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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第四章

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4-27 .ラズ様への報告


 ラズ様達が2階に上がってきたので、お茶を用意する。

 お茶請けは、とりあえず果物のシロップ漬けと、ユニコキュプリーノスのジャーキーもどきでいいかな。


 ティガさんがいることについては、特に何も発言はなかった。徹底して、関係ないものとして扱うのか。貴族だから使用人がいることに疑問をもたないからなのか。

 ラズ様の考えは知らないけど、聞かれて困ることを話すつもりもないらしい。


 お茶を淹れて、席に座る。どうぞ、と私の横に座るようにティガさんに伝えるが、一切の反応はなかった。フォルさんにも「立っていると気になるので」と言って座ってもらう。


「成果はどう?」

「とりあえず、完成しました。試作として、上級薬も作れるのは確認しました。材料については、蜂蜜が大量に必要なのと……もう一つ。ナーガ君達に今、採りに行ってもらってます」

「は? できたの?」

「はい。問題は、私自身は安らぎの花蜜を使って、上級薬を調合したことがないので……使い勝手の違いが分からないんですよね」


 師匠はあまり体調良くない感じなので、使い勝手を試してくれとは頼みにくい。かといって、薬師ギルドに行って、レカルスト様にお願いをしに行くのも気が引ける。

 とりあえず、私自身が安らぎの花蜜を使う薬をもう少し作ってみてから考えようと思う。


「まって。すでに材料の確保もすみそうなの?」

「いえ、蜂蜜は全然足りないですよ? 水竜の肝が一匹当たりだいたい300グラムだと蜂蜜は3キログラム必要になるので、大量に採ってくる必要があります。あと、レカルスト様に頼んで、領地で採れる素材の提供……これは、一つにつき一個あれば十分なので、水竜の肝と同等の数を仕入れたいです」

「あっそ……なんかもう、十分と出来る算段ついてるのが怖いんだけど」

「私ももう少し時間かかるかなと思ったんですけど。クロウが優秀で、あっさりといい素材を見つけてくれたので」


 大量生産するためには、安く手に入る方が良い。蜂蜜をナーガ君達が採ってきてくれるなら、安く仕入れることもできる。一番高くなるのは、レカルスト様に頼む素材か、水竜の肝かな。

 輸送費かかりそうだから、レカルスト様の方が金銭的にはきついかな。あと、クロウや兄さんが発注してくれた他の素材での組み合わせとかも、これから検討の余地があるとは思う。


「ちなみに、君だけで出来そう?」

「え? クロウと兄さんに手伝ってもらうつもりだったんですけど、まずいです?」

「ああ、その二人は構わないよ」


 どういうこと? ラズ様に確認すると、私だけでというのは、他の人にはその技術を伝えないということだった。まあ、メディシーアの秘伝扱いにするという。


 そもそも、調合と錬金がどちらも出来る人がほぼいない。多分、水竜の肝を調合する場合、中級中から中級上の技術は必要になる。そうすると、自然と錬金も同じくらいの技術が必要。さらにいえば、普段あまり作らない錬金なので、大家さんも唸ってた。

 あまり、お願いするのは良くない気がするので、私がやるつもりではいる。手伝いが欲しいだけで……だから、まあ、ラズ様の目的通り、他には伝わらないだろう。


「水竜の肝の処理はすべて、君が責任をもつことを前提でいいんだよね?」

「そのつもりです。予定としては蜂蜜が手に入るまでに、調合で中間素材にしておく感じですね」

「うん。今、安らぎの花蜜が足りてないから、可能ならすぐに量産して欲しいんだけど」

「蜂蜜がもうあと10キロくらいなので、作れても水竜の肝3つ分です。レカルスト様にもらった素材はまだあるので、あとはナーガ君達が採取できてれば、ですけど……」

「申し訳ありません、クレイン様。その代替素材は、安らぎの花蜜の量に対し、どれくらいの量を使うのでしょうか?」

「同じですよ?」


 フォルさんの質問に対し答えると、なぜか、顔が引きつった。いや、だって代替素材として作ったんだから、分量同じで作れないと困るでしょう。多少、魔石を使って錬金している分、魔力濃い目になっているけど、そのまま素材を置き換え可能レベルで作り出した。


 ここで、分量を変えたり、他の素材も追加しないといけないような代替素材にしてしまうと、品不足で困っている薬師達が対応できずに困ってしまうはず。


 ティガさんを見ると苦笑が返ってくる。私一人では無理でも、クロウという、鑑定のエキスパートがいれば、多少の無理はなんとかなるのだけど。


「ちなみに、他の素材でも可能?」

「闇・水属性を満たす素材があれば、ですかね。毒を打ち消してしまえばいいと考えれば、割と闇属性は自然界にも存在するので……時間をかけて、素材を研究すれば出来ると思います」

「そう。とりあえず、可能であれば明日までに多めに用意しておいてくれる?」

「わかりました」


 ナーガ君達の帰り次第だけど、おそらく大丈夫だろう。明日の出発までに、作ることはできるはず。ネビアさんに渡してしまったのが失敗だったかな。でも、あれはあれで必要なことにしておいて欲しい。


「一応、事前に水竜の肝のことは伝えてある。成果が形になりそうならって話だったけど」

「はい。問題は無いかと……連絡しておきます」


 ラズ様とフォルさんの会話で、問題ないらしい。成果として十分ということだろう。


「成果って、どの程度を想定していたんですか?」

「作成できそうな素材の組み合わせや、代替素材を使う場合に必要になりそうな素材、他に組み合わせる素材とかね……普通、そのまま使えるものが短期間で出来上がると思ってないから。出来そうという計画書くらいでよかったんだよ。君、病み上がりだしね」


 代替素材をさらに煮詰めたり、薄めたり、他にも普段使わない素材を一緒に調合するなどを考えていたらしい。とりあえず、出来るなら渡してもらえるということで一安心。


「本当に、無駄に優秀なんだよね。もう少し、普通でいてくれないかな」

「そう言われても……できる事やってるだけで……急がないと、師匠の命に関わるんで、かなり本気で考えたんですよ?」

「それはそう……でもね、普通じゃないからね。まあ、そっちも驚いてるみたいだけど」


 私の横に視線を送った。ティガさん? 何、そのこくりと頷くの、やめて欲しい。ティガさんは私のことなんだと思ってたんだろう? 今更、こいつ凄かったんだみたいな顔している。


「ほんとうに。言動とやっていることが一致していないせいで、見誤ったとしか……今更、非礼を詫びるしかできないのだけどね」

「いや、別にいいですから」


 ティガさんとしては、私の調合やヒーラー能力について、かなり温度差があったらしい。まあ、2か月やそこらで結果を出せる方がおかしいというのはわかる。でも、DEX値というアドバンテージがあるから、私だけでなく、クロウも兄さんもそれなりに作れてしまうんだよ。

 実際、戦闘能力よりも、調合があってよかったとは本当に思う。


「それから……父と兄からクヴェレ家で調べた諸々の事情も話を聞きたいって」

「そっちはちょっと……まだ、ルストさんに会ったことないんですよね。兄さんが会わせるなって厳命して、出かけてるので。ルナさんは多分、話をすれば協力してくれると思うので、ルナさんだけでも連れていきます?」

「君がやるわけじゃないの?」

「それがですね、どうも、私一人でやると死にます。〈直感〉さんを信じるならですけど。それで、私の力と対になるルナさんやルストさんに助力を頼みたい。そこで、兄さんがいないから話が進まない状態です」


 話を進める余裕も無かったけど。まずは代替素材をってことだったからね。

 だけど、一度の報告ですむなら、許可貰っておきたいとこでもある。


「君が死ぬっていうなら、そもそも、この話はなかったことにするよ? 悪いけど、代替素材を作れる優秀過ぎる薬師兼錬金術師を死なせるようなことはできないからね」

「いや、でも……遅かれ、早かれドラゴンに襲われるなら、話し合いって必要だと思います」

「はぁ……まあ、僕としても町を襲われるのは困るね。で、わかっている範囲で話すのが前提でも……グラノスじゃない時点で不安しかない」

「たしかに」


 いや、交渉事が苦手なことは自覚あるけどね。ティガさんまで頷いた。フォルさんはにっこりと笑いかけてくる。

 

「そもそも、なんで兄さん出かけるの許したんです?」

「許してないよ。君が目を覚ましたって聞いて、見舞いにきたら、レオと二人で出掛けた後だったんだよ。ぜんぶ、事後承諾。君がすぐに作業できない以上、早急に必要となるから採ってくるって置手紙だけ」

「……なるほど。謁見すっ飛ばしてまで、手に入れる必要があった。師匠だけじゃなくて、ラズ様のお兄さんのためもあります?」

「……多分ね。まあいいや。ルナって子は、連れていくよ。いない間に何かあっても困るから。ナーガ達も一緒ね。領都で、獣王国への許可証を渡して、すぐに採りに行けるようにする。クロウ、だっけ? 彼も作業ができるなら連れてね」

「わかりました」


 ルナさんについては、兄さんの管轄ということになっているので、連れていくことが決定らしい。放置できない。でも、私が直接会うわけにいかないと思ったら、ルナさん達のために馬車用意してくれるらしい。


「わたしとルストもいいかな?」

「ラズ様、いいですか?」


 ティガさんは指名が無かったのだけど、一緒に行くつもりらしい。それは構わないので、確認を取る。少し考えた後、頷いて、言葉を続けた。


「君とそのルスト? ルナとリュンヌが同じ馬車になるけど、それでいいなら好きにしていいよ。クレイン、君は自分で魔物なり、乗り物を用意してくれる?」

「えっと、私とクロウです?」

「そう。4人用の馬車だから、君たちが乗れないことになる。……スペルや僕と一緒にのる?」

「嫌です。ナーガ君に頼んで、テイマーギルドで借ります」


 緊張しながら馬車は遠慮したい。でも、シマオウいないし、キャロとロットだけでは乗り切れないのも事実。ナーガ君とテイマーギルドに相談しよう。


「それから、出発前に冒険者ギルドには顔を出しておきなね。心配されてるよ」

「わかりました」

「じゃあね」


 ラズ様が要件はすんだから、帰っていったので、ティガさんと二人になったので、ため息を一つこぼす。

 

「いいんですか? 貴族の本拠地ですけど」

「直接見た方が納得ができそうだからね。ただ、ルストへの説明はどうしようか」

「あまり試すようなことして欲しくないんですけど」


 私としては、兄さんの言いつけを守りたいので、話はしたくない。ただ、明日に出発する前に話しておいた方がいいことでもある。


「すまないね。ルストには事情があって出かけるとだけ伝えるよ。どちらにしろ、責任者がいない地で待つのもリスクがあるから、行くと申し出た。きみを試すつもりは無いよ」

「そう、ですか」

「ところで、下の階で、ナーガ達と鉢合わせているようだから、向かった方がいいかもしれないね」

「え?」


 ティガさんが階段へと向かうと、確かにナーガ君やレウスがラズ様と話しているところだった。無事に採取は出来たらしい。ラズ様もナーガに軽く伝えて、すぐに出て行ってしまった。


 とりあえず、ナーガ君に乗り物の相談をしておこう。




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― 新着の感想 ―
いつも読ませていただいていて、お話としてはすごく面白いし好きだし続きが気になってはいるのですが、会話文に疑問符が多すぎて読むのが疲れています。 登場人物ずっと質問してるな、と。笑 「蜂蜜は全然足りてい…
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