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おまけ(12) 【灘木優の同僚視点】居なくなって分かる有難み④

本日はコミカライズ10回目の更新日です!

無料公開期間は5月13日までですので、みなさまお見逃しなく…!

→4/24訂正:すみません、公開期間が5月13日までなのは今回更新分の前(第3話その④)ですね…!

今回更新分は今のところ期間が設定されていないようなので、何度でも読み返せますよ(笑)


本日更新分には、なんと! カラーページがありますよー!!


…ってことで、小話は引き続きユウさんの同僚視点。

テンションの落差がひどいとか言ってはいけません…。


 その後も、優が出社することはなかった。


 同時期に出社しなくなった秘書課の美海もだ。

 美海は社長の息子の婚約者だし、取引先のジジイ──もとい、社長サンのお気に入りだったから、会社として色々伝手をたどって探したらしい。

 ちゃんと捜索願も出ていて、後日警察が会社に来た。


 社長は美海のことばっかり探してたから、『同時期に行方不明になった灘木優さんのことは探さなかったのですか?』って警察に訊かれてしどろもどろになったらしい。

 事情聴取の後、喫煙ルームで社長が『勝手に居なくなったヤツのことなんか探すわけないだろ!』とか文句垂れてたらしくて、どんな聴取だったのかバレバレだった。


 でも状況から言ったら美海だって同じわけで、つまり探すかどうかは社長個人の思い入れの深さによるんだろう。あの色魔、時代錯誤のオッサンにはやたら受けが良かったしね…。


「…私も仕事辞めようかしら」


 優が出社しなくなってから一ヶ月。

 机はそのままなのに、いつの間にか優の名前がホワイトボードや社員名簿から消えていた。

 この会社、突然辞める人は珍しくないとはいえ、流石にバリバリ仕事をしていた同期の友人が同じように居なくなるのは…色々と思うところがある。


 私の呟きを聞いた後輩が、ゲッと顔を歪めた。


「そんなこと言わないでくださいよ先輩。縁起でもない」

「お前が居なくなったら誰があの上司(オッサン)の尻拭いするんだよ」


 通りすがりの先輩も大仰に眉を顰める。でも、そんなこと言われても困る。


「オッサンの尻拭いは私の業務範囲外です。それに、仕事の進捗は全部オッサンと先輩に知らせてるし、データも共有サーバーに上げてあるんで、いきなり居なくなっても困らないですよね?」

「おまっ、最近やたらオレにメール横流しして来ると思ったらそれが狙いか!」

「優を見習っただけですー」


 先輩の突っ込みに、私は涼しい顔で返す。


「だって実際、例えば盲腸で即日入院、とか言われたらどうにもならないじゃないですか。普段から万が一を考えて行動しないと」

「その『万が一を考えた行動』で、俺の受信メールが3割増しになってるんだが?」

「3割増しで済んで良かったですね」


 一応私も、先輩や課長に流すメールは厳選している。そこまで無節操ではない。


「…先輩、盲腸になる予定でもあるんですか?」


 後輩が何故かドン引きしながら聞いてきた。


「意図的に盲腸になれたら誰も苦労しないわよ」


 むしろそんな方法があるなら私が聞きたい。


 …この前の大型連休も、直前に課長がやらかしてくれたお陰で全部吹っ飛んだしね…。

 あの人なんで『至急』を後回しにして『出来たら早めに』を優先するのかしら。

 相手次第だとかほざいてたけど、締め切りをブッちぎってもなんにも言わない人って、『許してる』わけじゃなくて『静かにマイナス査定つけてる』だけだと思うのよね。

 実際、無言でフェードアウトするお客さん、かなり多いし。


 ──それはともかく。


「入院でもしなきゃ休めないじゃない、この会社」


 私が深々と溜息をつくと、先輩がフッと荒んだ笑みを浮かべた。


「……入院して休めても、退院して自宅療養になった途端、出社しろとか無茶振りが来るけどな」

「あー…」


 後輩が思い切り目を泳がせた。


 1年ほど前、先輩は腸閉塞で入院し、退院後すぐに職場復帰した。

 でもそれは本人が希望したんじゃなくて、『退院したんだから仕事出来るだろ』という上司の曲解のせいだ。


 退院の数日前から毎日毎日、朝から晩まで──それこそ夜中まで1時間と置かずにクソ上司から着信があり、ご丁寧に『◯日から復帰するよな? な!?』と留守電まで残されていたらしい。そんなことする暇があるなら仕事しろって話だけど。


 そんなホラーばりの『着信アリ』を味わった先輩は、『このままだと仕事しないで電話ばっか続けるなこのクソ上司』と危機感を覚えて、フラフラの身体を引きずって出社した。


 先輩の復帰初日、階段の途中で力尽きて真っ青な顔でうずくまる先輩を見て悲鳴を上げた私と後輩は悪くないと思う。


 まあともあれ──インフルエンザに罹りながらリモートワークさせられた優といい退院翌日に出勤した先輩といい、この会社には自宅療養の概念がない。

 と言うか、『休み』という概念があるかどうかすら怪しい。


「……やっぱり辞めるのが一番早いかしら」

「待て早まるな!」

「辞めないでください!」


 自分の健康を考えて発言したら、先輩と後輩に真顔で止められた。…ちっ。





 そうして、優の居ないまま月日は過ぎ──


 私はその後結局、()()()()結婚を理由に、会社を辞めた。




 それからしばらくして、会社内で社員が死亡し、警察と労基署と税務署の調査が入ったと風の噂で聞いた。

 なんでも、10日以上会社に泊まり込みで仕事をしていた女性社員が、心筋梗塞で亡くなったらしい。

 あまりにも激務で、亡くなる直前はちゃんと寝ていたかどうかすら怪しかったそうだ。


 最初捜査と調査に入ったのは警察と労基署だけだったらしいけど、色々不自然な点が多くて、さらには密告もあって、税務署も動く事態になったらしい。


 …まあ、当然だと思う。


 連日残業しているのに、月の途中で唐突に定時上がりになる不自然な出退勤記録。

 定時に帰ったはずの日の真夜中に送信されるメールの数々。

 ちょっと考えれば、証拠はいくらでもある。


 多分、聴き取り調査をすればパワハラの証拠だってボロボロ出て来るだろう。パワハラ発言をこっそり録音してる社員も居るだろうし。

 それに、経営者一族が会社の経費を私物化してる様子は私みたいな下っ端でもたびたび目にしていた。どう考えても会社で使わない超高級酒とか宝飾品とかブランド物とか、社長と専務とその一族がアホみたいに見せびらかしてたもんね。

 そのくせ社員の残業代はケチるんだから笑えない。

 脱税してるって噂も、私が働いてた頃からまことしやかに囁かれていた。




 ──そんなわけで。


 優を散々こき使っていたブラック企業は、その後あっさりと潰れたのだった。









話が重くなりすぎるので直接の言及はしませんでしたが、『亡くなった女性社員』は誰なのか……気付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

『別作品と関係がある』というのは『そういう(=転生)意味』です。ハイ。

ぶっちゃけますと、ユウさんがちょいちょい回想してる『元の世界のクソ上司』と、某スーパー派遣令嬢様が言う『あちらの世界のクソ上司』は同一人物ということですね。

それぞれ別の世界の話なので、これ以上の共通項はありませんが。

…共通する要素が『クソ上司』って嫌すぎる…。



さて。



本日はコミカライズ第4話、その①の更新でしたね!

みなさま、もうお読みいただけましたでしょうか?


今回更新分の原作者的イチオシポイントは、


・満面の笑顔のユウさん(良かったね…!)

・ハラ減り3人組と鍋を死守するエレノア(小説版より必死なのがもう…w)

・カラーページで『いただきます!』(全員カラーですよ! 堪能してください!)

・『誰かに作ってもらったご飯ってのは それだけの価値があるんだよ』(グレナ様ー!!)

・『おかわりください!』なケットシーたち(そりゃあ鼻血も出ますわ…)


…です!


今回の注目は何といってもカラーページですね!

4ページもいただいております…ケットシーがかわええ…!!(←語彙力)

現時点で出て来ているギルドメンバーも、全員きっちりカラーですよ!

個人的には、ルーンの色合いをどこぞのセーラー服で戦う美少女たちのところの黒猫にかーなーり寄せて描いていただいているところがポイントです。感無量です(笑)


あと、全体を通してのグレナ様の言動にも注目ですね。

3ページ目で『そんなこと、じゃあないね…』と思わせぶりに言ってからの、『誰かに作ってもらったご飯ってのは それだけの価値があるんだよ』。この流れ、原作者的にはグッときました。

…ユウさん、今まで散々な目に遭ってきましたからね…!



お腹も満たされたところで、次回は大掃除の仕上げです!

ゴールデンウィークを挟みますので、次回更新は5月13日(火)の予定ですね。

ちょっと間があきますが、その分ちょっとページ数多めに更新されるかと思います!

ご期待ください!


みなさま、引き続きコミカライズの応援をよろしくお願いします!




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