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6 言ってみせ、やってみせ、そして雑魚と戦わせる

 向かった先にいたのは虫型の怪物。

 飛んだり跳ねたりはせず、床を這うように動く種類のものだ。

 平べったい楕円形の体から数本の脚がのびている。

 全長は50センチ余り。

 その先端に触覚突きの頭が付いている。



 怪物の中では底辺も底辺。

 最弱の雑魚と呼ばれる。

 数が集まれば脅威ではあるが、今はそうではない。

 総数4匹。

 慣れてれば一人でも倒せる数だ。



「まず、手本を見せる」

 そういってソウシは手にした武器をもって平べったい虫型怪物に向かっていく。

 懐かしいと思いつつ、久しぶりに手にした武器を振っていく。

 柄の長い大型の木槌。

 それをゴルフのクラブのように振る。

 地面すれすれを動いていた虫型の怪物は、木槌が当たるとひしゃげて吹き飛んだ。



 同じように他の四匹を吹き飛ばしていく。

 同じ位置にいるとさすがに食いつかれるので、歩きながら怪物を攻撃していく。

 主要通路よりは狭い。

 それでも幅10メートルはある通路。

 高さも4メートルはある。

 その壁まで虫が吹き飛んでいく。

 レベルアップによって上昇した能力のなせるわざだ。

 新人の頃はこうはいかなかった。

 これでも幾らか加減をしてるのだが。



 そうして飛び散った虫の所に向かい、とどめの一撃を加える。

 今度は横から殴りつけるのではなく、上から叩き潰す。

 平べったい虫型の怪物を更にぺしゃんこにしていく。

 木槌は容赦なく平べったい虫型怪物を叩き潰していった。



 潰された怪物は煙になって消えていく。

 通常の生物ではないのが良く分かる。

 そして、その場に魔力結晶が残った。

 一つ300円程度の安物だ。

 だが、こんなものでも成果は成果。

 4つ集めれば一食の食事代に。

 10個集めれば一晩分の宿代になる。



 普通ならこの4つを大事にしまって次の怪物を見つけにいく。

 だが、ソウシは早速使わせる。

「じゃあ、次はお前らが見つけろ」

 そう言って使うよう促す。

 もったいない、という表情をする新人達。

 だが、その考えがまちがいなのだ。

 見つけるのに費やす時間の方がもったいない。



 意を決して一人が魔力結晶を使う。

 すぐに怪物の位置が分かったようで、「あっちだ」と見つけた方向を指す。

「それと、あっちと、あっっちにも」

 見付けたのは一つだけではない。

 幾つかの怪物を見付けたようだ。

 いずれも何匹かの集団である。



 それらを順繰りに倒していく。

 いずれも数匹程度の集団。

 5人でかかればさほど手間でもない。

 最初はおっかなびっくりだったが、だんだんと慣れていく。

 5回も戦闘をこなした頃には、虫を簡単に吹き飛ばすようになった。



 その戦闘ごとに怪物の位置を確認していく。

 次の獲物を見付けるために。

 そして、新たな敵がいないか確かめるために。

 状況は常に変化していってる。

 小刻みに敵の居場所は確かめた方が良い。

 近くにいると思っていた敵が遠ざかっていたり。

 逆に、今までいなかった敵があらわれる事もあるのだから。



 幸い、能力上昇を使う必要はなかった。

 慣れれば素の状態で十分に戦う事が出来る。

 それくらい平べったい楕円形の虫型怪物は弱い。

 体に取り付かれると、意外と大きな口にかじりつかれて肉を食いちぎられるが。



 なにせ頭が握り拳ほどもある。

 口もそれにあわせて大きく、噛みつかれると直径数センチほどの肉が食い千切られる。

 厚めの革で出来た防具でも着込んでれば防げる程度だが。

 接近されたら命に関わる傷を負う事になる。



 なので、安全を考えるなら能力を上昇させた方が良いのだが。

 動きがそこまで速いわけではない。

 人が歩く程度の速度しか出せないのだ。

 近付く前に倒せれば問題は無い。

 そして、5人もいれば1人1匹ずつ分担すれば簡単に倒せる。



 ここで人数による強みが発揮された。

 ソウシは同行者を見付ける事が出来ず、単独で迷宮に入っていたが。

 連れてきた新人達は、素人同然とはいえ5人いる。

 この5人が協力して事にあたれば、雑魚でしかない平たい楕円の虫などたやすく倒す事が出来る。



 おかげで、昼になる頃には魔力結晶を150個ほど手に入れることが出来た。

 一つ300円として、合計4万5000円。

 5人で山分けにしても一人9000円あまりとなる。

 新人としては儲けてる方だ。



 この調子で午後も頑張れば、一人2万円近くの稼ぎも夢ではない。

 これだけあれば、宿代・商事代を支払っても大量のお釣りがくる。

 もっとも、そう簡単にはいかない。



 稼ぎには税金がかかる。

 この税率が3割だ。

 仮に2万円稼いでも6000円が差っ引かれる。

 残りは1万4000円。



 更に、武器や防具などの補修費用もここから出さねばならない。

 また、レベルを上げる事を考えれば、ここから更に魔力結晶を差し引かねばならない。

 つよくならねば迷宮で殺されるのだから。

 結局、手元に残るは半分以下になる。



 それでも、新人達からすれば大成功だ。

 そもそも一日の食い扶持すらも稼ぐのが難しいのだから。

 それが一気に1万円を超える稼ぎを得た。

 しかも、レベルアップも狙える。

「ついてきて良かった……」

 しんみりとした声に、他の者達がうんうんと頷く。


 その後。

 午後も出来るだけ稼いで。

 魔力結晶は合わせて400個余りになった。

 全部売り払えば12万円にはなる。



 だが、これだけ持って帰れば嫌でも注目される。

 おかしな輩が絡んでくる可能性が出てくる。

 これを避けるために迷宮の中でレベルアップに使う事にした。

 何もなくても税金に取られるのだ。

 そうなるくらいなら、自分たちで使う方が良い。



 持ち帰るのは一人あたり8000円分。

 税を引いた後に5600円が残る。

 これくらいなら、新人にしては上手く稼いだ方だと見られるくらいに留まる。

 残りは経験値としてレベル上昇に使い。

 明日また迷宮に挑む事となった。

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