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3-1.新装備


 

 兄さんとクロウは、一通りの手続きをしてから、領主の館へと向かった。


 結局、兄さんはアルス君の件は話をせずに行ったらしい。一応、ナーガ君に伝言を預けたらしく、ナーガ君は教会へ出かけていった。私はとりあえず関わるのは止めておく。


 何かあればナーガ君から要請があると思うので、それまでは言い方は悪いけど放置する。兄さんの方でも考えがあるかもしれないし、私が動かない方が良い気がする。


 そんなことを考えながら自宅に帰ろうとすると、ティガさんとレウスもついてきた。

 家でゆったりとお茶を飲んでいると、レウスからの突然のお願いがきた。


「クレイン~。お金貸して」

「レウス……さっき、借金奴隷になった自覚ある?」

「あるけど! 武器がないと町の外にもいけないじゃん。前のは没収だから、新しいのが必要でしょ!」


 そういえば、私が没収してた。

 異邦人とバレない様にと小細工した訳だが、ラズ様には速攻でばれてて意味がなかったけど。

 冒険者登録はしたって聞いてたけど、武器なしでどうやったんだ?


「まあ、いいか。私の新しい剣が出来たらしいので、取りに行くから一緒に行く?」

「行く! 新しい剣って、武器買うの? 俺のも!」

「はいはい。ティガさんも行きます?」

「そうだね。……お金だけど」

「とりあえず、パーティー資金から出すということにして、立替ておきます」


 武器と防具については、必要なことは間違いない。事後承諾になるけど、ナーガ君と兄さんにも伝えないとだ。


 少し準備をするので待っていてと伝えた。

 準備が出来て出掛ける時、ちょうどナーガ君も帰ってきたので、声をかけた。

 結果、ナーガ君も一緒に行くことになった。隣の工房に向かい、入口にいた人に声をかける。



「クラナッハさん、いますか?」

「あ、お隣の、こんにちは。約束してます? 親方、多分もう少しかかると思うんで」

「あ、時間は指定していなかったので……出直した方がいいですか?」

「先日依頼のあった試作品ですよね、出来てるんで見ていってください」

「ありがとうございます」


 クラナッハさんの店は、大剣・大盾のような大きめの装備を扱うと聞いているが、私の剣が折れたことを相談したら、作ってくれるという事になっていた。比較的、安く……。

 もっと余裕が出来たら、強い武器を買いたいとは思っているけど、今はそこまで余裕がない。


「あれ? 3本?」

「はい。お借りしていた折れた剣の刀身で、その……親方が誰か作ってみないかと言ったら……弟子3人ともやりたいと言いまして。うちの鍛冶屋だと、細身の軽めの剣はあまり作らないので、勉強になるってことで」

 

 みんな作ってみたいから作ってしまった……なるほど? いや、でも……レウスも小剣使うみたいだし、ちょうどよかった。


「お好きなのを選んでいただいて構いません」

「ありがとうございます」


 魔法を剣に乗せる場合には、ミスリルの短剣を使うので、こちらは通常攻撃用。前の剣と長さや太さは同じで、予算の範囲内でお願いした。でも、3本作ったら、私が1本しか買わないと損するのでは? 予算内だとおそらく鋼の剣とかにはならないだろう。


 そう思っていたのだけど……。


 目の前にある剣は3つ。

 鋼の剣、黒鉄の剣、鉄銀の剣。


 すべて、鉄ではなくそれよりもいい素材で作られている。一番攻撃力があるのは鋼の剣。若干だけど他のよりも重い。黒鉄の剣は他の剣と違い黒い……でも、一番いままで使っていた剣に近いかもしれない。


 そして、鉄銀の剣。これはMPの通りがいいような気がする? 軽くMPを込めてみると剣が淡く光るのも綺麗だ。


「俺も剣が欲しいんだけど、これ買えるの?」

「うん。私が使ってた剣を模してもらったんだけど。多分、購入可能のはず……これ、素材ってどうなってます? 銀が入ってるんですか?」


 レウスに他の二本を渡して、MP通りの良い剣について、何が違うのか確認をする。

 一つ一つ、丁寧に説明してくれた。


「すごいですね、そうなんですよ。元々、依頼されている盾を作るために魔法耐性つけようとして加工した鉄と銀を混ぜたインゴットが少し余っていたので、今回限定の物ですね。魔法耐性つけるなら銀とかの装飾つけるのが多いんですけど、鉄で加工しようとしてみて……よくわかりましたね?」


 試しで作ってみた素材らしい。その分、他のよりも耐久性とかに問題が生じる可能性はあるとか……でも、私の場合は剣に魔法を纏わせて使うこともあるのでこれは良いと思う。

 流石にミスリル程魔力の伝導率が高いわけではないけど……これは良い。ついでに、魔法耐性を上げるためには銀の装飾……いいこと聞いた。今度、兄さん達の武器にまた付与してみようかな。……バレない様に。


「私は魔法も使うので……じゃあ、これをください。それと、レウスはどうする?」

「う~ん……2本とも、いい?」

「3本、すべて購入って出来ます?」

「はい、そうしてもらえると助かります……うちの客で余ったのを買ってくれる人もいないので」


 確かに。

 なら、なんで作ったと聞きたいけど……まあ、いいか。あとは、ティガさんの武器……じゃなくて、盾だけでいいって言ってたけど。

 ナーガ君やレオニスさんが持ってる大盾でいいのだろうか? 武器はいらないらしいので、本当にタンク一筋……なのかな。


「あと、大盾とか鎧が見たいんですけど、お店いった方がいいですか?」

「大丈夫ですよ……装備する方は?」

「あ、この二人です。予算は、あまりないんですけど……これくらいで」

「わかりました。ちょっとお二人をお借りしますね」


 二人が奥に行ったので、ナーガ君を見る。私の剣に興味を持っていたので、渡してみるが軽く振ってみて、「軽いな」と言って、返された。

 ナーガ君の大剣が重いだけだと思う。だいぶSTRの差があるせいかもしれないけど。


「……前の剣、どうしたんだ?」

「折れた……こう、鱗が固い蛇に突き立てようとして、ばきっと」

「……大丈夫だったのか?」

「討伐したよ。で、大蛇の被害受けた3人を助けたんだよ」

「…………そうか」


 ナーガ君は他に人がいると、あまり会話に参加してくれないけど、二人になると話しかけてくれる。剣を壊したことは言ってなかったので、少し不満そう。


 心配させたらしいが、倒したと言ったらホッとしている。そんなに心配するほど弱くはないつもりなんだけどね……。

 しかし、私の頭を撫でるのは違う……あれ?


「ナーガ君? なんか、目線がおかしい?」


 私とナーガ君の目線が同じ高さになってる。確か、出会った時は若干、私の方が高かった気がするんだけど。

 今、同じ高さになってる? 靴の高さとかは……前と同じだよね。


「……少し、伸びた」


 ナーガ君は嬉しそうに笑う。

 背が伸びるのはいいんだけど……なんか複雑。2か月弱で数センチ伸びたなら、そのうち見下ろされる? 男だと15歳くらいって成長期になるのか?


 ちょっともやっとしていると奥から声がかかった。


「クレイン~着せてもらったけど、どう、どう?」

「どうだろうか?」


 二人が防具を身に着けて出てきた。どうやら、新しい物ではない。ところどころ傷はあるが、使えないわけではないらしい。

 なんでも、新しい鎧を作る人が下取りとして、売った中古品。このままだと鋳つぶすらしいのだけど、まだ使えるので、どうかという話だった。

 安いから助かるので、即答でOKしたよ。十分防御力もありそうだし、これでサクッとお金貯めたら買い直しでいいと思う。


 しっかりと音が鳴らないように冒険者が使う工夫もされていて、レウスは動きやすそうな軽鎧、ティガさんは防御力のありそうな重鎧。


「良いと思うけど……歩き辛いとか、重すぎるとかはない? 長時間、それを身に着けることになるけど」

「へいき、へいき~」

「タンクだからね、少々動きは遅くても大丈夫ではないかな」

「えっと、じゃあ、支払いします」


 支払い手続きをしていると、奥からクラナッハさんがやってきた。あいかわらず、元気そうなお爺ちゃんである。


「よぉ。3本とも買ってくって?」

「あ、クラナッハさん。たまたま、こっちの彼も武器探してたんで……それより、お値段いいんですか? 3本とも鉄よりもいい素材のもの使ってますよね? 特に鉄銀はあれ、魔力通りいいんでお高いはずですよ?」

「わかるのか! いや、あれは試しで作ったインゴットの余り物でな。鉄なんだが、少し魔力通りが良くなるんだが、まだ試作品でな。量産するにも、剣士が魔力の通りが良いのはあまり需要がなくてな」

「私は魔法系なんで助かります。使い心地については、今度報告しますね」

「お、助かる。こっちも試作品で作ってるから、買取してもらえるだけで助かるんでな。使い勝手の感想よろしくな」



 その後は武器を試したいという希望もあり、ダンジョンに行くことになった。

 近場で試すよりは、多少強い相手と戦いたいというレウスの希望で鉱山ダンジョンに行くことになった。


 パーティーは組んだけど、お互いがどの程度の戦闘能力があるかは知らない状態だからね。時間もないし、手っ取り早く知るにはちょうどいいかもしれない。


 準備をしてから、さっそく出掛けることにした。


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