とりあえず街に
僕は街に出た。街はスズキ車で溢れている。初代ジムニーの群れ、初代アルトワークスの群れ、カプチーノ、X-90の群れに遭遇。スペーシアベースもちらほら見かける。「これもかつては人だったんだよな」と、僕はつぶやいた。
一見普通の車に見えるが、その車たちには何か不思議な気配が漂っていた。まるでかつての人間の記憶や感情が残っているかのようだ。僕が歩くたびに、彼らは微妙に動き、まるで僕に反応しているようだった。
街の中心部に向かう途中、突然一台のスズキの車が僕の前に止まった。古びたエスクード(V6エンジン)だった。その車のウィンドウがゆっくりと下がり、中からかすかに声が聞こえてきた。
「助けてくれ…」
驚いて車の中を覗くと、そこにはかつての友人、タカシがいた。彼の顔はまだ人間のままだったが、身体はすでに車の一部となっていた。
「タカシ、大丈夫か?一体どうしてこんなことに…」
タカシは苦しそうに微笑んだ。「鈴菌に感染したんだ。最初はただの風邪のような症状だったんだけど、次第に体が機械に変わっていったんだ。もう戻れない、でも…」
「でも?」
「鈴菌にはまだ解決策があるかもしれない。ある研究者が治療法を探していると聞いたんだ。お願いだ、彼を見つけてくれ…」
タカシの言葉に、僕は決意を固めた。この異常な状況を終わらせるために、そして友人を救うために、僕はその研究者を探し出すことを心に誓った。鈴菌の謎を解き明かし、再び人々が元の姿に戻れる日を取り戻すために。
僕は再び歩き出した。次に向かうべき場所は、研究者がいるという噂のある、郊外の廃工場だった。希望を胸に、僕はスズキ車たちの中を進んでいった。