5 戦う前に確認、やり方はおぼえてるか?
そんな通路に入り、ソウシは後ろにいる連中に話かける。
「これからここで稼ぐ」
5人の新人達は緊張しながら頷く。
「やり方は教えた通りだ。
おぼえてるか?」
問いかけに、これまた無言で頷く新人達。
「なら、言ってみろ」
どれだけおぼえてるか確認するため。
ソウシはあえて質問をしていく。
「まず、怪物を見つけて倒す」
当たり前だが、これが迷宮内での作業になる。
はびこる怪物を倒す。
外に出てこないように間引きをする。
黙っていても襲ってくるので、怪物を見つけたら倒さねばならない。
倒せなければ自分が死ぬだけだ。
「倒して魔力結晶を手に入れたら、次の敵がいる所を見つけるために魔術を使う」
ここが一般と少し違うところだ。
怪物は倒すと煙のように消えていく。
そして、その場に魔力結晶というものが残る。
この魔力結晶を売り払う事で探索者は稼ぎを得る。
なので、普通は持ち帰る。
しかし、ソウシはそんな事はしない。
魔力結晶は文字どおり魔力の塊だ。
この魔力を用いて、様々な魔術器具を動かす事が出来る。
魔術という超常的な力を使えるようになる。
魔力を取り込む事で能力を上げる事も出来る。
この能力上昇をレベルアップと呼ぶ。
この魔力結晶を使って、次の敵を見つける。
普通はやらないだろう。
よほど魔力に余裕がある者でもなければ。
だが、ソウシはあえて手に入れたらすぐに使えという。
「探す手間を省けた方がいい」
これが理由だ。
怪物はびこる迷宮だが、そう簡単に遭遇するものでもない。
怪物を倒すために、迷宮の中をさまよう事になる。
これはこれで面倒で手間がかかる。
なので、敵の居場所を見つける探知の魔術を使う。
こうすれば探す手間が省ける。
どこにいるのか分からない敵を探してうろつく時間が無くなる。
敵のいる場所に向かって迷わず進める。
「それに、強い敵を避ける事も出来る」
急な遭遇で一番困るのは、敵が自分たちより強い場合。
こうなると逃げるのも難しくなる。
怪物が自分たちより素早く動く場合は特にだ。
そして、レベルが低いうちはこういう事がよく起こる。
迷宮で新人が死ぬ原因にはこういう事もある。
先に見つけておけば、危険を避ける事は出来る。
さすがに最底辺の怪物だけがいるこの場では心配は少ないが。
しかし、強い奴が紛れ込んでる場合もある。
それはなくても、大量に集まってる事もある。
これらを先に見つける事で生き残る可能性が高くなる。
「もし敵が強かったら、魔力結晶を使って能力を強化する」
これも敵を倒す場合に必要な事だ。
能力を強化すれば、怪物を簡単に蹴散らせるようになる。
下手に稼ぎを気にするより、まずはこうして敵を倒す事。
これで死ぬ可能性を減らせる。
特に新人でレベルも上がってない頃ならば、毎回こうして置いた方が良い。
戦闘ごとに能力を底上げしておけば、それだけで死ぬ可能性が減る。
確実に敵を倒して魔力結晶を手に入れることが出来る。
消費も大きくなるが、生き残る事が先だ。
死ねばそこで終わりなのだから。
「あとは戦い方だが。
ちょっと素振りしてみろ。
俺の教えた通りに出来てるか見る」
そう言ってソウシは5人が武器を使う所を見る。
5人は教えられた通りに動く。
それを見てソウシは頷く。
「うん、ここにいる怪物はそれでやれる。
もちろん、場合によっては違った動きも必要だけど。
まずはその動きが出来ていればいい」
余計な事をせずに、言われた事をやる。
それが出来てる事に満足した。
馬鹿な奴はこういう時に余計な動きをしようとする。
しかし目の前の者達はそうではない。
言われた事を言われた通りにこなす。
この素直さが良い。
特にこの最初の曲がり角の先では、教えた通りの動きが必須となる。
駆け出しの頃のソウシは、このやり方で生き抜いた。
おかげでレベルを上げて先に進めるようになった。
同じやり方を新人達にも伝えてある。
それだけでどうにかなるものでも無いだろうが。
これも素直に出来ないようでは先はない。
5人が伝えた方法をしっかり身につけてる、頭に入れてるのを確認して。
ソウシは早速魔力結晶を使う。
怪物共の居場所を見つけるために。
新人達は魔力結晶をもってないので、最初の一回はソウシが使う。
怪物を見つけるためにうろつくなんて面倒な事はしない。
ありがたい事に30メートルほど離れた場所に、そこそこの数の怪物がいるのを見つける。
そこへと5人をつれて進む。