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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第一章

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36.ハプニング発生



 パーティー申請書を持って、朝一でギルドにやってきた。


 今日、ギルドにいたのは、装備から異邦人と思われる男6人組だけだった。一応、現地の冒険者も一人いるが……近くに酒瓶があって、ぐったり…………酒で潰れている?

 掲示板のところに陣取っていたので、掲示板のクエストを確認せずにマリィさんのところに向かった。たしか、昨日の夜もいた人達だ。遠巻きにされていたのを覚えている。



「おはようございます。今日はパーティー申請をお願いします」

「はい。お一人ですけど……他の方たちは?」

「兄はパン屋にお昼と夕食用のパン買いに行ってます。もう一人の幼馴染は、寄るところがあるらしくて……町の入口で待ち合わせです。いないと申請できないですか?」

「いえ、大丈夫ですよ」


 渡された申請書に記載をして、マリィさんに返す。

 パーティー名とか決めていないので、メンバーを記載しただけのものだが、問題ないらしい。


「では、申請書は受理されました。念のため、パーティーの説明をしてもいいですか?」

「はい。お願いします」


 パーティーを組んだ時の説明を受けた。


①パーティーで受けた依頼報酬は、パーティーの口座に振り込まれる。口座の引き落とし等はパーティー登録証により行うことが出来る。

②クエスト受注は誰でも行うことができるが、原則、パーティーで受けたクエストとして扱われるため、個人で受ける場合には、その旨、申し出が必要となる。(ただし、個人指名依頼は個人が優先され、本人が申し出た場合のみ、パーティー受注に切り替える)

③クエスト達成が出来ないことが続くと、パーティーに警告が行われる。さらに続くとパーティー解散などの処分がある。

④パーティー申請していても、パーティー全員で行動をする必要はない。

⑤申し出があれば、パーティー口座から一定額を毎月1回、個人口座に移すことが可能。

⑥いくつかのパーティーで、合同パーティーを組む場合の申し込みは、パーティーリーダー同士で届出が必要となる。

⑦パーティーメンバーの最大数は10名。それ以上のパーティーを組みたい場合には、クランを申請する。


「こんなところですかね~」

「えっと。クエスト以外の報酬はどうなります?」

「討伐報酬とか、納品報酬については、個々に決められますけど……どうしたいです?」

「じゃあ、私の個人依頼も含めて、半額はパーティー口座に入るようにしてください。それと、毎月定額で各個人口座に振り込みをお願いします」

「わかりました。では、こちらの申請書に記入をお願いします」


 さて…………だいたいの手続きが終わったところで、ずっとこちらを観察している者たちの対処を考える。ずっとこちらを観察するような視線を感じている。

 他に冒険者が来ているが他の受付で手続きしているので、除外。最初からいた異邦人達からの視線だ。


「マリィさん。今日って、レオニスさんいます?」

「えっと……そうですね、いると思いますけど。何かありました?」

「ちょっと、相談がありまして……」

「わかりました……少々お待ちください」


 マリィさんが確認のために受付から離れる。

 何気なさを装って、振り返って周囲を確認すると、にやにやと笑っている男達が目に入る。やはり、何故か目を付けられているようだ。


「クレインさん。こちらにどうぞ~」

「はい。ありがとうございます」


 しばらくして、マリィさんに呼ばれて、奥の部屋に入る。

 さて、対処について、一応相談をしておこうかな。


「おう。クレイン。どうしたんだ?」

「いえ。ちょっとフロアにいる冒険者に目を付けられたみたいで」

「ふむ……まだ、何も起きていない状態だとギルドは動けないぞ」

「はい。でも、ギルドの中で絡まれたとして、体に触れてきた相手にこちらが反撃した場合ってどうなります?」

「状況にもよるが……まあ、仲裁に入るな」


 冒険者同士だと、刃物を持っているので危険が伴うから、そうだと思っていた。死ぬ可能性もあるので、ギルド内なら止めるだろう。

 6対1だと、やりすぎないようにするのも難しい。こちらは正当防衛を主張する。後は、判断はギルド職員に任せればいい。


「相手が異邦人で、無理なパーティー勧誘だった場合は?」

「……冒険者同士の諍いは、こちらは手出しできん。まあ、無理やりなら止めるが……異邦人だと、どうするか……。確認してくるから待っていろ」

「すみません」

「いや、気にするな」


 レオニスさんがギルド長に確認しに行くと、しばらくしてギルド長が戻ってきた。

 すでにレオニスさんはフロアにいるそうだ。問題を起こす異邦人はさっさと捕まえたいので、協力を求められた。

 まあ、私も自分が大事で、ギルドに助けを求めてるので構わない。


 部屋から出て、掲示板を確認すると、左右を挟むようにして近づいてきた。


「これと……これと……」

 

 気付かないふりをして、常設クエストをいくつか手に取ると、右手を突然掴まれた。


「きゃっ……」

「こんな安い依頼よりさ、俺らと組もうぜ?」

「そうそう。俺らこの依頼受けるんだけど、あと3人ほど増やせるんだよね。かわいい子なら大歓迎」

「お金もほら、こんなに手に入るよ」


 腕を捕まれて、引っ張られて男の方を向くと3人目の男に逃げ道を塞がれる。

 大人しいふりをしていると、目の前にクエストの紙を見せてくるが……Dランクのクエストだった。

 私なら可能だけど、異邦人が受けられるわけがない。実力の有無ではなく、自分の一つ上までしか受注できないことを知らないのか、受けるために私を利用したいのか。

 あと3人って言ったから、一人はあの酔いつぶれてる現地冒険者か。異邦人だけでは受けられないことはわかっているからなのか、狙いがわからない。



「…………して、ください」

「え? なに?」

「おい、受けさせてくださいだろ。耳悪いのかよ~いや~よかったよかった。じゃあ、いこうか」


 勝手な事を言っている男達の後ろで、マリィさんが心配そうに見ている。その後ろにいるレオニスさんをちらりと見れば頷いているので、ちゃんと見てくれていたらしい。


「手を放してください!」

「あん? 俺らとパーティー組めばいいんだよ。それなら放してやるよ」

「お断りします。放してください。手を放さないなら、反撃します」

「怒んないでよ~君にだって悪い話じゃないよ~」

「……嫌だって言ってる! 離せ!」

「ああん?」


 手をパーの状態にして力を抜いて、相手との隙間を作り、腕を回してさっと引き抜くと同時に、踏み込んで肘で相手のお腹に攻撃を入れる。さらに横にいた人には、体術〈足払い〉をかけて倒し、距離を取り威嚇する。


「くっそっ、てめぇ!! 舐めやがって!」

「そこまでだ。嫌がる相手を拘束し、無理やりパーティーに入れようとするのは、違反だ。お前ら、異邦人だな。問題行動を起こすなら、資格ははく奪だと説明したはずだが」

「ちょっ……俺らじゃなくて、この子が悪いんで。こんなクエストでちまちま稼ぐのが可哀そうだから、声かけてあげたのに、いきなり暴力ですよ?」


 反撃を受けた2人ではなく、3人目の取り囲んでいた男が、私が暴力をふるったのように言っているが、いきなりも何も、ちゃんと3回、放すように言った。

 しかも、マリィさんもレオニスさんも見ていてくれているので、証人がいる。誤魔化しようがない。


「最初から見ていた。その子がクエストを取っているときに、腕をつかんで妨害をしたのはお前らだ。しかも、逃げられないように左右と後ろに立って妨害していただろう。3回言っても放さなかったのだから、反撃を受けても自業自得だ。大人しく冒険者登録証を出せ」

「ちょっ、待ってください」

「こいつが!」


 レオニスさんのすごみにたじたじの3人と、やばいことになったとこちらの様子を見ている残りの3人。


「大人しく出すか、拘束されて牢屋にぶち込まれるか、どっちだ?」

「っ……出しますけど……そっちの子だって」

「そうそう。俺らは親切で声かけただけだったんで。お金がないからたくさん受けようとしてるみたいで声を掛けてあげたのに」

「言っておくが、お前らが受けようとしてるクエストはFランクでは受注できない。他の冒険者のパーティーと組むなら別だがな。6人ともFランクの場合は、パーティーランクもFにしかならん。Dランクの依頼なんぞ認められん。……そっちの3人もついてこい。お前ら、6人が処分対象だ。事情聴取する。反省が見られない場合には資格取消だ」


 すごすごと奥の部屋に入っていくのを見送って、マリィさんにクエスト受注の手続きをお願いする。


「絡まれるって、わかってたんですか?」

「なんとなく……こっちを見て、にやにやしてたので。男6人のパーティーだったので、見えないところで声かけられたら危険だと思って」

「大事ですよ、そういうの。クレインさんは幼げで、ちょっと気弱そうに見えるので。気を付けてくださいね」

「はい。ありがとうございます」


 期間が2週間くらいあるキラービーの討伐とか、周辺に出る討伐クエストを受注した。

 おそらく、特訓後の魔物狩りで集中的にこれらの魔物を狙えばクエストは容易に達成できる。素材は自分で使えるので、納品しないでいいものだけを選んでいた。

……そのため、一つ一つは安い。……意外とあの男達の一人、安いのばかりと見ていた。


 目聡いのに、なんで、あんなのと一緒にいるのか。まあ、私の気にすることではないか。


「クレインさん。お気をつけて、いってらっしゃい」

「はい。いってきます」


 ギルドにいた他の冒険者に「お騒がせしました」と謝罪をしてから、兄さん達が待ってるので、急いで門へと向かう。予定外に時間がかかってしまったが……まあ、パーティー編成の説明が長くなったということにしておこう。

 異邦人に絡まれたとか言うと、心配させてしまう。


 しかし……変に強引だし、6人いても誰も止めようとしなかった。兄さん達の言うように、なんか言動が乱暴というか……可怪しいかもしれない。気を付けよう。



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― 新着の感想 ―
[一言] ヤリサーとかな連中かな。 手口慣れてるっぽいし。
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