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10話 中央都市カラバ

「しっかしデカいなー。」


前方には空高くそびえ立つ石壁。

てっぺんを見てみようと顔を上げるが、日光に視界を遮られてしまう。

巨大都市を円形に囲うその外壁は、もはや都市というより要塞に近い印象を受ける。

外壁の冷たさは魔物に対する人間達の拒絶の表れだろう。


「次のモノ!こちらへ来い!」


前方から兵士にハキハキとした声で呼ばれた。

次は私達の順番の様だ。


「身体検査を行わせてもらう。悪いが、他国で盗んだ宝石等を持ち込まれては厄介だからな。」


「もちろん、どうぞどうぞ。ヘンな物は無いですよ。」


両手を広げ何も無いですよとアピールすると、兵士が少し狼狽えた。


「ゴホン。失礼、女性であったか。大声で呼んで悪かったな。」


「いえいえ、お仕事ご苦労様であります。」


敬礼と共に兵士を労う。

兵士は側にいた女性と交代し、その女性が私とミーシャの身体検査をしてくれた。


「貴女達、もしかして女の子二人だけなの?」


「あー……えっと、ここまで冒険者さんが護衛をしてくれたんです。」


「それはそうよね。よし、持ち物も問題無いわ。それじゃあ中へ入りなさい。ようこそ中央都市カラバへ。」


都市の内側へと足を踏み入れる。

するとそこには、おとぎ話に出てくる様な、中世ヨーロッパを思わせる石とレンガの街並みが広がっていた。

綺麗な外観も素晴らしいが、なによりデカい、高い、広い。

どの建物もスケールが大きく、どこを向いても圧巻だ。


「さすがは中央都市。壮観だね、ミーシャ。………ミーシャ?」


そういえば先程から、ミーシャの声が聞こえない。

何事かと思い、横にいるミーシャへ顔を向けると――


「ぁ………ぁ……」


そこには、口を大きく開けたまま放心しているミーシャがいた。

心ここにあらず。街並みに圧倒されて声を発せないようだ。


無理もない。

考えてみれば、産まれてからずっと村の中で育って来たミーシャからすれば、人生で初めて見る都会の光景だ。

それこそ、異世界にでも迷い込んだ気分だろう。


「お~いミーシャ。ミーシャさん〜。急がないと遅刻しちゃうよー。」


「ぁ………ぁ……」


駄目そう。

表情筋が完全に固まってしまっている。

とりあえず歩いてはくれているのでゆっくりと進もう。




ーーーー数十分後


ひとまず、街の中心部までやって来た。

この街は私達が入ってきた南側と奥の北側とで、大きく半分に二分されていた。

といっても、物理的な意味ではなく、別けられているのはその役割だ。


南側は市街区。

この街に住まう人達の家、飲食店や洋服屋など、生活に必要な施設が揃っている。


そして、北側こそはこの街のメイン。

今回の旅の目的である〈ギルド〉が存在する区域だ。

北区ではさらに西と東で二分されており、西側が〈ギルド〉で東側が〈学園〉となっていた。

少し観察したが、必要が無いからかギルド側には男性しか入っていかず、同じく学園側には女性しか足を踏み入れていない。


現在私達がいる都市中心部は、草木に囲まれた円形の広場である。

レンガ作りのベンチに座った人達が、談笑を楽しんでいる。


自然溢れる広場の光景に、どことなく村の風景を想起していると、突然ミーシャがその場で跳ね始めた。


「凄い!凄いよシャロン!こんな世界があったなんてウチ知らなかった!」


「おっ、ようやく感情が追いついたみたいだね。」


「うん!ホントにビックリした!家はおっきいし人は沢山いるし!最高だよこの街!」


最高とまできた。

この街を頑張って創り上げた人達が聞いたら泣いて喜ぶよ。きっと。


「全部が初めましてだよ!ねえねえ!あの銅像は何かなー!」


テンションMAXのミーシャが指をさしたのは広場のさらに中心。

そこには一体の男性の銅像が立っていた。


銅像は右手に持った旗を掲げ、その身は鎧に守られていた。

キリッとした目に優しげな表情で遠くを見据えている。

鼻筋が通っており、見るからに美形であったコトが分かる。


「私も見たことないかな。誰か有名な人なんだろうけど。」


残念ながらその外見に見覚えは無い。

この世界の本にも人物の絵が載っていたりするが、如何せん村で手に入る本には限りがあった。


(こうなると、ゴトウに深く話を聞けなかったのが悔やまれるな。)


突然現れ突然去っていったかの人物なら、この世界の歴史にも詳しそうだが、この場にいない者を思っても仕方ない。

そうして思考を切り替えようした瞬間、付近にいた男性が話しかけてきた。


「あれは『始まりの冒険者様』ッスよ。世界初の冒険者パーティを結成した方で、そのリーダーッス。自身の命と引き換えにこの世界を救ってくださった英雄っスよ。」


声を掛けてきたのは私達と同じ歳くらいの若い青年だった。

黒いフワフワとした髪にガタいの良い身体。

中華服を思わせる装いには袖が無く、鍛え抜かれたと一目で分かるゴツゴツした腕が露出している。


「へー!そんなに偉大な人だったんだ!」


「教えてくれてありがとう。ところで貴方は?」


私が質問すると、青年は真っ直ぐな声で答える。


「いきなりスンマセン!ジブンは『始まりの冒険者様』の大ファンで、お二人の会話を聞いて居ても立ってもいられなくて……。申し遅れました!名前はカニスッス!」


「ウチはミーシャ!よろしく!」


「私はシャロン。よろしくねカニス君。」


私達が自己紹介を済ませると、カニス君は「よろしくッス!」と勢い良く頭を下げてきた。

なんというか、常に全力で人懐っこく、犬みたいな人物だ。


柔らかそうな黒髪を撫でたくなる衝動を抑え、話を続ける。


「ファンって事はカニス君も冒険者なの?」


「いえ、ジブンもこの街には来たばかりで。今日ギルドに行って、冒険者見習いになるつもりなんス。」


「へぇ~、奇遇だね。実は私も冒」


「キャ〜〜//」


答えようとした私の声は黄色い歓声にかき消された。

何事かと思い声のした方へ目を向けると、広場の女性たちが遠巻きに一人の男性を見つめていた。


男性は白銀の鎧に身を包み、堂々とした表情で歩いている。

金色の短髪を揺らしながら女性たちへ手を振り返すその顔は見るからに美形だ。

鼻筋が通っており―――いやまてよ?


「ねえカニス君。あの男の人って…。」


私の指した人物を見たカニス君が、複雑な表情で答える。


「あの人の名はヴィル。ジブンと同じく今日から冒険者見習いになる予定で、始まりの冒険者様と同じ容姿に同じ〈スキル〉を持つ。『次代の英雄』『英雄の生まれ変わり』と呼ばれてる人ッス。」

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