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異世界に行ったので手に職を持って生き延びます【WEB版】  作者: 白露 鶺鴒
第三章

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3-28 .スタンピード1日目 大漁


 翌朝。

 日が昇り始めた頃から、川下から魚の大群が確認できた。

 

 ラズ様から「塊に向かって撃ちまくればいい」と聞いていたが、その意味がわかった。群れで移動するらしく、塊が川のところどころに黒い影……魚の群れがあるのが確認できた。


「下流からこっちに向かってきているのも見えるな。かなりの量だ」

「そうだね~。ここの網の方は後にして、まずは段差の下にいるのを倒しに行くよ~」


 兄さんがその視力で確認したところ、この群れは下流からも見えるらしい。一塊にどれくらいいるかはわからないけど、10や20では無さそう。


 そして、網を仕掛けた場所よりも上流。川に2メートルくらいの段差を人工的に作った場所……一時的に作られたらしい、板を置いて人が数人なら歩ける簡易の橋に向かうと……一面、魚がぎっしりと詰まっていた。

 飛び跳ねて超えようにも、助走もつけられないくらいにひしめき合っている。


「すごっ、こんなにどこにいたの!?」


 レウスの疑問はもっともだと思う。

 暗い時には影も形も無かったのに……日の出と共に、こんな数になるとは思わなかったよね。


「ここら辺は結構深いんだよね。活動開始すると水面に上がってくるだけで、夜もずっと川底にはいたんじゃないかな~」

「うむ。だが、向こう岸の方にはそこまでいないようだから、まだピークにはなっていないから心配はない」


 双子は驚いていないが、こんなものという認識らしい。

 沢山いるけど進化前は脅威はないので、一匹一匹を数えたりもしないらしい。


「そういうもんなの?」

「まだこの段差を超えられないレベルだが、3日目あたりからは飛び跳ねて超えてくるようになる。そこら辺からが逃がさないための厳しい戦いになるぞ」


 レウスの質問にシュトルツ様が答えているけど……厳しい戦いになるなら、人数を増やさない理由がわからない。


「君のため、かな。あまり公にしたくないんじゃない?」

「戦闘を見せたくないってことです?」

「たぶんね~ラズに聞いてみなよ」


 スペル様はラズ様に聞けと言うけど、いないんだよな。でも、私のため……う~ん? 違うかな。

 今回は私の実力が試されている訳ではなくて、ここで私を使うしかなかったから、せめて他にバレない様にしたとか? 


 とりあえず、説明を聞いて1日目と2日目が大事というのだけはわかった。

 進化するのは5日目辺りと聞いていたが、そもそも身体能力がちょっとずつ上がっていくらしい。飛び跳ねて超えられないうちに倒すと……3日目辺りからすごい大変なのでは?



「……じゃあ、魔法撃っていきます」

「よろしく~」

「雷の檻〈サンダープリズン〉」


 魔力を込めて、魔法を発動させる。雷が広範囲に檻を作って、檻の中にいる対象に何度か雷を浴びせる……。

 発動すると上から、雷が落ち、それが20m四方くらいの大きな檻のような形になる。さらに30秒ごとに電撃が流れている……檻と言っても、出入り自由なのか、倒された魚が川の流れで去っていき、新しい魚が檻に入っては電撃を浴びている。


「いいね~MPは余裕あるのかな?」

「……はい。…………このまま、向こう岸まで何度か撃って、数減らしてきます。兄さん、一応……」

「ああ。ちょっと行ってくるな」


 兄さんを連れて橋を移動しながら、50m間隔で魔法を撃って、数を減らしていく。

 ユニコキュプリーノスは、一撃で倒されていく……だいたい5,6回くらい追撃が行われてて、そのたび一撃死……弱い。

 確かに、雷魔法を撃てば倒せるので、お手軽なのかもしれない。たしか、他属性では倒せないんだっけ?


 ……でも、ちょっと問題がある。



「兄さん、レベル上がった?」

「ああ。何もしてなくても、パーティー内なら経験値入るからな」

「だよね……。直接倒してる私には、より経験値が入る訳だけど、すでに2上がったんだけど」

「俺は1つだな」


 レベルアップのペースがかなり早い……クロウ達をレベル30まで上げるために頑張っていたわけだが、私のレベルは上がってはいなかった。

 でも、ここで二つ上がったことで、レベル40に達した。しかも、このままだとまだまだ上がっていく……何故なら、目の前にはぴちぴちと跳ねているお魚が沢山……。


 ただ、兄さんはこの上がり方に疑問は持っていないらしい。


「知ってたの?」

「可能性はあるなと考えていた。ラズも、あいつらも貴族で冒険者として活動は少ないのに高レベルだろ。それに、他の冒険者達を連れてきていない。あまり一般の冒険者に広めたくないんだろう。前回もラズと俺らの親父、レオのおっさんで参加している。他のパーティーメンバーを連れてないのは不自然だったからな。この場で狩る人数を制限しているだろ」

「貴族の狩場ってこと?」

「美味しい稼ぎ場であると同時に、危険性もあるんだろう。鱗が硬くて物理は厳しい、風と雷魔法以外は耐性を持っている。泳いでるだけでもあっちも強化されていくなら、倒せないでもたついていると、進化も早まる。そして、進化すれば……水竜になる。将来性を考えれば、経験値が高いのも納得だ」


 なるほど?


 兄さんが言う通り、弱点を突いてるから討伐が楽というのはある。

 でもさ……対岸まで、魔法をちまちまと撃ってきたけど、また一つ上がったんだけど。兄さんも上がっているということは、レベルが低いアルス君を筆頭にみんな上がってるよね? アビリティが強さに直結するのを考えると、レベルだけ上げさせることが目的である可能性もあるけれど……。


「経験値が美味しすぎるだけに、なにか裏がありそうで怖い」

「まあ、あるんだろうな。これで何もない方があり得ん」


 ダムを登ろうとしていたユニコキュプリーノスは粗方倒せた。撃ち漏らしについては、しばらくすると塊を作る習性があるので、塊が出来たら魔法を撃ち込んでいくことになる。


「おかえり~だいたい倒せた~?」

「そう、ですね。大体は倒せて川下の網にかかっていると思います……多少は残ってる分について、様子を見ながら魔法撃ち込みます」

「そうか。では、網の方に戻り、一部を開放して魔物を呼び込むか」


 双子兄の方がのんびりとした口調で出迎えてくれた。そして、大体倒し終えたことを報告すると双子弟に網の方に戻ることを提案された。


 手慣れている。彼らとは別パーティーだけど、合同で依頼を受けている。経験値は共有していない……。ただ、そこは気にしていないように見える。十分すぎる程強いので、今更いらないのかもしれないけど。



 移動をする中で、クロウに声をかける。


「クロウ。しばらく対応任せていい?」

「どうかしたのか?」

「MPをだいぶ消費したから、お願い出来ると助かる」

「俺は雷〈サンダー〉しか使えないがいいのかい?」

「ん? あ、もしかしてレベル上がって、雷魔法覚えた?」

「ああ、一応だがなぁ……どうする、槍は他の奴に使ってもらうか?」


 なるほど、昨晩の練習と先ほどまでの怒涛の経験値で自前で雷魔法を撃てるようになったらしい。

 ただ、使えるのは雷〈サンダー〉一つだけのようだ。威力が低いから、溜めて攻撃力を増やす必要があるかもしれないと伝えておく。


 槍については……とりあえず、手が足りなくなった時に誰かに頼むかもしれないけど、初日の段階では不要かな。


「……今日は様子見で、二人で行こう。さっきは範囲が必要だったから使っただけで、これからは私も雷〈サンダー〉で行くよ。MP消費激しいから。MPポーションは揃えてあるし、ポーション中毒は私が魔法で治すからね」

「……まあ、そうならんように頑張るかねぇ」


 網の一部だけ、魔物の死体をどけて、魚が通れるようにして、誘き出したところをクロウが雷魔法を撃って倒していく。


 その日、日が沈むまで続けた結果、パーティー全員のレベルが40を超えた。

 おそらく、ステータスはB~Cランク冒険者並みのステータスになっていると思われる。


「お疲れ様~うんうん、みんな強くなってるね~」


 双子兄の方が楽しそうに見ている。レベルが上がったことはわかっているらしい。「良いことだよ~」と褒めているが、弟が困った顔をしているので、何かあるのかもしれない。


「そうですね。元々のレベルが低かったのもあると思いますが、結構上がってますね。これが普通です?」

「いや……そうだな。ユニコキュプリーノスはレベル50くらいまでは通常の魔物よりも多く経験値が入る。お前達はレベルは低かったようだから、育つのは普通ではある。だが……この後、回収してみないと分からないが、数が予想の倍いるかもしれん」

「多いとマズイのか?」

「いや。だが、まずは確認してからだ」


 全員で川から死体を回収したが、3,650体。

 このうち、2体ほど黒銀色で角が2本あるバイコキュプリーノスがいた。



「う~ん。まずいね~」

「そうだな。急ぎ、ラズに連絡を取った方が良い」

「ふむ。ラズとの話では、二日目までに半数狩れないなら連絡という話だったが……数は狩れてるよな?」


 双子が難しい顔をしている。兄さんが予定通り狩れているのではという問いにもゆっくりと首を横に振り、重々しく答える。


「5,000体に一体と言われるバイコキュプリーノスが、すでに二体。今回の討伐対象が10,000を超える可能性が高い」


 偶然であろうとすでに二体いる時点で10,000体はいるだろうと予測がつく。そして、初日で二体なら……あと2、3体はいても可怪しくないという予想。


 最優先で狩らなくてはいけない個体だと認識すると、背中がぞくぞくっとしてくる。まだいる……? そんな予感がする。


「倒しやすさを優先していたけど、後ろが行列になっているなら、考えないといけないよね~。もっとペース上げていかないとだよ」

「でもさ、倒すのは簡単だったじゃん? 何とかなるんじゃない?」

「日を追うごとに相手も強くなるのを考えると、今日と同じようにはいかないだろう。倒すペースを上げるのは難しい」


 レウスの楽観的な言葉にも双子弟は難しい顔をしている。


 確かに……倒すエリアに入ってこれる数が絞られていた。ただ、私とクロウが交代で魔法を撃っていたので、二手に分かれて対岸でも同じようにすることは可能かもしれない。


 後は……雷魔法を付与している槍とか、雷を魔石に込めるとかを使う? 攻撃手段を整えても、川の中に入るのが危険。

 

 他の方法としては……川でないとこにおびき寄せるくらい、かな?

 両岸に私とクロウを配置した上で、もう一か所、川からため池にでも誘導して倒すなら……今日の2倍以上のペースにはなるかな。

 それでも足りないなら……雷の槍の出番かな。


 ただ、あれを使うなら、川みたいに距離があると難しいかな。


「兄さん。用水路のせき止め板とか、作れる?」

「まてまて。そもそも、それが何だか、俺にはわからないんだが?」

「こう……田んぼに水引かない時には塞き止めるような、板? ため池みたいな場所を今から作って、そこから水が流れるようにして……倒す間は川から来ない様にするために塞ぐ板?」

「その板を水圧で壊れない様にするなら、鉄板とかでないと難しいのではないか?」


 話を聞いていたシュトルツさんにも難しいと言われたけれど……そうなると、どうしよう。

 一時的に川と用水路を閉じれば、板に拘る必要はないのだけど……でも、確かに水圧とかそういう計算は出来ない。

 土魔法でせき止めてしまってもいいのだけど……。



「君がやりたいことはわかった。板については、考えておく。君はため池の準備を頼む。狩場を増やすのは賛成だ」

「いいの?」

「そっちの二人、許可貰えるか?」

「ん~いいんじゃない~?」

「兄君! 説明も聞かずに許可を出さないでくれ!」


 兄さんにあっさりと許可を出してくれたので、ため池を作ろう。夜の間に用意しないとだから、急ごう。


「……手伝う」

「あ、俺も俺も!」


 うん。ナーガ君たちが手伝おうとしてくれるのは有難いけど、魔法で作るからね?力仕事にはならないので、兄さん達を手伝いつつ、ユニコキュプリーノスの処理をお願いしておく。

 討伐確認部位として、〈魔魚の背びれ〉。他に魔力を帯びる〈魔魚の角〉と、悪くなりやすいが、調合・錬金どちらの素材にもなる〈魔魚の肝〉と〈魔魚の鱗〉。

 3,000体あるので大変だろうけど、解体をお願いしたい。


「……22時までだからな」

「え?」


 私の方は大丈夫と追い返したのだけど……ナーガ君から、まさかの深夜労働禁止宣言。

 いや、家の中ならともかく、外での討伐まで深夜禁止はひどくないかな? 夜営とかあるんだから、見逃して欲しい。

 ナーガ君がプイっと背中を向けてしまった……よし、出来る限りは急ごう。


 後は、兄さんに頼んで、深夜残業の許可を……多分、何とかなるだろう。




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― 新着の感想 ―
スタンピードの辺りから描写がよくわからなくなって混乱している。そもそもなんで「初日」ってわかるんでしょう???主人公側が人数を減らそうとしたのかもよくわからない、異邦人が単独行動したら危険だとわかって…
[良い点] 魔力使いまくり野営だし家よりは疲れがとれない、双子とか気をつけないといけない仲間じゃない人もいる、ですからねー ナーガが22時には寝るようにって心配するのもわかります。 大事な家族ですねえ…
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