表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/220

3-3.ダンジョン探索


 鉱山ダンジョン探索は、さくさくと進む。


 洞窟みたいな階が多くて、時折、コウモリが襲ってくる。他には、岩に擬態しているトカゲっぽい魔物とか、ダンゴムシみたいな魔物も多い。

 広いところならいいけど、横が崖の狭い道とかで襲われるので、地味に厄介だったりする。


 回復は念のため、こまめに行っている。想定外の強さの魔物が出るとは思わないけれど……何かあっても困るので丁寧に……ちょっとレベルが低いからね。

 入口のボスを倒せているから、基本的には問題はないはずだけど……。



「おらぁ! ……ふぅ、終わった終わった」


 コウモリが上に飛んで逃げようとしたところを、レウスが崖を蹴り上げて、三角飛びして追う。

 およそ、4mとか、自分の身長の倍以上飛んでる? 高く、高く飛び上がって、トドメを刺した。


「お疲れ~。結構、楽勝?」

「まあ、これくらいはね。見直した?」

「うん? そうだね、強い強い」

「ち、が、う~! もう、わかってない!」


 コウモリを倒したレウスを適当に褒めたら、頬を膨らませてむくれてしまった。いや、レウスが十分に戦えることは知っている。まだレベルは20に達していないと言うが、STRもDEFにも問題は無さそう。


 通常の冒険者だとレベル30超えが推奨されているけど、やっぱり初期からアビリティ持ってるのが大きいのか、種族のせいかわからないけど……十分すぎる実力ではある。


 ティガさんは、ナーガ君に比べるとDEFもMDFも低いけど、それなりに堅め。攻撃には参加していないので、不明だけど……魔物を盾で止める様子からして、低くはない。ただし、動きは遅い。

 毒の後遺症ではないと言っているので、そもそもがあまり素早くないらしい。


 レウスは、ぴょんぴょんしていることが多い。〈跳躍〉というアビリティらしいが、通常の倍くらいジャンプできるというか……壁蹴りをしなくても、3メートルくらいをぴょんっと飛び越える。

 魔物を飛び越えて後ろに回るとか、トリッキーな戦闘が出来るので、弱点とかが狙いやすい。弱点については、指示をしているが……指示も含め、自分で判断している。

 攻撃できればするけど、そのために無茶しないのでバランスは良い。


 ただ、それでも……成長をして同レベル帯になったとしても、ナーガ君や兄さんに比べると戦闘能力は一段か二段下がる予想。

 レウスとティガさんは、レベルは上がるたびにアビリティは増えているらしい。ただ、今まで覚えていなかったことが不自然で、帝国で戦力を調整されていた可能性はありそう。


「意外と苦戦しないようだね……」

「ダンジョンでは、出やすい魔物とかが偏る傾向にあり、対応がしやすいので。さらに素材採取がしやすい事が人気の一つなので……このダンジョンは、王国でもかなり稼ぎやすいダンジョンのため、冒険者も多くて、魔物もだいぶ少ないというのもあります」


 そう。このダンジョンは大人気。鉄や銅などの鉱石を採掘するポイントがあり、低確率で宝石なども手に入る。低層よりも、上の階層にて採取したほうが良いらしいので、低層階にいる人は少ないけど。

 実はキノコの森のダンジョンだともっと頻繁に魔物が出てきた。……こっちは間引かれている状態なので、魔物が追加で出てきたりしなくて連戦連戦はないので苦戦しない。



「これを掘ればいいのかな?」

「はい。ただ、大きな音がするので、周囲の警戒もお願いします」


 採取ポイントにて、つるはしを使って、鉱石を掘る。

 別に誰が採取をしても変わらない……と思いきや、そこは隠しステータスにLUKがあるので、やはり運が高い人間が取った方が良いとされてる。

 多分、この中では私が高いのじゃないかと予想していたのだけど……。


「おっ、またあった! 幸先いいんじゃない?」


 しかし、予想外のことが起きた。

 全員がやってみる事になったが、レウスがやると毎回、宝石が一つ混じる。


 割合としては、レウスは鉄鉱石8、宝石2くらいで宝石が出てる。

 私は、鉄鉱石6、銅と銀が2ずつくらいで、たまに宝石が混じる。

 ナーガ君は鉄鉱石ばかりで、ちょっと沈んでる。鉄鉱石って冒険者が沢山取ってくるから、マーレスタットで売ると底値だからね。

 ティガさんはナーガ君よりは、銅鉱石が混じるかなという感じだった。

 

 人によって採取できる内容が違うので、運が良い人に任せるのは有りかな。


「う~ん。これとか売れば、借金返済はすぐだね」


 手に入れた宝石(原石)を鑑定しながら、値段を確認。うん……結構、いいお値段。


「え~! 別に、急ぐ必要はないんでしょ?」

「ただ、お金が貯まるのは早そうだねという意味だよ。……防具については、さっさとある程度揃えた方がいいから、ここにその素材を集めに来たんだけど、資金も集まりそうでよかったんじゃない?」


 今の防具は中古だからね。新品を買うのもありだとは思う。出来れば鉄装備ではなく、鋼……若しくはそれより上の素材で防具を用意した方が良い。


 レウスと話をしているとティガさんも近づいてきた。


「そうだね。それでも、山分けするとなると、まだ足りないかな?」

「ティガさんそうですね……ただ、採取した物を分配するなら、私は鉱石系は要らないので魔物素材が欲しいんで……そこら辺は考慮してもらえると嬉しいです」


 今回の目的としては、鉱石系を採取。レウス・クロウ・ティガさんの3人分となるとそれなりの量が必要なので、低層階をまわって採取している。

 だけど、私は魔物素材が欲しい。出来れば、調合に使えるもの! コウモリの羽とか、トカゲのしっぽなんかも、使える素材だからね。



「ねぇねぇ、もっと採取ポイントないの?」

「いや、私もナーガ君も初めてきたからわからないけど……焦る必要もないから、ゆっくりこの階をまわれば見つかるんじゃない?」


 ダンジョンに来てからは、レウスはすごく張り切っている。「この世界に来て、ダンジョン踏破とかしてみたかった!」という発言に慌てて、口を押える。

 周りに人がいたらどうするんだ……異邦人とバレるような発言はしないようにと伝えていないのか……。ティガさんを見たら、頷いて、レウスをその場に座らせて話を始めた。


 どうやら、周囲に人はいないらしい。いるならこんなとこでお説教は始めないと信じる。うん……レウスは、わりと、話を聞いてないことあるんだよね。



「……気持ちはわかる」


 私の隣に来たナーガ君も頷いている。

 ナーガ君も実は、はしゃいでいたらしい。そう言えば、キノコのダンジョン内でも楽しんでいた。楽しそうに次の採取ポイントを探し始めた二人についていきながら、周囲を確認。

 魔物もいないようなので、大丈夫だろう。



 この階全ての採取ポイントをまわったところで、小休止ということで、座りやすそうな岩に腰を掛けて、休むことにした。


「兄さんとの二人旅は、あまり魔物は狩らなかった?」

「……釣りしてる時間のが長かったな。銀麗魚とかいう、調合にいい素材と聞いていたんだが、何日か粘ったが結局釣れなかった」

「そうなんだ? 川魚?」

「……いや、湖だな。湖で粘っていた。釣った魚は塩焼きにして食べたりもして、旨かった……最後の日に、アルス達が魔物に襲われているのに遭遇した。魔物が討伐出来なくて……村でなく、町に連れていくことになって…………結局、その町で色々あって帰ってきた」


 魔物に襲われたのを助けたのが切っ掛けとは言ってたけど……ナーガ君もげっそりしている。しかし、色々あっては、昨日の話だと兄さんが問題起こした件だよね。


 ナーガ君としては、兄さんとの旅は色々楽しかったらしい。釣りも実は初めてだったらしく、目的の魚以外にも釣れて、その場で焼いて食べたりしたそうだ。いつもよりは饒舌な気がする。


「兄さんはまた出かけるっていってたけど、そこに釣りに行くのかな」

「……いや、冬の間しか釣れないらしいから、来年だ。…………次は春のうちに採取したい素材を調べるらしい」

「……なんだか、遠出してまで行かなくても良さそうだけどね」

「……ついでだろう。まずは、この国自体を自分の目で確かめると言っていた……俺も、もう少し色々と見て回りたい」

「そっか……それもいいね」


 別れた時より、旅に行くことを自ら望んでいるみたいだ。良い傾向なのかな……ちょっと寂しいけど。


「俺も! 俺も行きたい!」

「レウス。会話中に割り込むのは良くないよ」


 レウスが会話に割り込んできて、ティガさんが止める。

 まあ、大した内容は話していないから構わないのだけど。


「え~、でも行ってみたいじゃん」

「兄さんが戻ったら、一緒に行って来たら? 楽しいんじゃない?」

「クレインは一緒に行かないの?」

「私は師匠に教わることがまだ山ほどあるからね……」


 まあ、いずれ一緒に行くこともあるかもしれないけど。しばらくはないかな。

 いや、そもそもが……兄さんとナーガ君でも過剰戦力だからな。そこに3人が加わった場合に、私の出番は無さそうな気がする。魔法使い系はクロウがいるから何とかなるだろう。


「あ、でも、もうすぐスタンピードが発生する可能性があるらしいから、しばらくは冒険者をメインにするけどね。かなりの数の魔物を相手にすることになるよ」

「じゃあ、予行演習! ナーガ、あっちの団体に仕掛けよう」

「……ああ」


 二人は、少し遠いところにいる、岩系の魔物が密集して20体くらいいる場所へ駆け出した。

 いや、元気なのはいいけど……わざわざ突っ込んでいかなくてもいいような。ゆっくりとした動きの魔物だから、大丈夫だろうけど……。



 スタンピードは春になると起きる確率が高い……必ずではないらしいけど。そのための準備はしておいた方がいい。そこら辺、兄さんは考えていると思うけど……ナーガ君とレウスと一緒だと、はっちゃけてしまいそうな気がする。


「スタンピードは、どの程度を想定しているのかな? わたし達ときみ達では実力が違い過ぎると思うのだけどね」

「そうですね。パーティーを組んでいても、別行動は可能ですけど……オススメしないです」


 何となくだけど……別行動しない方が良い感じがする。

 う~ん。理由が思いつかない。


「何か理由があるのかな?」

「……いえ。ただ、異邦人が自由にしてるのは危険な可能性があるというか……なんか、気になるというか」

「具体的には根拠がない。ただ、この国でも異邦人の扱いはひどいということだね」

「そう、ですね……貴族側が結構したたかなんですよね。今、王国の異邦人は全て王都にいる。勅命を持って、集められたからです。でも、王弟殿下は私達3人を匿っている。そして、国王派のヴァルト伯爵家も2人匿っていたことがわかりました。国王に対し、絶対の恭順を示していない。まだ、他家にも匿われているかもしれないし、持っていないところも手に入れようとする恐れはあります」

「貴族の家の奴隷であっても、身の安全は保証されていないということかな?」


 張りぼてだからね、メディシーア家。奴隷が一人攫われたとして、それを探し出すだけの人員も無ければ、突きとめても相手方と交渉できるのか……無理な気がする。 

 最初から狙い目であり、貴族が欲しい能力持ちなんだよね……ティガさん。



「例の彼は、さらに危険かな?」

「能力知らないので……なんとも。ただ、少なくとも、彼が攫われても王弟派は動かない。そうでなくても、今後一緒に行動したとして、彼を王都に寄越せと言われた場合、断れないんで……」

「殺されるかもしれないのに見捨てるのかな?」

「……それこそ、この町にいた異邦人数十名を見捨ててますよ。たまたま出会った兄さんとナーガ君だけ助けて、他は、これから肉壁になる未来が分かってて、何もしないことを選んだ人間です……仲間に入れても、後で問題になるくらいなら、と考えます」


 自分の事しか考えずに行動していた結果だ。

 目に見える範囲だけ救ったように見せて、結局、一緒に泥沼でのた打ち回って、どんどんと汚れていく。


 安全の確保のため……そのためなら、貴族の犬になってる。

 ここら辺が、多分、…お互いの意思に合致してないと思うんだよね。帝国から逃げてきて、貴族に関わりたくないと考えているティガさんとは……価値観が違っている。


 協力できることは協力する……でも、お互いに信頼を出来ない部分がある。


「最悪を想定してます……アルスと一緒にいた女の子は、仲間には……味方にならないから。だから、彼を引き入れても、どこかにしこりが残る」

「彼自身が嫌という訳ではない、かな? わたしが引き入れ、問題が起こりそうなら彼とともに離れるのであれば、どうだろう?」

「……後ろから討たれるのは困るので、貴方ごと追い出しますよ?」

「では、そういうことでいいかな」


 ……強く止めることは出来ない。

 因縁が出来るとしたら、私や兄さんとであって、ティガさんとアルスには問題がない。何故、彼を引き入れたいかはわからないけど……何も考えてないのではなく、考えがあって引き込むなら、構わない。


「話がそれましたけど、スタンピードで一緒に行動をしないのであれば、私の方からギルドには話をしますけど」

「きみの考えでは……実力差はあっても、犠牲は出さないで何とかできるとふんでるのかな?」

「……スタンピードが始まる前に、実力差は縮めたいとは考えてます。でも、誰かを犠牲にする形にはしないです」


 あの二人が戦闘能力特化なだけで……多分、スタンピードは私の実力に添わせる形にしてくれると思う……レオニスさんが。

 だから、私との差を縮めればいい。そして、私は紙装甲とまではいかないけど、耐久性には乏しい。

 私くらいの防御性能をもつなら、なんとかなるはずだ。そのためにも、ここで防具素材を集めるのは有効だろう。


「では、よろしく頼むよ」

「えっと、何を?」

「次の指示を。きみが一番ここに詳しいだろう? 二人が戦闘を終えたようだからね」


 うん? よく見たら、ナーガ君とレウスが団体を倒し終え、ナーガ君は解体作業をしている。レウスはこっちに向けて手を振っている。


「ティガ~、クレイン~早く行くよ!」

「ああ、今、いこう……お手をどうぞ?」

「大丈夫ですよ……まだ、先は長いので」


 さらりと段差を降りるために手を差し出してくれたけど、そのままぴょんっと岩から降りる。手を借りるには……まだ、親密度が足りない。



 レウスとナーガ君に合流して、ダンジョンをさらに進んでいく。

 ただ、午後からここに来たので、そろそろ切り上げて、適当なところで、野宿できる場所を探した方がいい気がする。

 

 10階以降に行くのは無しにしておこう。10階のボスと戦っても、勝てないとは言わないけど……まだ、連携が取れていないし、突発的になにかあったら対処ができそうもない。


 今回は10階に行った時点で、帰還決定。気が抜けないからね……ギスギスしてはいないけど、仲間って増えても大変だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ? 感想欄解禁かな? [一言] 主人公が必死に自分の境遇や理不尽な出来事に抗い、 与えられた才能に対して努力し、 周囲に出来うる限りの手を差し伸べる姿に 感銘を覚えます。 他にな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ