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 ……好きかと言われればそりゃ異性として見てはいるって、だって距離近いし、愛してるとか好きだとか平気で言うし、むしろ意識しない方がむずかしい。


 だがしかし、惚れたらまずい。絶対まずい。何があるとは言わないが何かあるんだ。私、むしろポジティブに考えよう。意識できてるって事はまだ、抗えてるって事だっ、 いいことだ。


「なんで?」

「っ、」

「惚れたらいいんじゃない。夫婦なんだから仲がいい方が甘えられるでしょ?」

「……ご、ごめんなさい」


 咄嗟にした思考を読まれて、言葉を返される。どうやら読まれていたらしい。


 悪口は考えてないが生意気だと言われる可能性を考えて、あらかじめ謝った。すると、エディーは喉を鳴らして笑って、聞いてくる。


「なんで謝るの?」

「生意気な事思って」

「言ってないんだから思うのは自由だよ。っていうか驚かないね、やっぱり俺の魔法気がついてた?」

「……あ」


 ……そうか、逆だ。エディーが白魔法を持ってるってのを知ってるか試されたらしい。


 察してたから当たり前のように受け入れてしまったけれど、普通は驚くだろう。今更ながらそう思い至ってシャロンは黙った。もう喋っても墓穴しか掘らない気がして。


「白魔法の使い手はあまり多くないから、有名な家系以外はもっててもバレない事が多いけど、シャロンは使われ慣れてるのかな。だから、俺の事もすぐわかったんだよね」


 ……その有名な家系がオリファント子爵っていうか、うちの実家だし、ね。


「ちなみに言っておくと、俺は魔力も多いから割と多用していてね。だから成り行きで色々知ってるだけだよ。……例えば君の白魔法の事も、表舞台に出てこない聖女の事も全部知ってる」


 ……なんでそんなことまで私に言ってくるんだろう? きっと信頼されてるのかなって……ね。


 何とかポジティブで乗り切ろうと思ったがそうもいかずにシャロンは口を閉ざしたまま空虚を見つめた。


 頭の中を空っぽにして、だからシャロンの慰謝料の件も知ってたんだ~と納得してしまいたかったが、そうもいかない。


 白魔法だけでそんなことが出来るだろうか。何か別の手段も使っていないだろうか。


 それともよっぽど彼の魔法は使い勝手がいいのか、よくわからなかった。


 とりあえず聖女の事は噂程度に貴族たちにも知られている事なので、口止めをする必要はないとして、言わない情報を他にもいろいろエディーは持っているのだろう。


「だから特別何か悪い事をしてるわけじゃないよ。普通の貴族が普通に情報収集するのと同じ事しかしてない……だからそんなに俺の事警戒しないでよシャロン」

「……う、うーん」

「それに、シャロンだって人が知りえない情報を知ることが出来る魔法を持ってるんだから、俺たちってお揃いだね」

「……」


 やはり正しく、シャロンの魔法は理解されてしまっているらしい。知られて困るようなものではないが、知られていたら動きづらいのは確かだ。


「ね、シャロン。君はそれなりの立場になるはずだった子だから、いつかそのうちいろんなことに気がつくと思うけど、知っても楽しい事なんかないよ」

「何か……知らない方がいいこと、あるってこと」

「そうは言わないよ。ただ気分が滅入るって話」

「うん」

「だから、もっと楽しい事を考えようよ。素直になれないなら俺が本心を読み取ってあげようか」


 そういって後ろからエディーはシャロンの目元を手で覆った。暗くなる視界の中で耳元に口を寄せて彼は言った。


「俺の白魔法は、他人の事をたくさん知るためにあるようなものだからね。こうやって、君の得られる情報をこうやって遮断して、それから、強く魔法を使うと、君が考えまいとしてることまでわかるよ」

「あ、えと、あ、の、ちょっと怖いというか」

「俺の前で考えないようにって意識してることも見通せるし、シャロンの全部を知れる」


 耳元で言われるとぞわぞわして身じろぎしてイスから立ち上がろうとした。


 しかし、振り払って逃げ出すというほどでもないし、本当にやんわり手で目元をおおわれてるだけで、何も他に拘束されていない。でも手をどかそうと片手をあげるとそっと抑えられて、割と怖かった。


 なんでこんなことになったのか考えたが、答えは、もう二度と彼のが立っていて自分だけが座っているような状況にならないようにしよう、と教訓にもならない事ぐらいしか考えつかない。


「君が心の底で求めてる欲求も満たしてあげるよ。シャロン。大好きだからね」

「っ、う」


 チュッと耳に唇が触れてリップ音がした。途端に建設的な思考は失われて、シャロンは耳まで真っ赤になって言われた言葉の意味を考えた。


 ……心の底の欲求……??


 そんなものまで満たしてくれるなどと言われても、そんなものはない、ただシャロンは平穏があればそれでいい、そんな大層なことは考えていない。


 しかしそれをあるものとしてエディーは言う。ならば彼には何かあるのか、それは何なのか。


 気になっても、エディーは自分の事をあまり話さないし、話したくない様子だ。


 シャロンだって強気に出たかったが、こうして若干強引ではあるけれど比較的穏やかで優しいエディーを怒らせたくなくて、黙ってされるがままになるのだった。





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