表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/221

5-22.西ルート(2)


 オリーブの背に乗って大河を逆流すること5日。

 ようやく、大滝とその周りの湖までたどり着くことが出来た。


 移動中にもオリーブに対し攻撃してくる魔物はいない。たまに、川を行き来している船とかがいて、オリーブに攻撃されたりとちょっと揉めたりもしたけど、順調にたどり着いた。



 調べた内容では、王国の西、大河を遡った先にある大きな滝の裏側に洞窟がある。そこから奥へと進んでいった先にドラゴンがいるはず。


 滝の奥の洞窟と聞いていたけど……大きく、広大な滝が目の前に広がっている。


「なんだっけ……海外で有名な滝みたいだよね」

「……イグアスの滝」

「あ、それ! よく知ってるね」

「……ああ」


 こんなに大きい滝だと考えていなかった。

 ゆっくりと観光気分で見て周りたいくらいには雄大で圧倒されるのだけど……滝のど真ん中、水色のドラゴンが陣取っている。


 ついでに、ヒュドールオピスも何頭か滝の下にある湖を警戒するように周回している。


 予感的中。なんとなく、嫌な感じがしたため、見晴らしが良くなる湖に到着する前にオリーブから降りて、岸沿いを歩きながらここまで来たのが正しかった。

 オリーブに乗って湖まで来ていたら、あのドラゴンと水竜と戦うことになっていただろう。



「ここで一晩野宿して、明日の朝、大滝の裏に行こう」

「……あれはいいのか?」

「いや、だって……万全な状態で挑むべきだよ」

「……そうだな」


 移動中に風魔法を展開していた。歩いている間にも回復はしていたけど、現状でMPが半分くらいになっている。

 戦いになるなら、回復した状態で挑みたいし、まだ日取りに余裕があるならゆっくりと休んでから戦う方がいい。



「あのドラゴン達のおかげか、近くに魔物の気配もない。ゆっくり休んで、明日、挑もう」

「……ああ」

「もう少し観察をして、戦略を考えよう」


 水の上で戦うとなると、こちらの方が不利になる。オリーブに乗った状態で挑むことは出来ないので、岸におびき寄せて一網打尽にしたいところだ。


「オリーブ。あのヒュドールオピス達を従わせること可能?」

「しゃ~」

「無理か……だよね」


 オリーブが首を振って、拒否をしている。

 通常であれば、ヒュドールオピス達を従わせることが可能な個体だけど、どう見てもドラゴンに従っている。オリーブでは実力不足だろう。


 弱点の雷魔法を撃ちこむこともできるけど……巻き込んでしまうからね。


「じゃあ、オリーブがあのドラゴンに従う可能性は?」

「SHYAAA!」

「ごめん」


 本気で威嚇されてしまった。

 裏切るはずがないということだろう。


 ナーガ君も呆れたような顔をしている。そういえば、ナーガ君の中にもドラゴンがいるから裏切ることはないか。


「……おい、近付いてきてるぞ」

「あ、今の威嚇でバレた?」

「……隠れるか」

「うん」


 水竜の1匹がこちらに近づいてきているので、湖から離れて、奥へと移動して隠れる。

 遠くからドラゴンの様子を見ているけど、距離があるので、いることくらいしか確認できない。


「……グラノスがいると楽なんだがな」

「兄さんの視力だとばっちり見えるからね。でも、遠目で見た感じだけど、あのドラゴンなら戦い方をミスしなければ負けないと思うよ」

「にゃあ!」

「いや、モモは戦力外ね。ナーガ君から離れないように、邪魔をしないようにね?」


 張り切っているモモには悪いが、戦力にならないので、せめて邪魔をしないでほしい。


 少し高い木に登って、様子を窺うが、先ほど私達がいた場所を水竜が調べている。

 こちらに気付く様子はないが、やはり先ほどの威嚇で気付かれたかな。


「雷魔法で仕留めることも出来るけど……湖の中にいる他の魔物とか魚も倒しちゃうからね」

「……可哀そうだな」

「うん……色々いるからね」


 ケルピーとか、イルカのような魔物とか……ナーガ君が好きそうな可愛い魔物もいる。湖全体に雷魔法を落とすと感電が広がってしまうので、巻き込んでしまう。


 そうすると、どうやってあのドラゴンを突破して奥に進むかという話になる。


「戦いをさけるなら、滝の上から、あのドラゴンに直接岩を落とすのがいいかな。重力込みで、大打撃が期待出来そう」

「……滝、だいぶ高いぞ?」

「うん。この距離で気付かないなら、滝の上からもいけそうだよね」


 索敵能力が低そうなので、正面ではなく真上から攻撃するのはあり。

 地盤を魔法で歪めて、巨石で潰してしまう作戦。


「……正面から行けばいいではないカ」

「ナーガ君の体、乗っ取るのやめてくれる? 不愉快なんだけど」

「すまなイ……宿主の実力なら、正面突破が可能ダ」

「いや、あれは見張りだとすれば、中でも戦闘になるからさっくり倒したいんだけど」

「……誇り高きドラゴンは奇襲などしなイ」


 つまり、卑怯な戦い方をするなということか。

 オリーブも横で頷いているので、ドラゴン側ということだろう。


「あれは敵意がなイ。正面から行けバ、通してくれるはずダ」

「いや、それだとドラゴンの血が……」

「ドラゴンをなんだと思っていル、恩人にドラゴンの血や涙を譲るくらいはするはずダ……ドラゴンハートは流石に無理だガ……」


 ドラゴンハートって、心臓だよね。

 たしかに、それで薬を作れば効果ありそうだけど……ドラゴンの血で作るレシピだけだから、一から研究することになる。流石にいらない。


「……正面から行くべきということだね?」

「……そうダ」

「ナーガ君の意見は?」

「……従うト言っていル」

「わかった。でも、明日。万全な状態で……今日はここで休む」


 特に危険を感じることもないので、明日、正面から強行突破かな。

 光焔の言う通り、頼めば貰えるのであれば、わざわざ敵対することもない。


「夜営の準備をするから」

「………………手伝う」


 どうやら、ナーガ君に戻ったらしい。

 テントを張り、夕食の準備をする。ゆっくり休んで、明日からが正念場だ。




「しゃ~」


 オリーブが頭を高い位置に上げたまま、私達を乗せてゆったりと滝の前へと進んでいく。

 こそこそ隠れないで行くことが嬉しいのか、機嫌がいい。

 ゆったりと、水しぶきがかかることのない位置で動いているため、モモも機嫌がいい。


「……まだ、あと3日ある。油断しないようにね」

「……ああ、わかってる」


 ナーガ君もいつでも戦える体勢で、柄に手を置きながら、ドラゴンに近づいていく。



「……待っていタ、白の眷属よ。その力を見させてもらおう」

「だから、奇襲したかったのに…………」

「……クレイン」

「大丈夫、ナーガ君、落ちないようにね……オリーブ、これ以上近づかずに、水平を保って、振り落とさないで」

「しゃ~」


 ナーガ君は近接攻撃しかできないから、オリーブの頭の上では何も出来ない。

 私が魔法を唱えて、さくっと制圧しよう。


「どうしタ、こないのなら……」

「岩雪崩〈ロックスライド〉」


 滝の上の方の岩を魔法で崩して、岩石をドラゴンの頭上に降らせる。大量の岩が湖に降り注いで水面が揺れるがオリーブはびくともしていない。

 ドラゴンは不意打ちに驚きつつ、大量の岩が降ってくるのを避けられずにどすどすと岩が降ってきてつぶされている。


 流石ドラゴン……物理攻撃にも強いので、耐えている。


「ドラゴンに近づいて……斬りかかるよ」

「……ああ」

『……そこまでにしておくれ』


 空気が震え、声だけが届く。

 オリーブも近づくのをやめてしまったので、ドラゴンが起き上がってしまった。


『そなた達の力は確認した。洞窟の奥にて待とう……』


 目の前にいるドラゴンではない、何かがこちらに話しかけてきたようだ。

 冷や汗が背中をつたっている。


 目の前にいるドラゴンとは違い、明らかに強い。敵に回すわけにはいかない。


 力を見せろと言ってきたドラゴンをナーガ君と倒すつもりだったが、これ以上の攻撃をするのは怒らせることになる。



「オリーブ。そのドラゴンは無視して、滝の裏の洞窟いくよ。あの入口までいける?」


 岩雪崩を起こしたことで、滝の水が途切れ途切れになっており、滝の裏にある洞口の入口が露出している。

 高さがそれなりにある。15mくらい高さがあるんだろうか? 滝登りして、あの高さまでオリーブがいけないと詰んでしまう。


「……クレイン。あのドラゴンに乗って行くか?」


 ナーガ君が岩に圧し潰されているドラゴンを指さす。

 潰れてしまっているけど、死んではいない。瓦礫をどけて、運んでもらうのもありだけど……。


「オリーブよりもあっちの方が確実かな?」

「しゃ~!」

「……オリーブが頑張るらしい」

「うん、じゃあ、行こうか」


 オリーブから抗議の声が上がったので、ドラゴンはそのまま放置することになった。

 オリーブにしっかり掴まって、崖を登っていく。水圧が結構きついが、風魔法で緩和しつつ、滝を登り洞窟に入る。


「……ここから、どうするんだ?」


 洞窟の入口は広い空間となっていて、先ほどのドラゴンでも十分に入ってこれる大きさだった。ただし、下の方へと続いている洞窟は人が数人通れる程度の小さな洞窟になっている。


「オリーブは通れそうもないね」

「しゃ~」


 オリーブが小さくなって、ナーガ君の首元にマフラーのように巻き付く。

 水竜より蛇として過ごしている時間のが長くなっていると思うのだけど……抵抗はないらしい。


「ナーガ君、奥に続いているから先に進もう。多分……下の方に気配を感じるから、さっきの声の主はそこにいると思う」

「……あの声はなんだったんだ?」

「多分、水のドラゴンの長だと思う。ドラゴンにも格があるんだと思うよ……あれは勝てない。プレッシャーが格段に違った。……モモ、先頭行くのはいいけど、気配感じたら戻ってね」

「にゃ~」


 モモが待ちきれないように入口で尻尾を振って待っている。


「……大丈夫なのか?」

「気配察知と魔力探知で探ってるけど……多分、底の部分に巨大な気配がいくつもあるだけで、道中は魔物とかはいないと思う。モモが先頭でも問題ないよ」



 洞窟の奥へと歩き出した……けど。


「……道、わからないのか?」


 この洞窟は迷路だった。

 最初こそ一本道だったけど、広間のような場所にたどり着く度に、分かれ道が増えていく。登ったり、下ったりと方向感覚も狂ってしまう。


 一度、確認のために外れの道にも行ってみたが、魔物が出てきたので、危険のないように直感を使って慎重に進んでいく。

 

 そして、目の前には10本の道があるけれど……ここで、どれが正解かわからなくなってしまった。


「う~ん。今までは、この道を行けばいいってわかったんだけど……なんでだろう?」

「……あんたの直感が発動しないなら、どれでも同じなんだろう」


 う~ん。何だかんだと洞窟に入ってから6時間くらい経ってるので、外したくないのだけどね。

 下に降りていくだけだと思ったのに、予想以上に迷路だった。


「にゃ~」

「モモ、この道がいいの?」

「にゃん」

「……そこにするか」

「うん……上手く抜ければ、ドラゴンがいるよ」


 奥へと進み、歩くこと1時間。今までよりも大きな広間へとたどり着き……10頭ほどのドラゴンがこちらを見ていた。


 その中には、先ほど岩で圧し潰したドラゴンもぐったりした状態でいる。どうやら、怪我を負ったらしく他のドラゴン達が庇っている。



「早かったの、白の……先ほどはすまなかった。妾の子を殺さずにおいてくれて感謝しておる」

「……そうですか」

「すまぬの。そなたたちが狭間を封じてくれていることに感謝する。出迎えにやったつもりが、煽るようなことを言うとは思わなんだ……」


 力を見せろって、戦うという意味ではなかったのか。


「すでに火のドラゴンが3体倒され、土も軽傷だが怪我したものがでておる。風の末子も交渉の際にやられておるから、くれぐれも丁重にと伝えたのに、馬鹿な子ですまぬの」

「兄さん……」

「……グラノス……」


 火のドラゴンは兄さんとアルス君が担当。

 倒されたということは……兄さんもドラゴンの血を目的で、ドラゴンと対峙したんだ……。


 土の方も気になるけど。というか……もしかして、私達が最後だったりする?


「まだ予定より3日は早いよね?」

「……ああ」

「うん? すでに火は3日前に、風は2日前、土は昨日の時点で狭間を封じるために力を送っている……まだ、完全ではないがここから力を送れば封じるのは容易なはず」

「え?」


 あれ?

 同時にやらなくてもいいってこと?


 出遅れたの?


「すまぬが、白の。水の狭間も封じてくれぬか?」

「あ、はい……やります」



 なんだか、釈然としないけど……とりあえず、封じよう。

 長が視線を送った先……滝の裏にある、空間を引き裂いたような大きな亀裂とその前にある祭壇のようなもの。


 ナーガ君に視線を送ると頷かれた。他のドラゴン達もじっとこちらを見ている。

 よし、あれを封じれば……この先は安泰になる!


 さくっと終わらせよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
240時間後と決めたのは一体なんだったのか? 火のドラゴンが好戦的で時間の猶予もなかったとかかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ