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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第五章

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5-17.出立に向けて



 ドラゴンからの使いがきた翌日。

 私、兄さん、ナーガ君、レウス、クロウ、ティガさん、アルス君、ルナさん、リュンヌさん、ルストさんで集まった。


「昨夜は大変だったようだね」

「……起こしてしまったなら、すみませんでした」

「いや、だいじょうぶだよ」


 ティガさんの言葉に謝罪するも、気付かずに寝ていたらしい。家を防音にしている効果はちゃんとあったようだ。



 今朝、ルナさんと畑に行ったときにぐちゃぐちゃになっていて、何かあったのだと察したらしい。原因は私に聞くのが早いと思ったとか……私の信用ないな。


 まずは、話し合いということで昨夜の経緯を説明しながら、今後の行動を考える。パーティーを分けての行動になることが確定したので、各自の希望を確認したい。


「ドラゴンからの使いで、4か所に力を送る必要があることは間違いない。出来る限り力を送る時期は合わせる必要があるため、別れて行動をすることになるのだけど……」

「組み合わせと何処に向かうか、これをある程度は決めたいと考えている。希望はあるかい?」


 私の説明の後、兄さんが引き継ぐように他のメンバーの希望を確認する。


「ふむ……足りないようだけど、4人目に心当たりはあるのかな?」

「ああ。4人目は俺が責任もって連れて行く。君達と会わせることはないし、知らなくていい」

「待って。僕も一緒に行きたい。グラノスさんと行動する」


 兄さんがはっきりと一人で受け持つと宣言をしたが、アルス君が待ったをかけた。

 アルス君の言葉にもう一人が察せたのか、ティガさんも少し困ったような顔をしている。


「いや。関わらなくていい」

「お願い。邪魔をしたりはしないから……リディでしょ?」


 兄さんが関わるなと言っても、アルス君は退くつもりは無いらしい。ナーガ君とレウスはその様子を見ているだけで口を出すことはしない。


 最近は一緒に行動をしていただけに、アルス君が譲らないことを察しているのかもしれない。


「じゃあ、兄さんとアルス君が一緒の行動ね。あと、クロウ。悪いんだけど、留守番を頼みたいけど、いい?」

「おっ、それは助かるが、いいのかぁ?」

「私と兄さんが居ないので、調合の緊急依頼の対処のためにクロウは残ってほしいと思っている。ただ……何となくだけど、命の危険はないけど、クロウの身にも何か起こるかもしれない。それでも、残ってもらう方がいいとも思っている……どうかな?」


 この地にメディシーアがいること。それは、何かあったときに依頼を出来る状態があるということだ。

 何もなければいいが、何か起きたときに調合の依頼に対応できる環境だけは用意しておかないといけない気がする。ただ、ちょっと危険も感じている。


「でも……師匠のことが気がかりだから。実際に実行するのは……すぐには考えていない」

「……まだ、時間はあるってことだな」


 師匠の体調も気がかりだった。ここにはディアナさんもいるし、夜はレオニスさんもいるので、一人にするということはないけれど……それでも心配。


 全員がそれをわかっているので、時期については言及しなかった。

 


「クレイン。とりあえず、クレインの思いつく組み合わせと場所教えて。あと、危険の可能性とか?」

「レウス。……う~ん。まず、ドラゴンがいる場所が国境山脈の奥地にいる風のドラゴンね。このドラゴンから使いが来ているので、少なくとも敵対する可能性が低い。他のドラゴンに対し、話を通しておいてくれるらしいけど、絶対ではないみたいだから……戦闘能力が低いルナさんが風がいいとは思ってる」

「わ、私? え、そもそも使いが来てるのに、まだ、敵対するの?」


 ルナさんの言葉に頷きを返すと真っ青になっている。

 多少のレベルは上がったものの、戦力として一番低いのがルナさん。白と黒を敵視するドラゴンの中でも、接触を図ってきた風のドラゴンが一番危険が少ないと考える。


「私はルナについていく。問題ないな?」

「リュンヌさんの意思に任せます。二人は遠距離攻撃な上に、戦闘能力が低いこともあるので、移動手段としてシマオウ。それに、近接戦闘も可能なサンフジとコウギョク、チリ達も数頭……猫系の魔物をシマオウが率いる形で国境山脈を越えるのがいいと思います」


 近接出来ない二人に対し、素早くヒット&アウェイで近接攻撃や団体での狩りが出来る大型の猫達は必要になる。シマオウが統率できるしね。ドラゴンが敵ではないなら問題はないはず。



「水・土・火のうち、一番危険なのはどこだい?」

「兄さん……火かな。帝国の火山にいるドラゴン。ここはルストさんに任せるのは出来ないと思う。今、帝国では異邦人殲滅作戦が始まるところだし……恨みを買っているみたいだから」

「俺が行こう。……アルスもか?」

「うん……僕が前に進むために、一緒に行きたい」


 ルストさんが帝国の異邦人に恨まれている現状、さらに殲滅作戦のことも考えると兄さんが一番適切。


 アルス君が心配ではあるけれど、覚悟した瞳をしている。ここにいないもう一人の存在。……兄さんを嵌めた、アルス君の元連れであることも理解した上での立候補なので、彼の判断に任せよう。


 兄さんとナーガ君から聞いているのは、兄さんを嵌めた女の子に、アルス君は依存していたということ。ただ、リュンヌさんほどではないとも聞いている。アルス君なりに、決着をつけたいのであれば一緒に行くべきだと思う。


「わかった。じゃあ、兄さんとアルス君。二人が近接なので、キャロとロットが魔法攻撃できるし、移動手段にもいいと思う。ただ、あの子達の毛の長さだと火山とか熱いところは苦手かもしれない」

「まあ、問題ないさ」


 移動手段と回復がキャロとロットなのが心配な部分ではあるけれど。

 それでも、ここにこれ以上の戦力は割けない。


「土は共和国の砂漠地帯。砂漠を超えた先にいることから、移動手段はワイバーンを考えてる。徒歩とかは無理だし、空を移動した方が脅威は少ないはず。水は王国の西の大滝。川を逆流して移動が可能なオリーブでの移動」

「僕は共和国がいいな。他の国も見てみたい。それに、君が王国を出るのはあまり良くないよね?」


 ルストさんの言葉に頷くしかない。

 調合技術を欲する共和国に私が行くことは、ラズ様に反対されている。私はその意向に従った方がいい。


 そう考えると、実は選択肢がなかった。連れについても、今までの親密度を考えると自ずと決まってくる。


「ドラゴンのいる場所を確認できる竜玉が3つしかないことから、大滝の奥にいる……ある程度の場所が絞れていれば、勘で探せる私が水のドラゴンがいいので、砂漠はお任せしたいです」

「わたしはルストと共に行こう」


 ティガさんの言葉に頷く。あとは、レウスとナーガ君の配置。

 戦力としては、ティガさんのところが足りてない。そこにナーガ君かレウスをあてがうのがいいけど……。


「戦力を考えるとナーガ君もティガさん達に……」

「……オレはクレインと行ク」


 ナーガ君が私と一緒に行動することを宣言したが、何かおかしい。

 じっとナーガ君に視線を送るが、目を合わせない。


 なんだろう、今の違和感。


「……ナーガ君」

「……」


 ナーガ君を呼んでみるが、返事はない。

  

 私とナーガ君の様子がおかしいことに気付いた兄さんが私の前に立ち、他のメンバーも怪訝そうな顔をしている。


「君は誰だい? ナーガのフリをしてクレインに同行しようとする理由は?」

「……なぜ」

「何となく」

「クレインが警戒してるからだな」

 

 ナーガ君じゃないことに気付いた理由は、何となくとしか言えない。語尾が少しおかしい。私と視線を合わせようとしなかった。だから、おかしいと思った。


 兄さんも私の様子がおかしいから、そう判断したらしい。

 兄さんが刀に手をかけ、鯉口を切って、戦闘態勢に入っているので、緊迫した雰囲気になっている。


「待テ……違う。敵対しない、理由を話ス。オレ……否。吾、光焔という名のドラゴンだ」


 ナーガ君の言葉にルナさんが怯えて、私の後ろに隠れた。ついでに、リュンヌさんも続いた。別にいいのだけど……ナーガ君にいたのが、あのチビドラゴンが言っていたドラゴンなのがちょっと……。


「我は死した後、こやつの中に魂が取り込まれ……ずっと見ていた。水竜の時には悪いことをした、反省していル」

「クレイン、どうする?」

「う~ん。まあ、ナーガ君の体であることに間違いないし、話を聞いてから判断しよう」

「……白のが次元の狭間を封じようトしていることに感謝すル。だが、一人では無理ダ。黒の二人に比べ、力が弱イ。我が力を貸した方が良いと判断しタ」


 確かに、二人の力を借りてなんとかするつもりだったが、一人で担当するとなると……力が足りないことには同意しかない。


「ふむ……具体的には、何をするんだ?」

「……黒と白の神より与えられた力を使う。足りぬ場合にこやつの力を使えば足りル……」

「どういうことかな?」

「おそらく、私では種族値が足りない分、他で割り振ったポイント……ユニークスキルとかを失うということかと」


 ティガさんが私に補足を求めてきたので、私の考えを伝えるとみんながハッとした表情になった。

 私の言葉にナーガ君(竜)が頷きを返し、全員の視線が突き刺さった。


「どういうことだ?」

「いや、足りないなら、他の能力を捧げることになるかなって思っただけ。ただ、そこでそのドラゴンが出てくることが私にもわからない」

「白のユニークスキルの力ではなく、我を捕らえているこやつのユニークスキルを使ウ。こやつのユニークスキルが無くなっても困る者はない。白のは困るだろウ」

「それ、本人の意思を無視して行うなら私は反対するよ?」


 ナーガ君が何も知らずに力を失うようなことになると困る。

 そもそも私がやると決めたことにナーガ君を巻き込んでいるわけで、ナーガ君の力を弱めることになるのはいただけない。


「うん? まって、それなら兄さんの方にナーガ君行った方が良くない? 私と同じく力足りない可能性あるよね」

「いや。別にアレが力が足りずに生命力を削ったところで俺は構わないからな。ナーガはクレインで確定な」


 兄さんの目がマジだった。

 反対することは許さないというプレッシャーを感じたので、後で直接ナーガ君と話し合うことにしよう。


 ただ、私達全体の安全を直感さんに頼っている部分はあるので、他でどうにかしたいところだけど……。


「レウスはどうする?」

「ティガのとこでいいよ。戦力足りてないんでしょ? 俺もナーガはクレインとがいいと思うし」

「決まりだな。ナーガに頼んで、ワイバーンを乗りこなせるように練習はしてくれ。なんなら、テイムをレウスに変えてもいい」

「あ! いいじゃん、それ。俺、ワイバーンナイトってことだよね、楽しそう」


 レウスも納得したらしいので、とりあえず、各自がどこに向かうかは確定した。


 あとは決めることはない……そう思ったけど、ティガさんが真剣な瞳で手を上げた。


「わたしからの提案だけど、時期は早い方がいいのではないかな」


 ティガさんの言葉にびくっと反応をする。

 時期を早くするということは、師匠の側を離れるということになる。



「今、落ち着いているだろう? 早めに心配事を終わらせておいた方が、安心ではないかな?」

「まあ、事実だな。俺も帝国の異邦人に対し、殲滅作戦をしている間に動く方が目立たないとは思う」


 ティガさんの言葉に兄さんが続いた。


「クレイン。君の気持ちは尊重したいが、危険度は?」


 兄さんの言葉に、じっと私の方に視線が集中する。


「……師匠のことを置いて考えるなら…………出来る限り早めの方がいいとは思う。すでにポーションとかの納品も終わってるから……次にドラゴンの使いが来たタイミング。移動時間を考えると……同時は難しいと思うけど」



 やるべきことを優先しないといけない。



 距離としては、どの場所でも移動に3日から一週間はかかると思う。

 出発日から7日後とか、そういう曖昧な取り決めでやるしかない。その間が心配なのはルナさん達だけど……水や火魔法はルナさんもルストさんも使えるようになっているので、野宿でも何とかなるだろう。


 すでに、準備は出来ている。これ以上、延期する理由はない。


「そういうことだ。皆、いつでも出立できるように準備をしておいてくれ」


 兄さんの言葉に全員が頷いた。

 安全を考えるなら……わかっている。やるべきことをやって、急いで戻ってくるしかない。



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― 新着の感想 ―
「何かあったときに依頼を出来る状態を」のあと、何かが欠けていると思われます。 保つ必要がある、とかそんな感じでしょうか。 ずいぶん急に動いていく感じですね。いろいろなことが重なって。
次元の歪み、一つ一つ攻略かと思えば、四ヵ所同時とは大変そうですね。 リディがまだ生きていたことにも驚きです。 クレインの種族としての力は『祝福』でしょうか? レベルのある『聖魔法』は大丈夫なのかな? …
これは師匠の死に目に会えないかほんとのギリギリになりそうな…居残りクロウにもトラブルがあるようだし余生くらい穏やかに過ごさせてあげたかったなあ
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