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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第四章

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4-20.白の神


 ここは……。


 白い空と黒の床が視界に広がっている。

 前にもここにきたことがあるけど……。


「お腹……刺されたんだっけ?」


 直感が発動していなかった。

 全く、命の危険を感じてなかったところを刺された。


 普段なら、あの時……ううん。その前のギルドに行く段階で、何らかを感じ取れる。死に関しては、〈直感〉を頼りにしていただけに、何が起こったか理解できない。



「私は……死んだ?」


〔いいえ、あなたは生きている〕


「なんで……」


〔直感が発動していなかったこと? 刺されたこと? 私が答えたこと?〕


「全部」


 前にキノコダンジョンで聞いたのと同じ声が聞こえた。それに、私が言葉にする前に相手は考えを読み取れている? それとも、たまたまか……判断はつかない。


 疲れから頭がすっきりせず、体調が悪いと思っていた……。スペル様にしばらく不調が続くと聞いていたけど、まさか、直感まで使えなくなってたのか。 


 ……迂闊だった。

 ずっと直感を判断基準にしていて……使えないことに気付かなかった。


「刺されたのは、あの紫瞳の人のせいかな」


〔あれは黒の使徒。白の使徒であるあなたと対をなす者〕


「兄さんと一緒に考察した通り……天使と悪魔か。お互いに相容れないのか」


〔そう……あなたはわたしの使徒。とても、薄いけれど〕


「まあ、混血だから、薄いというのはわかるけどね」


 でも、おかしいよね? 前は波長があったとか、言っていた。 

 使徒ってことは、波長も何もないと思うのだけど? この神もあまり信用が出来ない。


 このまま、直感を使えない状態で話すの得策じゃない。

 クロウが情報を読み取るときには、SPを使っていた。同じように、意識して使えるように……。


 集中して、直感を使おうとするとわずかにSPを使えた感覚になる。多分、これで直感を使える。



「波長が合わないと会えないくらいには薄いって認識でいいの?」


〔そう……前のとき、たまたま波長が合って、あなたと接触してしまった。……だから、黒はあなたを消すことにした。おそらく、黒の使徒達の体を移動している〕


 ルナさんに憑依していたけど、同じように彼にも憑依していた。ただ、一柱という認識でいいらしい。個々に神が憑いているわけではない。つまり、二人が揃っていても、どちらかしか敵対しない。



 迂闊にも、あの悪魔族の彼がいる場所にのこのこ私が行ってしまった。そこで襲われた。


〔あなたを刺すように仕向けたものはとても濃い。でも、彼にはその意思はない……黒が本当に一瞬だけ、表面に出て……力を使い、操ったはず〕


「どういうこと? もう少し詳しく」


〔今回、あなたたちを召喚したのは黒。黒は世界を滅ぼしたい……あなたは黒が施した記憶処理から逃れた……そのとき、波長が乱れ、繋がってしまった…………黒はあなたに気付いて、邪魔だから消すことにした。だけど、黒も消耗している……〕


 確か、ルナさんはめちゃくちゃ私を殺すように誘導されていたはず。夢に見るとか、そのために預言に手を貸してもらっていたはず。

 それが上手くいかなかったから、他の人の中に隠れ、接触した瞬間に狙った。まあ、戦略としては正しいか。


 彼からはそこまでの殺意は感じなかった。


 だけど、この神の言動も気になる。何度も、私を殺そうとしていると言うってことは……警戒しろってことかな。それとも、私に自分自身を信用させるために何度も口にしているのだろうか。



「ルナさんと彼は違うと言うこと?」


〔それは変わらない。ルナという少女……あなたが祝福によって、黒の干渉を切ろうとした。でも、代償として、あなたも能力が低下した。特に黒に与えられた力が弱まった〕


 与えられた力……ユニークスキルかな。それで使えなかった? 能力低下は、生命力を使ってしまったからだと聞いていたのだけど。いや、まあ、そこらへんは後で考えよう。


「それで弱まっていたところを私が付け込まれた……でも、一瞬だけ乗り移って意識を奪うとかできるの?」


〔……一瞬しか奪えなかった。あの青年自体がすでに力を使い切っていた。黒も表に出るだけの力がわずかしか残っていない〕


 えっと……つまり、今まで悪魔の力使いまくっていたってことでよいのかな。3か月あって、その間で使い切るくらいか……上手く扱えないのか、危険人物か。まあ、消耗しているという情報は助かる。


 だけど……それよりも知りたいことがある。直感でSPを使うのにも限界があるから、聞いておかないと。


「神様が世界を滅ぼしたいって? 自分でやるんじゃなくて、召喚して異邦人にやらせる理由がわからないのだけど」


〔理がある。直接は出来ない……だから、あなた達を召喚する。全てを滅ぼし……黒のための世界にするために〕 


 普通の人は全てを滅ぼそうとしたりしない。

 問題児ばかり選んでるのは、本当に滅ぼしたいのか。割と兄さんの予想的中してる。


「でも、対の存在なら止めればいいと思うんだけど?」


〔できない……前回、それで理を曲げて止めたせいで、わたしの力は黒に劣っている〕


 つまり、黒のやりたい放題。ついでに、前回っていうのが、聖女の体に降臨したことを指しているなら、千年前? それで、同じように器になる可能性がある私は黒にとって邪魔者。命を狙われている。うん、まあ、何度も殺すと言われたから知ってたけどね。


「前回と今回……大規模な召喚以外は、あなた達神は手を出してないの?」


〔……千年以上前、今回のように多くの人を召喚した……それ以外は全て、前回できた狭間から……黒は干渉しているかもしれない〕


 うーん。

 異邦人が危険な能力を持っていることは、貴族は知っている。毎回、力を持っているのは確定しているから、黒から力を与えられているという点では、干渉していると考えた方がいいか。


「狭間はあるんだね? 何故、塞がない?」


〔理のため〕


 理ね。

 ドラゴンからはいい迷惑か。それは、襲いに来ても仕方ないか……いや、でも、別にそういう事情を説明されてないからな。

 

「直接は出来ないからドラゴンにさせてるの?」


〔あれは狭間の前にいるだけ。塞ぐには、白か黒の力をもつ必要がある〕


 それをドラゴンも知っているから、攫うのか?

 いや、でもそれなら悪魔は殺しまわってるという記述がおかしい。いや、そもそも意思疎通してないから、知らないのか?


「狭間、閉じたらどうなるの?」


〔…………わからない〕


 わからない、か。結構、間があったことを考えると言いたくないのか、閉じて欲しくないのか……。

 黒の方は、世界を滅ぼしたい。そして、同じ力がないにしても、白の方も積極的に止めようとはしていない。

 

「狭間を閉ざすよ」


〔あなたでは命がけ……いえ、命を投げ出しても…………でも〕


「でも?」


〔…………あなたは今、瀕死の状態……わたしの力で蘇らせるなら、力が増えるから……できるかもしれない〕


 瀕死か。

 でも……SPもMPも使えないわけじゃない。使い切ってでも、今後のために知りたいことがある。


 だけど、この神の手先になるつもりはない。では、なぜ私を取り込みたい? それを千年前にやって、狭間を作ったのに? それで力が弱ったと言ったのに? やっぱり、何か目的があって接触してるっぽいんだよね。


「この前と違って、私以外の白の眷属は死んだとか? 薄くて、使い物にならないと思っていた私を取り込まないと他にいなくなった?」


〔…………なぜ〕


 あたりか。

 聖教国が召喚から1か月経った頃から、異邦人を集めようとしてることは聞いていた。


 最初に接触した頃と違って、白の血を持つ者がいなくなったかな。逆に、なんとなくだけど……黒、悪魔はこの国に二人いるのか。


「断るよ。私があなたを受け入れれば、今よりもドラゴンに狙われるから」


〔そう……このまま目を覚まさない可能性もあっても?〕


 う~ん。可能性ね。

 でも、平気な気がするんだよね…………死ななかったし、これ以上は無さそう。


〔わたしの力はいらないと?〕


「……致命傷は治した。大丈夫、あのまま放置されない限り、ちゃんと治療受けて……そのうち目を覚ませる。起きたら……神が干渉しようとする狭間、封じてあげるよ」


〔……あなたにはできない〕


 私には出来ないけど……。別に、黒の力であってもいいなら……ルナさん。それに、あの青年。他にも、悪魔族はいるという話は聞いている。


「私じゃなきゃいけない理由はない」


〔なら、なぜ封じようとする〕


「世界にとって迷惑で、放置すると私の命が危ういから」


 私があの世界で生き続ける。薬師として、普通に過ごしていくためには……ドラゴンに襲われては困る。聖教国にドラゴンが来るのは確定ってスペル様が言っていた。


 だけど聖教国には天使族がすでにいないという疑惑が出てきた。次、襲われるのって……私がいる場所。その可能性は高い。悪魔族も集まってるのだから、普通に来る。なら、その前にこちらから下手に出て、殺さないでくれるように交渉する。


 たぶん、ドラゴンは知性がある。それなら、狭間を封じる代わりに見逃して欲しいと頼むのは悪いことじゃない。


〔わたしの力はいらないと……〕


「私は、貴方の種族を選んだとはいえ、薄い程度しか欲してない。ちょっと成長率良ければ嬉しいくらいだから。そして、この世界で生きていくことを選ぶ」


〔……そう……〕


 黒と白、どちらでも良いのであれば……協力を頼めばいい。いや、まあ……危険はあるのかもしれないけど。

 むしろ、力を貰った方が絶対危ない気がする。とはいえ、そろそろSP限界かな。直感を使うのもきつくなってきた。


〔……それ以上、その力を使えば……回復することなく、死にますよ……〕


「私がSP使って直感を発動していることに気付いてたんだ? ……私は向こうに戻らないといけない。死なないよ」


 泣きそうなナーガ君をそのままにするわけにはいかない。これ以上、傷つけるわけにはいかない。

 レウスもアルス君もショックを受けてそうだし、ティガさんも……多分、心配してくれてるだろう。クロウは怒りそう……迂闊だとか、色々と。


 兄さんは……こっちに帰ってくる前に私が起きて、みんなに口止めをしておきたいな。バレたら怒られそう。


〔……これ以上の干渉はやめましょう…………あなたは薄いつながりしか求めないようですから〕


「……情報はありがとう。感謝するよ」


 だけど、何か私を利用としているのか……そもそも、千年前に、時空の狭間を作ったのが白側なのだから、私が助けてもらえば、さらなる狭間を増やす可能性すらある。



〔面白いですね……同じではない、それぞれに…………寝なさい、人の子……次はありません……〕


 真っ白な世界が黒く変わり、ふっと意識が途絶えた。




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