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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第四章

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4-35.話し合い


 カイアナイト殿下に対する私の行いは咎められなかった。

 ラズ様が焦っていて、あとで事情を聞くとは言われたけれど……私も何が起きたかを把握していない。


 とりあえず、夜、話し合いのために宿に行ったついでに、兄さんを含めてクロウに相談する。


「カイアに何かあるのか?」

「えっと、わからない」

「詳しく見てみればわかるかもしれないがなぁ……治癒系魔法は病気には効かないんじゃなかったか?」

「う~ん。高位の光魔法や聖魔法には病気の緩和ができる魔法があることは教会で確認している。けど、まだ使えない……」

「まだ、ねぇ……」


 クロウが含みのある返しをしてきた。

 いや。使えるようになるかは、その人の資質にもよるわけで……どうだろう。使えるようになるのだろうか? 


 だけど、カイアナイト殿下への魔法に効果があったのが、解呪〈ディスペル〉ということが気になる。


「呪いねぇ……」

「魅了を解呪で消したりできるから、そういう類かなとは思ったんだけど。一番効果があるのは呪いのはず」

「正直に言えば、病に関してはほぼ力にはなれないだろうなぁ。婆様が病気であることくらいはわかっても、それ以上、詳しい病を探るのは難しい。さらに、俺自身が、病気がわかったところで治療法がわかるわけでもないしな。呪いもどうだろうなぁ」

「だよね……そんな気はしていた。わかっているなら、師匠のことをもっと教えてくれるだろうし」

「婆様の場合、年齢もあるだろうからなぁ……見ても分からないが、それでいいなら会うことは構わない」


 クロウとしては見ることは構わないが力になれるかどうかは別の話だという。

 それでも、カイア様と直接会うことを了承してくれたので、明日、もう一度クロウを連れて会いに行く。ついでに、可能であれば治療をすることになる。


「すまんな。色々と面倒に巻き込んで」

「まったくだ。だが、ある程度は仕方ないことだろう。何にでも首をつっこむからなぁ」

「ごめん」


 うん。本当に申し訳ないとは思う。もっと、自分でもわかるようになりたいとこだけど……そもそもが、鑑定を上げたところでクロウのようには見えないんだよね。


 基礎知識が足りていないから、症状で判断ができないのもあるけど……もっと根本的な問題でもある。詳しい状態を見るなら、どうしても力を借りるしかない。


 あと、思いつきで動いてしまうのは申し訳ないとは思う。


 兄さんは、カイアナイト様が心配なようで、少しほっとしたような表情をしている。私が体調悪くしてしまったんだけどね。


「話はすんだかな?」

「はい。すみません」


 話がまとまったところで、ティガさんがやってきた。まあ、こちらの話を聞いていたのだろうけど、そこは口にしない。

 ルストさんとルナさん、リュンヌさんもいる。今後についての話し合い……どこから話をしていいものかな。


「では、まず俺から話をしよう。土地については、メディシーアに与えられるのが確定した。調合の素材となる草木などを育て、研究することを目的としており、こちらが提供したのは開発した安らぎの花蜜の代替素材となる錬金蜂蜜のレシピだな。貴族としてではなく、薬師としての実験場として土地提供だ」

「土地を取り上げられる可能性はないということかな?」

「ああ。メディシーアが薬師である限りな。新しく村を作って、入植者を集めるわけじゃない。調合を担うメディシーアが、素材を入手するのに適した場所として、国境山脈に近く、キノコの森にも近い場所に居を構えるというスタンスだな。だから、草木なども育てる。もちろん、自分たちの食事のための麦とか野菜もな」


 税金をどうするかは聞いていない。王弟殿下に直接納めるにしても調合で稼ぐことのが大きいから、農作物で支払うとかは無さそう。一応、後ほど書面にて決め事とするのだろうけど……おそらく問題はない。


 この案で大きいのは、メディシーアが爵位が無くなった後でも、薬師としての地位が無くなるわけではないため問題が起きないこと。薬を納品とかはマーレに出向いたりすることになるとは思うけど。

 薬師としての収入に対しての税金が主になるだろう。それでも、登録レシピの収入とかもあるのでそれなりにお金は入る。スポドリの売れ行きが好調なので、すごく助かっている。


「ふむ。拠点を作るという感じだね? 人数が増えないとなると、家を建てるにしても大変そうだね」

「金はあるから、大工を雇ってなんとかするしかないだろうな。それと、帝国から4人ほど犯罪奴隷が増えている。こいつらは解放することはないだろうから、そのまま人手として使ってくれ」

「……犯罪奴隷? なぜ、そんな者を?」

「帝国で襲われた野盗……頭を殺したら、大人しく投降した……ということになるな。野盗というか、馬鹿なことをしていた異邦人の連中だ。洗いざらい帝国の情報を吐かせる必要もあったからな。まあ、クレインの様子だとうまくいかない可能性出てきたけどな」


 クロウもティガさんも複雑そうな顔をしている。

 単純に考えれば、問題児が増えるってことだけど……。でも、人手が必要となったときにこの世界の人と接点を増やすとなると、お互いの感じ方が違うから面倒なことになる。


 正直、使えなかったら切り捨てるという考えが上手くいくとも思えない。


「あの、犯罪奴隷ってどういうこと?」


 ルナさんの質問に少し困りつつ、説明する。


「……犯罪によって、奴隷身分になった人。無礼打ちとかもある世界だから、まあ……示談するお金がなくて、死刑にならなかったら、大抵は犯罪奴隷。その借金奴隷みたいにお金を返せれば解放されるのと違って、よっぽどのことが無い限りは解放されない」


 ルナさんに説明をするけど、不安そうにしている。実際、私も会ったことない人たちなのでどんな人たちか知らないからフォローは出来ない。


 でも、一歩間違っていれば、私達全員、そういう状態になっていたってことなんだよね。とりあえず、衣食住を保障することしかできないだろうけど……兄さんも考えがあって、奴隷にしたんだろう。


 レオニスさんが見捨てられなかっただけという可能性もあるけど。レオニスさんはなんだかんだと人情家というか、見捨てられない人だ。


 私達のことを世話する中で、異邦人にもいい奴はいると思っている節がある。



「はっきり言おう。そいつらは帝国の民を殺している。まごうことない犯罪者だ」

「え? な、なんでそんな人たちを?」

「そのまま放置するのも寝覚めが悪かった。それだけだ……すでに、異邦人へのヘイトは溜まっているからな。どうせ死ぬことになるなら、連れ帰って構わないだろうと思ってな」

「あんたまで、何を甘いことを」


 クロウの言葉に、兄さんは苦笑を返している。私があまいことは承知していても、兄さんまでとなると怒っている。引き締め役がいないとどんどん増えるだけで、秩序が乱れてしまう。


「一応、そいつらの証言があれば、異邦人が帝国で犯した罪を公表し、異邦人を捕らえて、帝国の土地を手に入れる大義名分が手に入る。まあ、無くても王国は攻めるとは思うけどな……異邦人の国を作らせるようなこと、今回は許さないだろう」

「まるで、異邦人の国があったような言い方だね? 何を知ったのかな?」

「……王国、共和国の建国には異邦人が関わっている。にもかかわらず、異邦人が何かを成した記録は全て歴史の闇に葬られている」


 ティガさんが私に確認するように視線をおくってきたので、こくりと頷いておく。


「スペルビア様のご厚意で書庫を自由に読むことは出来たので、意図的に異邦人の存在を歴史から消していることは間違いないです。多分、名前を残すようなことをすれば存在が消されています」

「ただ、名前を残さない限り、生かしているようだがな」


 兄さんの言葉に首を傾げると、苦笑していた。そんな描写あった? そう思ったのがわかったのか、兄さんが説明を続けた。


「共和国が異邦人を奴隷にしているのは、おそらく王国に倣っている。違うのは、王国は使える者だけを確保する、共和国は全てを奴隷としているらしい。歴史書にもいくつか名前のない奴隷の記載があったが、どれも優秀であるにもかかわらず、生涯奴隷であり続けた。手柄を考えれば身分を戻すことも可能だったのにな」


 兄さんが調べた中には、共和国での扱いもあったらしい。

 たしか、今回の異邦人は全員奴隷にしているのが共和国。ルナさん達みたいに逃げているのも一定数いる可能性はあるけれどね。



「つまり、奴隷であれば消す可能性が減るってことでいいのかな」

「まあ、ティガの言う通り、そういう印象をもったというだけだがな。奴隷に名は残らない。そもそも、その前の身分も無い。突然沸いた人間とするにはちょうどいい存在だ。一侯爵家の記録とはいえ、異邦人は徹底的に消しているのに反し、本来は気にも留めないような奴隷の功績を遺しているからな」

「そもそも、ラズ様が最初に私に持ち掛けた契約も精神を縛るものだったしね。おそらく、逆らえないようにすれば殺さない」


 あの時の判断、早すぎるんだよね。はっきりと私と他の異邦人を分ける行動だった。たしかに、一部だけ奴隷にするという行動は前からしていたという予測はたつ。


「今回、帝国から連れ帰ったのは、もう問題を起こす気力もない奴らだ。指示に従って、食事も満足に与えられずにいた連中を連れ帰っても問題はない」

「えっと、じゃあ、何が問題なの?」

「問題というか……ルナさん。まあ、簡単に言うとこの世界の異邦人へのスタンスが『目立たない分には生きていても良し』、じゃなくて『役に立つなら生きていてもよし』なんだよね。でも、功績は残させたくない。だから、予測だけど、奴隷にしている。まあ、だから奴隷を増やしても問題ないかというと、微妙だけど……上手くいかないようなら放逐することは検討してほしい」


 兄さんは私の言葉に少し驚いた後に頷いた。ティガさんが苦笑している。

 問題児でなければ構わないのだろうけど、異邦人は問題児しかいない。多分、この世界が異邦人に厳しいのも、私達よりも前の異邦人達も問題ばかりを起こすからだろうしね。


 でも、優秀な人もいるから、完全に殲滅はしていないから面倒な状態になっている。


「頑なに異邦人を仲間と認めないのだな」

「リュンヌさん。一人ひとり考えが違うんです。私は町を襲い、人を殺すことを強要する人たちと一緒に行動したいなんて思いません。だいたい、回復可能な素材を7割以上ダメにした時点で……許せないと本気で思う。やらかして、素材駄目にしたせいで、他の人たちがどれだけ困ったか」

「あ、ああ。それはそうなのだが」


 私はあの時にとても困った。

 だからこそ、全ての異邦人を仲間なんて言うなら、私はリュンヌさんを見捨てる。


 私の視線を感じたリュンヌさんが動くよりも早く、ルナさんが「ごめんなさい」と謝り、リュンヌさんにも謝るよう伝えた。


 すごく不自然な感じだったけど、ルナさんはこちらを見て頷いているので、おそらく何か予知が見えたのかな。


「まあ、実際に問題を起こしているところを見たことがないとわかりにくいだろうが……すでに一国が滅んでいることは認識したほうがいいぜ? 今回増えるのは、そういう連中に逆らえず……いや、一度死んで、心を折られた連中だな」

「兄さん?」

「一度、殺されたらしい。指示している奴に、一度死ねばステータスが上がると言われて殺され、仲間にはそのまま死んだ連中もいるとさ。反省しているし、変なことはしないだろう。それでもこちらに歯向かうなら追い出す」


 それ、大丈夫?

 この世界そのものを恨んじゃいそうな、闇落ち案件だったりしないのだろうか。


「グラノス。彼らが慣れるまでは、きみも開拓側にいてもらっていいかな」

「ああ。とりあえず、肝さえ加工してしまえば、ここにいる理由もなくなる。作付けを考えると、開発地に向かうのをこれ以上遅らせられないだろう。明後日までに、加工を終わらせる。その後、ここを発つつもりだ」

「では、3日後にここを出て、その土地に向かうでいいのかな?」

「ああ。準備はどうだい?」

「そうだね。農業などをすることは決定のようだから準備しているよ。きみ達の家はどうするのかな?」


 ティガさんの言葉に、少し考える。

 家か。新しく建てるなら、考えた方がよかった。兄さんを見ると首を振られたので、特に考えていなかったらしい。


「ああ……考えてなかったな」

「う~ん。貴重な素材の保管とかは、保管庫を作った方がいいかな」

「保管庫は厳重にしておく必要があるだろう。作業場も住まいと別にしてくれ。俺も出入りすることになるからなぁ」


 クロウの言葉に頷く。確かに、調合のためには素材保管庫と作業場は一緒の方がいい。クロウも薬師だし、出入りしやすいように分けるのはありかな。


「きみ達は一緒に住むでいいのかな?」

「できれば、な。一人で住まわせて攫いやすいと思われても困るからな。メディシーアの家として、お師匠さんも含めて、住めるように設計するのがいいだろうな」

「狙われる立場であるということかい?」

「いや、わからない。ただ、用心は必要だからな。君は嫌かい?」

「ううん。今更だし……兄さんがご飯作ってくれた方が美味しいから」

「それはあるなぁ」


 ルナさんとリュンヌさんが「え?」という顔をしているけどね。

 私も作れないわけじゃない。外食するくらいなら自分で作るけど。美味しいものを食べるなら兄さんに任せた方がいい。手伝いはするけど。


 クロウも頷いている。むしろ、クロウは食事は出来る限り私達と食べるようにしている。自分で作る気はない。


「えっと……今後、食事ってどうなるの?」


 ルナさんの言葉に、視線を反らす。食事に関しては、お任せするしかない。宿だと食事が出てくるみたいだけど、開拓地には宿とかないからね。自分でなんとかするしかない。


「自分で稼いで、作るなりなんなりしてくれ。そこまで責任はもてん」

「しばらくは、食料とかを提供するよ。その分は借金につけるけどね。ルナさんが作った作物については、買い取りするとか、物々交換でもいいし。働いた時給分はちゃんと支払う。ただ、兄さんが全員分作るのは難しくなるからね」

「たまにならいいがな」


 だよね。兄さんが全員に毎回振舞うとかできないし、個々に食事を用意する形になるだろう。材料については、まとめて用意をすることになるかな。


「魔物用の牧場と大きめの家、作業場兼保管庫。これくらいかな?」

「あと、醸造用の小屋。それと、しばらくは個々の家にお風呂をつけても、魔道具がないと思うので、公衆浴場?」

「ふむ……もう少し詳しくお願いしてもいいかな」

「住む家は各自のを用意するにしても、給湯器って普通の家だとないんですよ。私達の場合、私が魔法でお湯張ってます。魔道具やアーティファクトで風呂場用に買いそろえるにもお金かかるのと、そこまで用意するのは財政的に……衣食住を整えるにしても、難しいかな」

「まあ、な。各自が用意する分には構わないが、こちらが用意するものでもないだろう。公衆浴場のは用意するか」

「家は用意するつもりなのかな?」


 ティガさんの言葉に頷いておく。建築費用とかはこちらで負担しないとだろう。素人が作って、すぐに壊れてしまっても困るので、ちゃんと大工さんに依頼する。


 建築用の材料とか、区画整理のための準備は参加する必要があるかな。


「家はないと困るだろう。ある程度は用意するが、カスタマイズするなら自費で頼む。まあ、その土地に必ず住めとか、そんなつもりはないしな。出稼ぎに行くのもありだろうし、縛るつもりはない。土地にいるなら農業や酪農を手伝ってもらうことになる」


 開拓地については、責任者はティガさんなのでお任せするつもりだしね。ティガさんが他に移りたいのであれば、また考えないといけないだろうけど。たぶん、何とかなると思う。

 


「とりあえず、開拓地については予定はそんな感じで。大工さん達の護衛とかも含めて、基本的には兄さんか私が滞在する方がいいのかな」

「まあ、安全確保のためにはそうなるな。戦力としては、ティガ一人じゃきついだろう」


 タンクだからね。攻撃手段を考えても、厳しいだろう。

 早めに空堀や土塀でもいいから、土地の周囲に作っておく必要があるよね。多分。

 

 安全確保してから、大工さん派遣してもらうのが現実的かな。


「承知したよ。他に話しておくことはあるのかな」

「じゃあ、私からドラゴンの件について。実際にこちらが動くのは、ナーガ君達が帰ってきて、色々と作業が終わった後になるので、まあ、1、2か月先かな。ドラゴンに会いに行きます」

「な、なんで?」

「ルナさんとルストさんがいると、ドラゴンが襲ってくる可能性もある……まあ、私もなんだけどね。襲われる前に話に行く。で、交渉することになるのだけど……」

「わ、私!? なんで!?」

「僕も、なの?」


 ドラゴンの情報、この世界の情報を説明する。わかっていないことも多いことは間違いないのだけど、知っている部分は共有。特にドラゴンが悪魔を襲うという伝承は一つではないからこそ、教えておく必要がある。



「納得いかない……」

「う~ん。協力して欲しいのだけど、嫌?」

「僕は構わないよ。ドラゴンに会えるの楽しみだね」


 いや。楽しみって……今、殺される可能性あるのを説明したんだけどな。ルストさんの発言にちょっと心配になる。

 ルナさんは納得できないのか、泣きそうな顔をしている。


「最初から交渉の場に二人を連れていくのかな?」

「いえ。まずは交渉なので戦闘能力のない二人は連れて行かないつもりです。私が王国内、西の大滝にいる水のドラゴンに会いに行こうかなと思ってます。スペル様の情報ですが、一応、穏やかなドラゴンらしいので。そこで話をして、あちらの事情も含めて確認して、許可を得てから、ルナさんとルストさんの力を借りようかなと」

「まって! それって、あなた達がいない間に襲われたらどうなるの!?」

「え? う~ん。多分、厳しいんじゃないかな」


 水のドラゴンと交渉している間に、他のドラゴンが襲撃したら……。

 考えなかったけど、そういう可能性もあるのかな。というか、ルナさんはその可能性を予知した? 余計なことを話さないように伝えるのも不自然だし、どうしようかな。


「まだ、計画段階だから。とりあえず、交渉についてくるとかも各自考えてもらうけど。今すぐじゃないから。私と兄さんとナーガ君は固定かなとは思ってるけど」

「ああ。流石に、一人で行かせることは出来ない。で、二人は、交渉が上手くいったら協力はするのか?」

「それって悪魔の力使うんでしょ? 今、封じてもらっているのが、解除されない?」


 ルストさんの疑問に頷いておく。それは、その通り解除することになる。

 封じているのを解除しないと使えないだろうからね。ただ、その時点で悪魔が出てきて、私を殺そうとしても困る。


「うん。そこら辺について、きちんと考えないといけないんだよね。ただ、お互いに距離を取っていれば避けられるはずだし。まずは、ドラゴンが襲ってこない状況を作りたい」


 その後については、同じ場所にいなければ、多分、何とかなると思うので。そこら辺は後で考えてもいいと思っている。


「あの悪魔が封じられてないと、私、おちおち寝てられないんだけど……」

「ルナさん……そこまで?」

「だって、夢とかでも悪夢ばかりだったの! 貴方が封じてくれてから、本当に楽。だから、おねがい! 協力して元に戻るなら、また、封じて欲しいの」

「う~ん。約束は出来ないけど……力使ったあととかなら、ルストさんみたいに少しの祝福でもなんとなるかな……どうだろう?」


 ルナさんよりルストさんのが楽だったので、可能性はあるのかな。


「ありがとう! 何でもするから、言って」


 ルナさんとしては、何でも協力してくれるらしい。まあ、それは助かるのでお願いする。しばらくは開拓地での農業になるかもしれないとも伝えたが、やってくれるとのこと。


 食糧危機について説明したときはきょとんとしていたが、しっかりとまずいことは認識してくれたらしい。数人の食料よりも多い作物を育てることになっても了承してくれた。

 

 そんな感じで、話し合いの場は終了した。細かいことについてなど、ティガさんの方から書面を貰ったので、それについては後ほど回答ということになったけどね。


 全員の話し合いにて、牧場についてが一番悩んでいることがわかった。

ティガさんがテイマーギルドの様子を聞いて、一応、構想を作ってるようだけどね。まだ増えそうというのが全員の共通の考えだった。


 シマオウとかモモみたいに放し飼いでも大丈夫そうな仔もいるけれどね。



 その後、師匠にも相談した。

 開拓地に行くこと、その地では一緒の家に師匠の部屋を用意したいと伝えた。


 たまに遊びに来るくらいのつもりでの提案だったけど、嬉しそうに部屋について意見をしてくれた。

 調合用の部屋設計は師匠の意見を全面的に採用することにして、兄さんとクロウも文句はないようだった。


「あとは……屋敷は、保管庫と作業場は外から見えないようにつなげておくか、いっそ、客が出入りできる場所を狭くした方がいいさね。客が来たときにそこに向かうようにして、こちらが何をしていたかはわからないように準備が出来た方がいい」

「なるほどな。呼ばれたときに、外歩いてたとなると面倒だろうしな。だが、辺鄙な地にわざわざ来るのかい?」

「来るさ。調合の依頼はそれなりにあると思っていいよ。わたしの客も依頼しに来るだろうしね。店は村の入口に用意しておきな。貴族であっても、基本は店。貴族は屋敷に案内することになるだろうけどね……出来る限り、私生活のスペースには入れないようにしておくのがいいよ」

「ふむ……住まいとは別に迎賓館を用意しておくか。迎賓館を入口に置いて、そこから先は来れないようにするのが良さそうだ。お師匠さんは他に希望はあるかい?」

「部屋は1階にして欲しいくらいだね。最近は階段が億劫さね。まあ、もう引退した身だからゆっくりさせてもらうよ」


 家が出来てからだけど、師匠も一緒に暮らしてくれるらしい。でも、レオニスさんはいいのだろうか? とりあえず、ラズ様とレオニスさんには伝えておこう。でも、師匠が来てくれるなら嬉しい。


 楽しみになってきた。それなら、マーレにはたまに顔出すだけで、拠点は開拓地でいいしね。



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師匠と一緒になのは嬉しいですねえ!
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