第6話 ドン引き作戦第1段階目決行
大丈夫カナ?
「着きましたよ、聖女様」
「ありがと!ロイアント」
エリファーは満面の笑みで礼を言い、車を降りた。
ロイアントは静かに頭を下げ、車を走らせて去っていく。
しかし彼女の視線の先には、驚愕の建物がそびえ立っていた。
「えっ……うそ……会場、お城じゃない!?」
パーティーと聞いてはいたが、まさか本物の城とは思っていなかった。
豪奢すぎる会場に、エリファーは思わず顔をしかめる。
(この国、貧困層が多いのに……どこにそんな金があるのよ)
王族に対する不信感が、彼女の胸に渦巻いていた。
贅を尽くした城を目の前にして、エリファーの気分はどんどん沈んでいく。
そんな中――会場がざわついた。
「皆さん、お集まりありがとうございます。第二王子、レイン・マートルです」
王子の声と同時に、ピンク色の歓声が上がる。
周囲の女性たちが一斉に悲鳴をあげるなか、エリファーは耳を塞いでいた。
(うるさっ!!)
とはいえ、確かに王子はイケメンで、剣も使えて、馬術も完璧というパーフェクト人間。
モテるのも分かる。
だが、耳に入ってきたのは、王子本人に聞かせるにはあまりにも無神経な噂話だった。
「第二王子って、愛人の子なんだろ?」
「正妻の子供として育てられたけどさー、愛人死んだあとで無理やりって聞いたぞ正妻も可哀想だよなぁ寵愛は愛人に傾いていたのに」
「第一王子まだ12歳だろ?そっちが本命なんじゃねぇの?」
──下品な笑い声とともに語られる王族のゴシップ。
エリファーの中で、何かがプツンと切れた。
スタスタと歩き、王子とは反対方向に立っていた貴族の男たちに近づく。
「こんばんは。付き添いの方々ですよね?」
「えっ、せ、聖女様!?」
「場を弁えていただきたいわ。仮にも貴族なら、王族の過去を叩く前に、王子に何が勝るか、自分に何ができるかを見つめ直しては?」
その言葉に、貴族たちは青ざめ、頭を垂れた。
「はい、申し訳ありません……!」
(うん、正直な子たちでよかった)
──が。
そんなことより、今のエリファーには重大な悩みがあった。
(まったくドン引きさせる隙がない……!)
どんなギャップで王子を引かせようかと考えていたのに、真面目なムードになりすぎてタイミングがつかめない。
(こうなったら……出すしかない!)
バッグをごそごそとあさる。
手に握ったのは、**「人格崩壊系演技プランA」**のメモ。
そのとき、王子がこちらへ歩み寄ってきた。
「こんばんは、聖女様。お招きに応じていただき、感謝します」
彼の笑顔は、完璧で、上品で、完璧すぎて腹が立つレベルだ。
その笑顔に対し――エリファーは、爆弾を投下した。
「こんばばわ! 朕は正常なり聖女だけに! エリファーで、ごわす!!!」
「…………え?」
王子、固まる。
貴族、空気を読んで目を逸らす。
護衛、剣に手をかける。
(よし……ドン引き、成功!!!)
裏話
ドン引き作戦は10個くらい作ったよ!




