私とミーシャはゴクリと唾を飲んだ。
「確かに……。」
「うん、たしかに……。」
「「めちゃくちゃイケメンだね……!」」
「そこじゃねえッス!いや仰る通りツラはいいッスけど!」
いやしかし本当に整った容姿だな。
彫りが深いというか、先程の銅像よりも彫刻っぽいぞ。
こうして話している今も、青年の一挙手一投足に黄色い声が鳴り止まない。
高揚している女性陣の気持ちも少しは分かる。
男性が恋愛対象になったわけでは無いのだが、なんだろうな。
トキメいてはなくとも、彼を見ていると無性に身体がソワソワするのだ。
ミーシャも同じ気持ちなのか、妙に落ち着きがない。
とりあえず、あのイケメン君には極力近づかないでおこう。
周りの女性達に何をされるか分かったモノじゃないし、触らぬ神になんとやら。
神じゃなくて英雄らしいが、まぁ誤差だろう。
「ん?ねぇあの人、今シャロンのこと見てなかった?」
「偶然視界に入っただけでしょ。怖いコト言わないでね。」
「何でそんなに震えてるんスか。」
「女子には色々あるんだって…。」
そう、忘れもしない高校生の頃。
学年一の仲良し女子グループが、とある男子生徒を巡って不仲になる過程を目撃した。
あれは喧嘩などという生易しい光景ではない。
例えるなら、野生の狩りだ。
自分と同じ獲物を狙う者がいれば、まずはそいつを排除する。
争いを避ける方法は一つ。黙って獲物を譲るしかない。
結局のところ、関わらないのが得策である。
しばらく談笑を続けていると、カニス君がハッとした声を漏らした。
「そろそろギルドの受付が始まる時間ッスね。お二人とも、ジブンの話に付き合ってくれて感謝ッス!またお会いましょう!」
「もう時間か。それじゃあミーシャ、少しの間お別れだね。」
「いつでもこっちに来てくれて良いからね!あと、あんまりやり過ぎたら駄目だよ!」
別れを告げ、二方向に歩き出す。
私とカニス君はギルド側、ミーシャは反対の学園側へと足を踏み入れるのだった。
「…………………」
「フフフ〜ン♪〜♪〜」
カニス君と横並びに、ギルド側のエリアへ入った。
このエリアを進んだところに、ギルド本部という建物があるらしい。
そこで冒険者になる為の申請が出来るとのコト。
「…………………」
「フフフ〜ン♪〜♪〜」
いやー楽しみだなギルド。
ゲームとかならお決まりの施設だし、元男性としてワクワクせざるを得ない。
今の私の力量がどこまで通じるのか、早く試したいものだ。
「……………ッで……」
「♪〜、どったのカニス君。」
隣でモゴモゴと言い淀むカニス君。
もしやトイレに行きたいのではと思った矢先、両手を振り下ろし声を張り上げた。
「なんッでこっち側に来てるんスかシャロンさん!!!」
「だって私もこっちに用があるし」
「はああああああ!!!」
「というか、私も冒険者になりに来たんだよ。」
「はああああああ!!!!」
広場で言ってなかったっけ。
そういえば、イケメン君の登場にかき消されてたな。
「どういうことッスかぁぁぁ!!!!」




