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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第五章

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5-8.再会


 キュアノエイデスにて、おおよそ1か月半ぶりにナーガ君達と再会した。


「……帰った」

「うん、おかえりなさい」


 離宮では息が詰まるとナーガ君が手紙を寄こしていたので、高級宿にて兄さんと共にナーガ君達を待っていたが、予定より2日遅れて、ナーガ君達が到着した。


 カイア様が部屋を手配したため、ホテルのスイートルームとかを彷彿させるほどに広くて立派な部屋を二つ……労うにしても、もっと小さい部屋でいいと思ったけど、カイア様がにっこりと笑っていたのに目が真剣だったので口にはしなかった。


 ちなみに、私用と兄さん含め男子用で二部屋取っている。男子4人でも十分な広さがあるのに、私一人で使うのは勿体ないと言ったら、「世話役用のメイドを手配するか?」と言われて、諦めて一人で使っている。


 兄さんはナーガ君達が来るまで一人で使っていても、全く気にしてなかった。




「ただいま~つかれた~」

「ただいま、グラノスさん。クレインさん」


 疲れたと言っているけど、3人ともいい顔をしている。手応えを感じて、満足している感じだ。


「おう。アルスとレウスもお疲れさん。なんだ、逞しくなったか?」

「本当? 俺、結構強くなったと思うんだよ! グラノスさん、手合わせしようよ」

「いいぜ? だが、まずは宿の風呂を使わせてもらって、綺麗にしてこい。その後、ゆっくり食事をしながら話を聞こう。手合わせは明日な」

「クレインさん。これ、頼まれていた蜂蜜。頼まれていた分より少し多めには持ち帰ったつもり……足りなくても、多分、補充は大丈夫だと思うから」


 アルス君がなにか、歯切れが悪そうに蜂蜜樽が入っている袋を渡された。

 すごい。蜂蜜を樽に詰めてるのもすごいけど、それが250樽ある。ダンジョンだと素材が無くならないとはいえ、膨大な量だから時間はかかったと思う。


「ありがとうね、三人とも。これだけあれば足りる。色々と噂が流れていて、蜂蜜の単価も上がってきちゃったから、これで流通に対しても落ち着かせることができると思う」

「ふむ……しかし、補充ができるってのは、何か根拠があるのかい?」

「アルス! 風呂入ろう!」


 兄さんが蜂蜜の補充について確認をとろうとしたら、レウスがあからさまに逃げようとアルス君を連れて行った。ナーガ君も視線を外して風呂の方へ逃げたので、おそらく……。


「テイムした?」

「あり得そうだな……まあ、量に困らないのは良かったじゃないか。今後も蜂蜜が採れるのもありがたいだろう」

「うん。……ねえ、私、そんなに理不尽に叱ってるかな?」

「さて……虫が嫌いな女性も多いからな。今回はそこを気にしたかもな」

「あ、確かに? でも、今回は無茶苦茶な量を頼んでいる自覚もあるから、どんな手段でも怒ったりしないのに」


 今更、ナーガ君にテイムするなと言うつもりはない。開拓地で養蜂もやるのは、問題はないと思っていたんだけどね……。



 お風呂から上がってきた3人は、正座して、こちらを見ている。

 どうやら風呂で作戦を立てて、きちんと説明することにしたらしい。


「え? 今、なんて?」

「……先に向かわせた」

「騒ぎになると困るじゃん? シマオウはクロウの気配とかもわかるみたいだし、開発地に向かわせた。ナーガがテイムした新しい群ごとの移動」


 群……。

 うん、つまり……ナーガ君がテイムした新しい女王バチこと、クイーンビーとそれに従うハニービーの集団が開発地に向かっている。

 ハニービーは20~30センチくらい、クイーンビーは1メートルくらい。


 その大きさの昆虫だと気持ち悪そう……とはいえ、蜂蜜は私が必要とした物。文句を言える立場じゃないか。それよりも、そのことを知らせないといけない。


「兄さん、急いで手紙!」

「まてまて。ナーガ、その事情は知らせてあるのか?」

「……シマオウに手紙を持たせている」


 大丈夫だと思うけど、今からでも手紙をライチに届けさせよう。間に合わない可能性もあるけど……。遅くなってもないよりはマシ。


「俺が先に帰った方がいいか?」

「ううん。貴族の接触があると思うから、出来ればいてほしい」


 兄さんが私に任せて「帰るか」と提案してきたけど、否定しておく。そもそも、一緒に来てもらった一番の理由ってそれだからね。


「えっと……他にも何体か、テイムをしてるけど、その、いい子達だから……シマオウがちゃんと率いてくれてるし、ね」


 アルス君のフォローはフォローになっていない。いや、牧場を大きくしてほしいと手紙が来た時点で、いるとは思っていたけどね。

 どうやら、異様な魔物の群れとなっているようだ。討伐しないとは思うけど……ちょっと心配になる。


「ナーガ君に反抗するようなことはないんだよね?」

「……ない」

「めっちゃ、懐いてるよ? 蜂蜜を普通に分けてくれて便利だったしね」


 ナーガ君のテイム能力、実はかなりすごいのでは? スフィノ君の話だと、好かれる魔物がある程度決まっているらしい。兎とかモフモフ系なスフィノ君と違い、ナーガ君は割と何でもテイムしているよね。


 いや、でも……ここはお礼を言うところだよね。大量に採ってくるために協力してくれているわけだしね。


「……そっか。ありがとうね、お疲れさまでした」

「……ああ」

「うん。お役に立てたなら良かったよ」

「おつ~」


 とりあえず、お礼。そして、言われた通りに牧場は広く取ってあることを伝え、開拓地の状況を説明する。


「開発地ってもう家できてるんだよね? 組み合わせは?」

「4、5人が一緒に住める家になってるからな。ティガやクロウ、ルストと一緒に考えていたが嫌かい?」

「ん~……別に」

「一応、許可を取って、各自の部屋の音が漏れにくいように工夫してあるから、大丈夫だと思うよ」


 ティガさんとも話をした。というか、提案された。聞こえてしまうのも結構気疲れするらしいので、あちらから提案があった。

 一緒の家でも盗み聞きの心配はない。まあ、一人暮らしをしたいとかなら止めないけれどね。


「一人の家が欲しいとかがあるなら、作ってもらうといいよ。でも、自費ね」


 何だかんだと、お金は稼いでるからね。

 住む家は用意したけど、自分のカスタマイズした家を欲しいならね。


「いらな~い」

「僕も、その部屋があるなら十分かな」

「……一人部屋か?」

「ああ。俺の隣の部屋だがな。向かいがクレイン、その隣は空き部屋の予定だ。お師匠さんは下の大部屋だな」


 私達の家はすでに部屋を割り振ってあるからね。空き部屋は最初はレオニスさんの予定だったけど。なぜか、モモが気に入ってその部屋を占拠していることがある。

 少し大きくなったとはいえ、家猫のままだった。ちゃんと外から入るときには玄関で足を拭いてもらうまで待ってるので、しつけはできているのだけど。


「まあ、多めに部屋は用意しているからな。好きにしていい。広すぎて落ち着かないなら、同室でもな」

「……ああ」


 あれ? ナーガ君、兄さんと同室希望なの? まあ、いいんだけどさ。

 マーレでも同室で上手くやっていたから、大丈夫なのだろう。


「それで、君たちはどうする? クレインが明日から作業をするが、2、3日はこっちにいることになると思うが」

「……あちらから手紙を預かっている。王弟殿下に繋いでほしい」

「わかった。明日、カイア経由で申し込むが……正式な謁見だと一週間はかかるぞ?」

「……非公式でいいらしい」

「そうそう、なんか直接手渡しして欲しいけど、公式である必要ないって」


 ナーガ君が預かった手紙に何が書いてあるかまでは知らないらしい。アルス君とレウスも一緒に行くのかと思ったら、そこはナーガ君に任せるという。


「俺らも行った方がいいかもしれないけどさ……大袈裟になるじゃん?」

「離宮に入ると物々しいからね……私も出来るなら行きたくない」

「でも、行くんだ?」

「まあね。だって、欲しい貴族がそれなりにいるから……他で作って持っていくとなるとそこを狙われるんだよ」

「うわぁ、面倒」


 レウスもアルス君も微妙そうな目でこちらを見ている。そう、面倒なんだよ。

 管理は任せてると言っても、私から奪いたいというのが一定数いる。特に国王派。


 離宮の作業場を借りて、そのまま渡してしまうのが一番早くて、問題が起きない。


「でも、そこまでって気がするよね」

「結構、ガチな素材を開発してるからな。レウス、今回稼いだクレインの金、えぐいぞ」

「へぇ~、あ、そうだった! 俺、借金返すか相談したかったんだよね」

「ああ……レウスは返しちゃっていいと思うよ」


 レウスの提案に対し、直感を使って確認する。クロウとティガさんも……う~ん。クロウは微妙な気がする。ティガさんも返済の話をしてみる必要ありかな。

 


「軽いね……その、いいの?」

「うん。今なら平気な気がする……前は3人を奴隷にするように命令されていたんだけどね。もう大丈夫だと思う」

「そもそも状況変わったからな。クレインの意向を無視できないだろう。だが、レウスはなんでそう考えたんだ?」

「俺、冒険者になるって決めたから。なんか、借金奴隷であるより、平民になっておいた方がいいってアドバイスもらった」


 獣王国には冒険者がいて、アドバイスをもらったらしい。その人たちは帝国出身だけど、今は獣王国のダンジョンと共和国を行き来して稼いでいる人達らしい。


「僕も……冒険者として生きる。獣王国で聞いたんだけど、同じ素材を卸すような冒険者もいるし、世界各地を周る冒険者もいるんだって。でも、奴隷の身分は他国に行けないらしいから、レウス君と話してて……」


 どうやら、アルス君とレウス君はこれから先を冒険者として生きていくことを決めたらしい。


「ちなみに、二人で?」

「それなんだけどさ……ナーガに頼んで、キャロとロットは俺らが譲ってもらうことにしたんだよね」

「うん?」

「ナーガが手に入れたアーティファクトがさ、テイマーじゃなくてもテイム出来るようにしてくれるってわかったから、俺とアルスがテイムして、二人と二匹でならバランスもいいし」

「ああ……ごめん。二人がテイムはしない方がいいかも?」


 一瞬、嫌な予感がしたから、速攻で却下しておく。


「どういうことだ?」

「ナーガ君の所有物のまま、二人には貸し出してのテイムの形にしておかないと面倒事になる」

「やれやれ。とりあえず、ナーガの所有物でいいか? レウス、アルス」

「クレインが言うなら~」

「えっと……その……面倒事、起きる感じ?」

「うん、多分」


 こくりと頷いておく。キャロとロットはあれで希少な個体に進化しちゃったからね。欲しがる貴族がいる感じかな……多分。


「ナーガの所有ならメディシーアのものだからな。貴族同士の争いにした方がいいのは間違いないだろ。貸し出しの契約をしてテイムだな。しかし、ナーガは参加しないのか?」

「……その時々でかわるだろ」

「まあ、俺らも採取とか手伝うつもりだけどさ。ナーガは長期間の遠出は嫌だってさ。俺は遠出して他国とか遠いダンジョン行って、帰ってきたら、キノコとか鉱山を交互で行く予定! キノコはクロウも連れて行って、定期的に運動させるつもり」


 うん。まあ、クロウも運動した方がいいというのはわかるけどね。最近、調合とかばかりで運動していないのは気になっていた。レウスが連れ出すというなら任せよう。

 ナーガ君は様子を見つつ、参加したり不参加だったりするらしい。


「ナーガはダンジョンよりも近場の魔物を狩るのがメインの冒険者になるってさ」

「僕らもナーガ君がいると頼ってばかりだと成長しないから……でも、キャロ達いないと移動が大変だからね」

「そうそう。俺らもさ、やりたいこと考えたんだ。でも、メディシーアの開発地を帰る場所にはさせてね」

「もちろん。好きに過ごしていいよ……でも、そうするとドラゴンの件は頼まない方がいいかな」


 ダンジョン系の冒険者だと、きちんと対策をしていればいいのに対し、何が出るかわからない秘境に行くのはその場その場の対応力が必要だし……やりたいことが決まったなら巻き込むのは良くないよね。


「僕は、行きたい、かな? その、邪魔しないくらいには強くなったと思うけど」


 ちらっと兄さんを見るアルス君は、多分、兄さんの役に立ちたい感じかな。


「いや、十分強いよ? うん、チートではないだけで」

「まあ、ナーガやグラノスさんはチートだもんね。でも、俺らもさ物理ばっかりだから、キャロとロットいるだけで楽になるんだよね」


 ああ、そういうことか。

 あの二匹は魔法使えるもんね。でも、そのせいで面倒事起きると直感が発動しちゃったんだけどね。


「キャロとロットは明日、朝一で手続きしておくか。アーティファクトの使い方が分かったってことでいいんだよな?」

「俺が手に入れたのは使い方わかったよ! 宝探すとか、採取ポイント探すのに使えた。ナーガの方は俺らが借りた方がいい感じだったからね」

「僕の方はいまだに不明だけど……なんだろうね」


 謎の球体のままらしい。前にミリエラ鉱山ダンジョンで手に入れた球体もわからないんだよね。まあ、役に立つような気がしてるんだよね。


「よし、じゃあ……君たちの武勇伝を聞かせてくれるかい?」

「まっかせて! 俺ら、レベルだけならグラノスさんやクレインを超えたしね!」

「ははっ、そうだな」



 ナーガ君達とゆっくり話を聞きながら、その夜を楽しく過ごした。

 そして、3人は私が錬金作業が終わるまでは待っててもらうことになった。 


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