第14話 条件
「――た・だ・し!! それには条件があるぞ!!」
ダレスの低くよく通る声が、屋敷中に響き渡った。
その視線は、真っ直ぐエリファーへ向けられている。
「条件、とは?」
声を荒げるダレスとは対照的に、エリファーは落ち着いた調子で問い返した。
「実はねー。あ、エリファーくんはいくつだったかな?」
「十五です。今年で十六になります」
「それは良かった」
ダレスは満足そうに頷き、改めて切り出す。
「――うちが経営している、寮付きの学校に通う気はないかい?」
……ん?
エリファーは思わず固まった。
一瞬、耳を疑う。
「顔に出てますよ、エリファーくん」
「え、ええと……サルベロット家領の、学校……ですか?」
ダレスからそっと視線を逸らす。
全身に嫌な汗が浮かび、指先が震えた。
「わー、が、学校デスカ! イイデスネ!
デ、デモロイアントは、もう学校に入れる年齢ジャナイデスヨ!」
露骨な話題逸らし。
しかも完全にカタコトだ。
「……話、聞いてます?」
笑顔のまま、ダレスの目が細くなる。
「私が頼んでいるのは、ロイアントさんじゃない。
エリファー君本人だよ」
場の空気が一気に冷えた。
ダレスの放つ威圧感に、エリファーの顔色はみるみる悪くなる。
「……私を学園へ行かせる理由を、教えてください」
観念したように、エリファーは問いかけた。
「実はね」
ダレスは声を落とす。
「うちの三男が、今月に入って――五回、暗殺未遂に遭っている」
「へぇ〜、暗殺未遂ですか〜……って」
一拍置いて、エリファーは目を見開いた。
「……え? 暗殺未遂!?
今月だけで、五回も!?」
「ここからは冗談じゃない」
ダレスの雰囲気が、完全に変わった。
ダレスはどこからか出した白い手袋をテーブルの上に置く。
「これはうちの三男が学園でつけていたものです。
これが何だと思います?」
「……見た目は普通の白い手袋ですが……
相当、悪質ですね」
エリファーは眉をひそめ、手袋を見つめる。
「この手袋には、多重魔法が仕込まれている」
エリファーは淡々と説明した。
「一つ目。
最初に触れた人物を対象に、近距離で放たれた魔力攻撃を回避できなくする魔法。
二つ目。
この手袋の位置を常に把握できる追跡魔法。
そして三つ目――
殺意全開の射撃魔法だ」
ダレスは微笑む。
「見れば分かるだろう?
何をするつもりだったのか」
「……完全暗殺」
「だからこそ、君が適任だ」
その視線は、確信に満ちていた。
「期間は1ヶ月。その間に暗殺の犯人と三男の安全保障を頼む」
「1ヶ月ですか」
「エリファー君。君しかいない。」
「……ちなみに」
エリファーは小さく息を整える。
「学園の名前は?」
「私立ベネリア学園。
中高一貫でね」
エリファーはスカートの裾を軽く持ち上げ、丁寧に礼をした。
「――必ず、弟さんをお守りします」
その言葉に、ダレスは満足そうに頷いた。




