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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第五章

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5-7.定期報告会


 ナーガ君から再度、連絡が来た。

 獣王国を出て、キュアノエイデスに向かっており、5日後には到着するらしい。


 ダンジョンにて蜂蜜をかなりの量を確保できた。また、レウスとアルス君からも手紙があったが、3人は楽しくやっているらしい。

 アルス君の手紙には、何故か牧場は広めにした方がいい旨の記載があったため、向こうでも増やした可能性が浮上している。


 こちらも牧場は広めにしているから大丈夫だと思うけどね。

 寝るときには小屋に入ってもらうけど、シマオウとかがいれば放し飼いでも問題はない。

 キャロとロットは作っている作物とか調合素材を食べそうだから放し飼いはしないつもりだけど。


「2日後出発して、キュアノエイデスに行って蜂蜜を受け取って、錬金作業してきます」

「俺も行こう、カイアに呼ばれてるんでな」


 みんなで集まっての報告会にて、私の宣言に兄さんも続いた。

 蜂蜜を受け取り、錬金する必要があるのでキュアノエイデスに向かうことになる。すでに水竜の肝は全て加工して、毒ではないから他の錬金術師でも作れるのだけど。


 材料になっている〈緑の沼の苔〉がね……あまり広めたくない素材なので、私達で処理をするのが一番いい。


 あの沼にありえない大きさの水竜がいるとか、知りたくなかった。体についている苔を取ってきただけらしいけど、他の冒険者には言えない。秘密にしておきたい。


「あんた達がいない間に貴族が来ると面倒になるのかぁ?」

「どうだろうな。基本的には王弟殿下かラズの紹介が必要ってことにしている。礼儀正しい貴族は来ないはずだ」


 調合依頼だったらクロウが残るので、作れないという事態にはならない。この前みたいな貴族相手だと面倒ではあるかもしれない。


 でも、師匠のお客についてはほとんど引継ぎがされている。師匠の引退を伝えた手紙に対し、ほぼ返事がきている。

 継続する場合も開拓地までは面倒だろうということで、契約を変えて、マーレの冒険者に薬をお届けしてもらったりもしている。


 割と年配の冒険者達からこの仕事の受けが良いんだよね。

 商人の護衛とかより高くない額で、薬のお届けをしてもらう。通常、割に合わないと冒険者が引き受けないのだけど……嬉々として引き受けてくれている。



「用もなく他の地方に行くと警戒されるからな。おチビちゃんの評判が良くなるように流してくるから任せな」

「魔物と戦うより荷運びのが楽だしな。この量なら楽勝だ」



 そんなことを言って、各地の顧客に薬を届けに行ってくれている。ついでに、相手方から素材とかを受け取って、開拓地まで届けてくれるのですごく助かっている。


 信頼できる人であれば、荷運びを頼めるのは大きい。護衛任務より格段に少ない金額で依頼できるからね。伝手があると助かるよね。


「大丈夫さ。わざわざメディシーアの悪評を広げておいて、厚顔無恥に依頼をするようなのはバナグロリアくらいだよ。誰か来てもわたしの方で断っとくよ。もう調合出来ないのは事実だからね。どうしても急ぎなら、クロ坊にやらせるさね」


 師匠は私と兄さんで行ってくることに賛成らしい。ティガさんも問題はなく、ルナさんも畑作業があるから行く気はない。


 何があっても大丈夫だと思うんだけど……ちらっと兄さんに視線を送ると頷きが返ってきた。


「今回はドラゴンは関係ないよね?」

「ルストさん。そうですね、今回は関係ないです。この前の調合作業の続きです。そちらが終わって、戻ってきてから行くことになります。ルストさんも待機でお願いしたいのと……行く前に少し周囲を間引きしておこうと思います」


 師匠の安全第一にするために魔物を減らしておく。

 いや、まあ……ティガさんとクロウはそれなりに強くなっているのだけど。不安が残るんだよね。残るメンバーが近接攻撃できないというのがちょっとね。


「いない間はジュード達に頼んどくか?」

「う~ん。まあ、それも有りだね」


 うん。それだけで、不安が無い気がするから……頼んでおこう。

 

 少し不安げにルナさんがこちらを見ている。何か気になる預言でも見ちゃったか、それとも男性が増えるのが嫌なのか……。

 後で確認はしておくけど、今は言わない方がいいと思う。


「大丈夫、ちゃんと手を打っておくからね」

「えっと……その……」

「そいつに任せておくといい。あんたが口を挟む必要はないなぁ……やめておけ」


 クロウが、ルナさんの言葉を遮った。それ以上口にするべきではないってことがわかったのか、頷いている。

 しかし、少しきつい言葉に聞こえたのか、リュンヌさんがクロウを睨んでいるけどね。


「クロウ、女の子の秘密を暴くのは良くないと思う」

「暴きたいわけじゃないんだがなぁ……だが、まぁ、危機察知能力はクレインに任せておいていいだろ、どうせ根拠なんか示せない」


 まあ、その通り。何となくでしかないし、ルナさんは能力を使うべきじゃない。クロウもやめとけと言っているので、ルナさんも納得したらしい。


「でも、本当に止めなよ。私はいいけど、ルナさんにはぶしつけすぎるよ」

「すまない、何の話だ?」


 リュンヌさんの質問には、適当に誤魔化す。いや、クロウが色々見えることは知っているだろうし、それなりに察して欲しい。


「レベル差があるから、あんた達のステータスが丸見えという話だ。すまん、気を付けるようにはしてるんだがなぁ」

「えっと、それって……」

「まあ、あんたらは気にしなさんな。ここの責任者がきっちり危険管理をする。無理に口挟まん方がいいだろう」


 ルナさんが預言してしまうと色々あるからね。

 

 どうしても見てしまって気になる場合、本人が受け止めきれない可能性もあるので、相談窓口として私とかに言える体制だけ用意したほうがいいかな。


 実は、毎日朝食の時に天気を教えてくれるだけでもすごくありがたいと思っているしね。

 特に、大工連中はルナさんを毎回現場に連れて行きたいとか言っている。作業を中断しないといけないとか、乾く時間とか、色々わかるだけでも作業が段違いに進むらしい。


「話を戻すが、ドラゴンの件。ルストが危険を承知でついて来るのは構わないが……君たちはどうするんだ?」

「私は不参加の方がいいのではないかな。戦いの場に行けば、また、余計な口出しをしてしまいそうだしね」

「あんた、本当に反省はしてるんだなぁ」

「クロウ。君はどうなのかな?」

「俺もパスだなぁ。婆様もいるし、調合の依頼がある可能性を考えるとこちらに残った方がいいだろう」


 ティガさんとクロウは残るか。私達がいないので、師匠のことを任せられるのは大きい。最近はティガさんも師匠の側にいることが多いので、何だかんだと上手くやっているっぽい。


 ルストさんだけ一緒に来るというなら、一人くらいなら何とかなる。


「ルナは気になることはあるか?」

「えっ……う~ん。クロウさんいるなら水まきは困らないし、雑草抜く作業は手伝ってほしいけど……」


 兄さんの問いに対し、ルナさんは考えるが、特にないらしい。

 田植えが終わったばかりで、畑に人手も足りているみたいだからね。水を撒く作業については、風魔法でスプリンクラーみたいに水をまいてるけど……クロウと兄さんが担当している。

 どっちかいないと困るのはわかる。


「私も出来るようになればいいんだけど、まだ、水魔法で水をまくのもうまくいかない」

「ぼくも出来ないよ」

「私もだな」


 ルナさん、リュンヌさんとルストさんも水魔法覚えたのだけどね。

 悪魔の種族も魔法は苦手ではないらしい。私と同じように風・水・土・火は普通に覚えた。ただ、レベルが低いし使う機会も少ないのでそんなに魔法レベルが上がってるわけではないから、上位魔法も覚えてない。

 リュンヌさんは闇・風・水を覚えているけど、可もなく不可もなく。苦手でもなさそうだけど、火と土ってあまり使わないから覚えないのか、素質がないのかはわからない。


「風を起こすにしても、上手くできないんだけど」

「まあ、練習してれば出来るようになるかも? そもそも、兄さんとクロウは風魔法については適正高いから……」


 鳥人だからなのか、そもそものDEX値が高いからなのか。

 風魔法を器用に扱っている二人は川から水をまいている。その方が川の栄養素もあって、いいらしいのだけどね。


 私が当番のときは、水魔法ですませている。そっちの方が楽なので。


 私は風が目に見えないから、認識し辛いのもあって風で運ぶのは苦手。切り刻むとか、攻撃は出来るけどね。風を起こして水を運ぶとかどうやっているのか、わからない。



「クレインさんが出来ない時点でもう諦めてる……」


 う~ん。魔法って感覚頼りなところがあるからね。


「普通の人がレベル20~30くらいなんでしょ? それくらいで十分、私は冒険者なんて嫌。外出たくない」

「ルナがこう言っているからな。私も遠慮しよう」


 でも、もう少しレベル上げた方が良くない? 

 これから畑増やすかもしれない。まだ、土地は余っているわけで……畑に水を撒く方法が簡単に出来るのは大きい。


 誰かがいないと満足に作業が出来ない状態はよろしくないので、おいおい考えていかないといけないかな。


「まあ、やりたいことがあれば協力するから言ってね? こっちが手伝ってもらう部分があるから、出来る限り要望も聞くので……ただ、出来れば、作物の世話の仕方は教えてほしいけど」

「あ、うん。家で手伝うときはいやいやだったんだけどね。こっちだとすることないし、育っていくのを見てるのも面白いから平気」

「では、一週間くらいは留守にするから、何かあれば早めに言ってくれ」



 兄さんがそう言って締め、翌日から周囲の魔物を少し多めに狩ることになった。


 ルストさんと私と兄さんの3人で……意外でもないけれど、ルストさんはティガさん達に追いつくくらいにはレベルを上げたいらしい。


「う~ん。強さが全然違うんだね」

「レベル差もありますし、もっているアビリティの差もありますけどね……アタッカーとして兄さんの実力はとても高いです」


 兄さんがいるとさくさくと魔物を倒してしまうので、私とルストさんの出番は少ない。兄さんの方が視力がいいから見つけるのも早く、弓での攻撃でも十分に倒せてしまう。


 ルストさんは私と同じ万能型で、遠近・物理魔法が両方できるアタッカー系の成長なのだけど……逆に、兄さんほどの高火力アタッカーにはならない。

 成長率はいいけど、アビリティを覚えるのは……普通?


 兄さん・私・クロウはアビリティとかを覚えやすい。ナーガ君とティガさん、アルス君は覚えにくいと結構極端なんだよね。私とナーガ君を別にすると、鳥人と獣人の違いかな。


 そのどっちでもないのがレウスやルストさん。多分、種族の違いだろうなと思っている。ルナさん達は戦わないから不明。



 とりあえず、魔物は減らして、肉の備蓄ができた。野菜とかは購入になるけれど食料不足とは無縁なくらい確保している。植えた野菜がどれだけ採れるかはわからないけど、新しい土地での自給自足はなんとかなる。


 世界情勢としては、食料事情は厳しいというので……日持ちするように加工しておくのがいいんだろうな。


 まあ、肉だけなら手に入るんだよね。魔物は結構いるから……。

 開拓地もだいぶ形になってきたかな。

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