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おまけ(23) 【カルヴィン視点】幼馴染との再会

本日はコミカライズの更新日ですね!

前回ラスト、意味深な人物が現れて…?

是非ご覧ください!


さて、今回の小話はカルヴィン(ギルド長)視点。

コミカライズ更新部分とも重なります、『ヤツ』の話です。




 チャーリーは、オレの幼馴染にして、冒険者ギルドロセフラーヴァ支部所属の魔物鑑定士である。


 その腐れ縁は、実に30年以上前まで遡る。


 元々は、オレの母親とヤツの母親が親しい友人だったことが縁で知り合った──らしい。まあ物心つく前の話だ、当然覚えちゃいないが。


 ヤツに関する一番古い記憶は、多分ヤツの家に遊びに行った時のもの。

 子ども部屋の床に魔物図鑑を広げて──今思うと全部色付きで革張りの装丁の本を当時5歳そこそこの子どもに与えていたあの家の親は相当ぶっ飛んでるが──、ヤツが得意気に言い放った台詞だ。


 曰く、『私はこの世の魔物全てをこの目で見る!』


 子ども心に、また随分と大層な夢だな、まあ頑張れ、と思った。


 実際ヤツの魔物に対する興味──執着心は本物で、街をこっそり抜け出して魔物観察に出たのも一度や二度ではない。しかもオレを連れて。


 今考えると、よく無事だったと思う。


 何せ当時は知らなかったとはいえ、全ての魔物が上位種もしくは最上位種相当だ。

 毎回オレたちを連れ戻しに来る冒険者たちが真っ青になっていたのも無理もない。


 ちなみに叱られるのは毎回オレで、オレは子ども心に世の理不尽を味わっていた。

 毎回オレの忠告を無視して強引に街を抜け出すくせに、叱られる時は完全に他人事みたいな顔してたしな、ヤツは。


 その後ヤツは良くも悪くも真っ直ぐに──そりゃあ真っ直ぐに成長し、読み書きを学ぶ学校を卒業した後、専門的な分野を学ぶユライト王国の学校に進学した。


 オレも一緒にどうだと誘われたが、ヤツの進学先にはオレが興味を惹かれる分野がなかったし、どう頑張ってもヤツに振り回される未来しか見えなかったので断った。


 当時、実家でのオレの立場もかなり微妙だったしな。進学の費用も…まあ言えば出してくれたんだろうが、何となく親に頼るのが(はばか)られるような状況だった。

 …反抗期だった、とも言うが。


 とにかくそうして一旦オレとヤツの縁は切れ、次に会ったのはヤツがユライト王国の学校を卒業した後。

 数年ぶりに実家に帰ってきたヤツは、ものの見事に都会に染まっていた。


 この国の店じゃ扱ってなさそうな凝った造りの眼鏡に、パリッと糊の効いたシャツとお洒落なジャケット、すらりとしたズボン──いや、スラックスとか言うんだったか。

 上から下まで『都会風』になった幼馴染は、冒険者になっていたオレの格好を上から下まで確認し、開口一番こう言った。


「カルヴィン、君もいい歳なんだから剣なんぞ振り回してないで少しは自重したまえ」


 うるせぇ黙ってろ都会かぶれが、と応じたオレは悪くないと思う。


 そんな感じで久方ぶりの再会は実に険悪な雰囲気で終わり──いやまあ、前々から色々な面で振り回されていたから決して『良好な』関係とは言い難かったんだが──ヤツは『やはりこのド田舎の空気は俺には合わんな』と言い放ってユライト王国へ再度旅立った。


 ヤツは色々な意味で『引きずらない』タイプなので、出発の折、口喧嘩などなかったかのように『寂しくなったら手紙でも出したまえよ!』と朗らかに言い放っていた。

 あの神経の図太さは、多少見習ってもいいのかも知れない。


 その後、ヤツは魔物の研究助手として実績を積み、冒険者ギルドに『魔物鑑定士』の職位が新設されるとすぐ、ギルドに就職した。

 配属先がロセフラーヴァ支部になったのは、本人の希望らしい。あそこはユライト王国の中でもかなり大きい都市だからな。


 ヤツは変なところで要領がいい。競争率の高い王都の支部の席を狙うより、現実的だったんだろう。


 そんなわけで、時折届く便りで近況を把握しつつも直接顔を合わせることのないまま、10年以上が経った。


 ユウの指摘で魔物鑑定士を呼ぶことになり、真っ先に思い浮かんだのはヤツの顔だ。

 ロセフラーヴァ支部に魔物鑑定士は何人か居る。だが恐らく、小王国に縁があるのはヤツだけだ。その時点で大変嫌な予感はしていた。


 そして、案の定──



 大量発生した魔物をようやく倒して小王国支部に帰ってくると、とても見覚えのある、だが見たくなかった背中が見えて、オレは思い切り顔を引きつらせた。


「──だから、この私がこの辺鄙(へんぴ)な場所に、わざわざ助っ人も連れて、来てやったんだろう? さっさと魔物の出る場所に案内したまえよ」


 偉そうな態度に偉そうな物言い。無駄に洒落た格好。

 背中だけでも分かる──ヤツだ。


 カウンター越しにヤツと向き合うエレノアは、困惑しきりの表情で対応している。

 ロセフラーヴァ支部と違って人員に余裕がないのだ、案内しろと言われても案内できる人間なんかいない。


「…ですから、ご案内出来るような人材は現在皆出払っておりまして」

「出払う!? 普通は緊急時に対応出来るよう余剰人員を待機させておくものだろうよ。ここのギルド長は何を考えているのかね」


 こいつ…今のギルド長がオレだって分かった上で文句言ってやがるな。


 あと、人材不足なのは知ってるはずだろ。そもそも人数が多い支部なら魔物鑑定士も常駐しているはずで、わざわざ別の支部から呼ぶ必要なんかないんだからな。


 オレは眉間にしわを寄せて受付ホールに踏み込んだ。


「──たとえ余剰人員が居たとしても、お前の案内なんぞさせねぇよ。緊急でも何でもないだろうが」


 声に苛立ちが混ざったのは仕方ない。

 ヤツは振り返り、オレを見るなり目を細めた。


「なんだ、居たんじゃないか」


 実に10年以上ぶりの再会だが、懐かしいと言うより、ウザい。

 見た目がそれほど変わっていないのも大きいだろう。無駄に洒落た眼鏡も、装飾の入ったマント風の上着も、いかにも都会人という雰囲気だ。

 そんなヤツは、やたら偉そうに両手を広げる。


「やあ久しぶりだねカルヴィン。どうせ人手不足だと思って、魔物鑑定士のこの私が一番信頼している冒険者パーティを連れて来てあげたよ。彼らが居れば百人力だ。感謝したまえ!」


 視線の先、受付ホールのテーブルを囲んでいるのは、3人の冒険者だった。


 中肉中背の剣士に、サイラスほどじゃないがそれなりにガタイの良い戦士──武器は戦斧か。そして、いかにもなローブを羽織った、お坊ちゃんのような雰囲気のある魔法使い。

 全員が薄ら笑いを浮かべているので、はっきり言って心証は悪い。


 ──彼らが居れば百人力?


 オレの脳裏に、ここ数日戦い続けてきた大量の魔物たちの姿が蘇る。


 飛び交う魔法。自分たちの身なりなど気にする暇もない、連戦につぐ連戦。

 死屍累々と平原に散らばるウルフとゴブリンとゴーレムの残骸。まだら模様に焼け焦げた大地。


 ──百人、力?


 瞬間的に息を吸うオレの背後で、デールとサイラスとユウの怒気が膨れ上がり──




『遅ぇよ畜生!!』




 声が、見事に唱和した。








ヤツは昔から欠片も変わってません。

ある意味初志貫徹、良くも悪くも真っ直ぐ。うむ。



…さて。


本日はコミカライズ9話、その①の更新でしたね!

みなさま、もうご覧いただけましたでしょうか?


今回更新分の原作者的イチオシポイントは、


・あからさまに嫌な顔をするギルド長(分かりやすいw)

・とてもスムーズに『そう怒るな朋友よ』と誤魔化すアイツ(実になめらかですね!)

・登場! 中級冒険者の御三方!(とてもイイ感じにアレな臭いがぷんぷんしますね!)

・牛化して助走を始めようとするユウさん(どーどーどー)

・真顔で無茶振りをするアイツ(いやこれ現地でやられたら本当にイラつきますね…!)

・『うるせェ眉毛むしるぞ』(顔w)

・『まさかー』の前のコマ(考えた、考えてましたね今…!)

・最後のコマ(ひゃっはー!!)


…です!


今回は登場人物が増えて、賑やかになりました!

ものすごい勢いでフラストレーションが溜まっておりますユウさん及び舎弟2人。大変だね!

あと、ルーンがこっそり新登場メンバーから距離を取っているのにも注目です。ギルドの中に入ってないんですよ。屋根からそっ…と見守ってて、討伐にも同行していません。さもありなん。


それにしてもこのあたりからギルド長が急に常識人に見えてきますね…初登場時は山賊だったのに…(笑)

次第に苦労性じみた部分が滲み出るイケメン。いいぞもっとやれ。



…というわけで、ヒャッハー!!するユウさんたちを見守りつつ、次回更新は10月28日(火)の予定です。


8月7日に発売したコミック1巻、

8月25日に発売した小説1巻、

そして絶賛Web連載中のコミカライズ!


みなさま、引き続き応援をよろしくお願いいたします!




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