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46.キノコの森 夜営(1)クレイン&レオニス



 ボス戦が終わり、入った側と違う方向の門を潜った先には、10階の入口と同じような門があり、他には何もなかった。横の方を見ると、先ほどの冒険者たちのテントがあったので、ここで泊まっているようだ。

 見張り役の人がぺこりとこちらにお辞儀をしたのを、レオニスさんが手を振って対応している。


「さて、ここは安全ではあるが……他の冒険者も入ってこれるから、見張りが必要だ。お前らは初めてだろうから、交代で見張りをする」

「わかりました。えっと……ナーガ君。兄さん、疲れてるでしょ、先に休んで」

「平気だ…あんたが先に休め」

「そうだな……俺とクレインが先に見張りをする。ナーガとグラノスは休め。3時間交代で……次はラズとナーガ、最後がグラノスとフォルだ」


 私は疲れていない……最初に見張りをしようと思っての提案だったが、レオニスさんがそれを引き継いで、組み合わせを決めた。


 テントを二つ……私達用とレオニスさん達用を建てて、中へと入っていった後、レオニスさんの指導で薪になる木の枝を組んで、火を起こして、辺りを照らす。


 ちなみに、薪を持っていくという発想はなかったが、レオニスさんがちゃんと用意をしてくれている……。魔物の中には、炎を避ける物もいるので、いつでも火を起こせるように……ついでに、薪が必ず手に入るとは限らないから常に用意しているとのこと。洞窟などの場合は火を焚くことで毒ガスが発生するから、ダメとのこと。魔法で照らすのは構わないが……MP管理に気を付けろと言われた。


 ついでに、見張りを3組で分ける場合には、真ん中の奴が一番きついから、疲れていないならそこを希望するように言われた。

 なるほど……睡眠が細切れになる方が、疲れが残るらしい。あれ? そうなるタイミングをラズ様に任せていいんだろうか。



「あいつは大丈夫だ」


 一番余力があるのと、タンクと組ませておいた方がいいという判断と、兄さんの視界が悪いことを考慮しているそうだ。あとは、これから何日もダンジョンに潜るので、慣れていけばいいとのこと。たしかにその通りだけど、なにかがありそうな気がするんだよ……。



 悪寒がする?

 危険な〈直感〉ではないから、命の危険は無さそうだけど。

 


「静かですね」

「そうだな」


 見張りと言っても、魔物は何も出てこない場所。

 現状で警戒するのは…………同じ冒険者。


 ダンジョン内では何が起きるかわからない。

 冒険者が冒険者を襲う……あり得ない話ではないらしい。


 理由は様々、人を殺したことが分かれば牢屋にぶち込まれ奴隷落ち、下手をすれば処刑。

 それでも妬ましいという理由であったり、仲間を見捨てた恨みだったり……毎年、何件かは起きているそうだ。

 冒険者は自己責任。ギルドの発行しているクエストはギルドが仲介し、安全なものだけである。そして、冒険者は別に個別で依頼を受けても、余程の事でない限り罰せられることはない。そのため、裏で人殺しを引き受けるような者もいるらしい。他にも、貴族に雇われて、そういう事をする人も……。



「レオニスさんの顔見知りですよね?」

「顔見知りだから安全というわけじゃない」



 私が一人の時はもっと気を付けるように対策を考えろと言われた。

 まあ、確かに……寝てる間に抵抗を封じられたら終わりだ。知り合いだからと安心して、見張りを頼んだら何が起きるかわからない、自覚を持つように言われた。

 ついでに、魔物が出るような場所なら魔物に警戒する必要がある。やり方を教えてしまうと成長しないだろうから、自分で何ができるか考えろと言われた。


 なるほど……明日までに考えておこう。安全に一晩過ごせる方法を用意する……そうでないと、中途半端な階で野宿させるくらいは、「何事も経験だ」と言ってやりそう……。


「それで……何を警戒しているんですか?」

「そうだな……色々と思惑が絡みすぎてて、俺自身もよくわからなくなっている。いるはずないんだがな……」

「なにか、力になれることあります?」


 レオニスさんが、私達のテントの入口の前に焚火を作り、ラズ様達のテントの入口が確認できる場所に陣取っている。ついでに、他の冒険者のテントもきちんと見える位置……距離があるので、暗くてはっきりと見えるわけではないが、何となく警戒しているのがわかる。


 多分、そういう事だろう……彼らがここにいるはずがない。おそらく、すでにこのダンジョンを踏破していて……素材採取をしないパーティーなのだろう。 

 小さな声で尋ねたが、レオニスさんもどうしようか迷っているようだ。


「杞憂だといいんだがな……」

「杞憂ではないと思いますけど……今日さえ乗り切ればなんとかなるのでは?」

「……どういうことだ?」

「正規の軍隊がここにきて、私達を拘束するのであればどうしようもないですけど……冒険者とかなら、自分がリスクを負うの嫌がると思うので……兄さんとナーガ君、敵にまわしますかね?」

「低レベルの相手だと聞いていて、実は格上だとしたら、嫌がるな」



 嫌がるというか……。

 今日、兄さんとナーガ君の本格的な戦い方を見たわけだが。


 強すぎるの一言。

 ユニークスキルの3段目の効果がヤバい。はっきりわかる。

 これほどまでに強くなるのかと、2段目と3段目の違いを知った。


 兄さんの刀での攻撃には、貫通とクリティカルが乗っている……。ボス戦で弓を使っていた時と全然違った。刀があれば手を付けられない強さだと言える。弓でもSTRは高いので、私が使うよりダメージは入っていたけど……。


 ナーガ君の真価はわからないけど……そもそものステータスの伸びが高いから、十分強い。ドラゴンと戦うときにならないと真価がわからないとはいえ、彼自身が強力なことに違いはない。



「予想以上の実力だからこそ、どう出るかわからないんだがな」

「フォルさん次第では?」

「…………そうだな。お前、どこまで気づいてるんだ?」


 どこまで?

 うん? 質問の意図がわからないけど……。

 

「えっと……ラズ様と上の方で、意見に食い違いが出て、フォルさんはラズ様のお目付け役で、意見は異なる……あと、一部の人間に私達を始末したい人がいると思ってますけど……違います?」

「まあ……そんなとこだが」

「それで、フォルさんとしては、自分の手は汚せないので、冒険者を使う……可能性を心配してるんですよね?」

「ああ。お前の考えは、今日さえ乗り切ればいい、か?」

「まあ……必ず冒険者がいるわけではないのと……事前に接触できる機会も少なそうなので」


 フォルさんが一人で動くことが無いと言うのであれば、お互いに不干渉にすればいい気がするのだけど……。そもそも、フォルさんの立場がわからないからな。……指示出してる側なのか、指示に従うしかない側なのか。

 私達を見張っていたという兄さんの話を信じるなら、それなりに実力が相手にバレてることも考慮する必要がある……いや、無いか? 兄さん達、今日だけで10以上レベルが上がってる。

 仮に情報を貰っていても、実力が全然変わっている。もちろん、それを想定している可能性はあるけど……普通に考えて、私と同程度の成長を予想するのではないだろうか?……多分、私だって、普通の人と同じくらいの成長率はあるよね?


 とにかく、あの冒険者達も……すごく強そうには見えなかった。

 それと、事情がどう変わったのか知らないけど、ラズ様は中立よりもこちら寄りっぽいので、最悪が起こるとも思えない。



「レオニスさん」

「ん? どうした」

「魔法で結界作って、認めた人しか区域に入れない様にするとしたら……どうですかね」

「ふむ……襲おうにもそこまで到達できないなら、悪くないだろうな。だが、明日MP切れから始まるのは得策ではない」


 MP切れが起きないように……複合魔法の結界を張って……張り続ける間、MPを使い続けるのではなく、一度弾いたら消えるようにしておけば、大丈夫かな。

 MPの伸びは良いので、無くなるような事にはならない……戦闘とかは、だけど。


「大丈夫です。常時MPを使うのではなく、最初に結界を張るときにMPを使えば……その後自然回復でいけます……それよりも、兄さんが暗いとこで戦力ダウンのが痛いかな」

「グラノスは見え辛いだけだろう。実際に動きが鈍っている訳じゃないから大丈夫だろう。3番目においたから、明るくなる時間帯にもなる」

「……夜営から外すのは?」

「却下だ。今日は、な。お前らだけの時には、外すのも構わない。実際に、敵の索敵が出来ないのに不寝番を任せるのは危険だからな。明るいうちに任せるのであれば、集中力が切れるのを考えれば夜休ませるのもいいだろう。そこらへんは、パーティーメンバーで決める事だな」

「なるほど……今日は……多分、大丈夫…………かな」


 割と、兄さんが上手く収めてくれる気がする。

 〈直感〉が危険を知らせてないっていうのは、私には危険が無い、そういうことだと思う。伝えないのは申し訳ないけど。


 そのまま、見張りをしていたが……交代の時間まで、特に動きは無かった。



「そろそろ時間だな。ナーガを起こして交代してくれ」

「はい。あの、レオニスさんは?」

「ナーガに夜営を教えてからラズと交代する……あいつは教えるのが向いてないからな」

「わかりました」


 テントに入り、ナーガ君と交代をするために起こす。


 そして、念のため……こっそりと複合魔法・結界〈バリア〉を発動。今、テントにいる者以外が入ることを拒む……。


 レオニスさんが入ろうとしても入れなくなるのは申し訳ないけど……バレない様にするなら、これが一番。

 ナーガ君がこちらを見ているので、唇に人差し指をつけて、にっこり笑ってメモを見せる。


『結界を張ってあるから、何かあればテントに逃げ込んで』


 メモを見て、こくりと頷いてテントを出て行ったので、ナーガ君にはおそらく通じているだろう。後は、兄さんの刀の上に置いておけば……いや、見えないかも? とりあえず、巻いておこう。それなら、違和感で何とか見るはず。


 ……もし、何かあったとして、危険なのは私だけとも思うけど。

 実力的に私は倒せても、兄さんとナーガ君を倒す前に、レオニスさんが止めに入る。レオニスさんが敵にまわることはないと断言できる。


 ただ……ラズ様側も一枚岩じゃないなら、私自身の価値を高めておかないと切り捨てるのが容易……考えないといけないな。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ダンジョンに入るメンバーの話の時に、 > 「ほっほっ……まずは、臨時クランの結成となる。メンバーはここにいるラズとギルド職員のレオニス、もう一人についてもこちらで調整をしているが、お主らに…
[一言] クレインちゃんぺろぺろ〜!ぺろんぺろ〜ん!
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