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校舎裏で陰キャとスライム

 ぷるんくんは転んだが、無事だった。


 俺は心配になり鑑定でぷるんくんのステータスを確認してみる。


ーーーー


名前:ぷるんくん

レベル:777

年齢:6歳

HP:300,000/300,000

MP:700,000/700,000


ーーーー


 うん。HPが1も減らなかった。


 まあ、当然だろう。


 SSランクのモンスターを一発でやっつける強さを持っているんだ。


 叩きつけられた程度ではびくともしないのは至極当然のことだろう。


 ぷるんくんは俺の顔を一瞥したのち、葛西を睨んできた。


「ほお、スライムは叩きつける普通死ぬんだけどな。なかなかしぶといやつだな。親も金も力もないのにまだこの学校に通っているお前の主と一脈通ずるところがある」


 ぷるんくんを見下ろしながら言うと、葛西グループが俺とぷるんくんを嘲笑ってくる。


 ちくしょ……


 確かにお前は親が金持ちで俺なんかよりもっと強い。

 

 でも、

 

 そんなに偉いのかよ……


 どんなに偉いのか俺の鑑定で確かめてやる!


 そう思って葛西に鑑定をかけてみた。


ーーーー


名前:葛西翔太

レベル:30

年齢:17歳

HP:600/600

MP:500/500

属性:雷

スキル:サンダーボルト(最弱)、サンダーパンチ(最弱)


ーーーー


「あ……なんだ葛西……弱すぎるだろ。俺、こんなのにずっといじめられたか」

「おい、臼倉、今何つった?」

 

 この前倒したレッドドラゴンのレベルは246。


 対して葛西は30。


 確かに俺よりは強いが、ぷるんくんとは比べるまでもない。


 俺は床にいるぷるんくんを拾い、葛西を指した。


「葛西はぷるんくんの足元にも及ばない。だから早くぷるんくんに謝れ」

「はあ?足元にも及ばないんだと?ってことは、このクソスライムをテイムしたお前が、俺よりもっと強いってこと?はあ!!?最底辺の人生を歩んでいる敗北者があああ!!俺は雷属性を持っているんだ!!サンダーパンチ!!」


 葛西はいよいよキレて、俺に攻撃を仕掛けてきた。


 や、やばい。


 葛西のサンダーパンチは数え切れないほど味わってきたが、あれはやばいやつだ。


 俺は目を瞑った。


「はああああああ!!!」


 葛西のやけに金髪陽キャっぽい気合の入った声を出しながら俺を打とうとする。


 だが、


 いくら待っても、痛みを感じることはなかった。


 なので俺は恐る恐る目を開けてみると、


 目の前で葛西と友達二人が驚いたように目を丸くしていた。

 

 確かに俺のみそおちには葛西の電気を纏った拳が当たっているが、膜みたいなものによって俺の体が守られていた。

 

「ま、まさか……」


 俺は早速この膜を鑑定することにした。


ーーーー


防御膜(最上)

説明:攻撃を防ぐ効果がある。性能はレベルの高さに比例して増加し、自分の属性と同じ属性スキルの攻撃なら他の属性スキルよる攻撃を受けるより1000倍ほどよく防いでくれる。無属性最上位スキル。


ーーーー


 ぷるんくんは全属性を持っている。


 つまり、


 ぷるんくんが張ってくれたこの防御膜は圧倒的性能を誇るというわけだ。


 俺は、自分の胸にくっついているぷるんくんをみてみた。


 すると、


「ぷるん……」

 

 ぷるんくんは殺気を漂わせていた。


 ぷるんくんが叩きつけられた時は葛西の連中を睨んだだけだが、俺が攻撃されると、

 

 ぷるんくんはこれまでみたことのない怖い表情に変わっていた。


 ぷるんくんは手を生えさせる。


 するとレッドドラゴンの尻尾を切った時のように手が光り輝いだ。


 超音波カッティング。


 それで葛西をやっつける魂胆だろう。


 俺の予想は的中したらしく、ぷるんくんは飛んで、葛西の左の胸に手を伸ばす。


 これは……


 違う!!


「ぷるんくん!だめだ!葛西を殺しちゃだめ!」

「ぷるん……」


 俺の言葉を聞いたぷるんくんは頷いたのち、超音波カッティングを止めた。


 光を失うぷるんくんの手。


 その手は葛西の左胸に当たる。


 ぷるんくんの手は


 次第に黒に変わってゆく。


「な、なんだこのクソスライム……」


 ぷるんくんの手から発せられる黒い影。


 その影は葛西の体の中に入った。

 

 訳の分からんスキルを使ったぷるんくんは俺の頭の上に乗ってきた。


 一体どんなスキルを使ったんだろう。


 と、疑問に思っていると


 葛西が眉間に皺を寄せて口を開く。


「何してんだ。これはクソスライム含めて二人とも俺の雷スキルで徹底的に仕込んでやるしかない……え?な、なんだ……スキルが使えない?」


「「「っ!?」」」


 葛西は手を振りながらスキルを使おうとするが、電気は生じない。葛西の友達二人も他のクラスメイトも当惑しているようだ。


「お、俺の体に何をしたんだ!!臼倉!!」


 葛西が目を大きく開けて問い詰めてくる。


 俺も一体ぷるんくんがやつにどんな魔法をかけたか気になるので鑑定スキルを使ってみた。


ーーーー


スキル封印(最上)

説明:対象者に呪いをかけてスキルが使えないようにする。最上であるため、対象者が遠く離れても呪いは有効である。闇属性の最上位スキル


権限移転:ぷるんくんは、主であるあなたにスキル封印を解錠できる権限を与えました。対象者を指差して「封印解除」と唱えると、対象者の呪いは解かれます。


ーーーー


 つまり、ぷるんくんは葛西が雷属性の攻撃ができないようにするためにスキル封印という呪いをかけたのか。


 しかも、ぷるんくんは解除できる権限を俺に委ねた。


 俺は戸惑う葛西に冷静な表情で言う。


「葛西は呪いにかかったから雷属性のスキルが使えない。今まで俺をいじめたことと、ぷるんくんを叩きつけたことを謝って、もう二度と俺をいじめないと誓ったら呪いを解除してやってもいいよ」


 正直、俺はちょっとビビっている。


 だけど、目の前で俺の大切なぷるんくんが侮辱されたことを考えると、熱い気持ちが湧いているように思えてきた。

 

 だが、


 やつは


「俺がそんなことするわけねーだろ!!パシリ風情がああああ!!今すぐ呪いを解除しないと、お前を一生いじめ抜いてパシり抜いてやる!!!今までと比べ物にならないほどこきつかって死んだ方がマシだと思わせてやるから!!」


 俺に恐怖を与えようとしていた。

 

 怖い……


 足が震えてきた。


 普段の俺なら絶対言えないようなことを散々こいつに言ったからな。


 いつもの俺なら、奴が怖くて目も合わせようとしなかったはずだが、今日は結構無理をしたようだ。


 心臓がバクバクする。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか 


 俺の頭の上に乗っかっているぷるんくんはまた何かを企んでいるらしい。


 ぷるんくんがぷるんと体を一回揺らすと体が紫色に光り始めた。

 

 すると、


「あ……」

「ん……」

「おっ……」


 葛西グループが急に倒れた。


 そして、身震いしながら泡を吹いている。


「きゃあ!!な、なんだこれは!!」

「葛西くんたちが倒れた!?」

「一体何が起きているんだ!?」

「保健先生呼んでくる!」


 クラスの連中は慌てふためいている。


 そんな奴らをみて秋月さんは悔しそうに呟いた。


「臼倉くんの時はみんな知らないふりしたくせに……」


 聞き取れなかったが、秋月さんはクラスの人々を睨んでいるように見えた。


 それはそうとして、ぷるんくん一体どういうスキルを使ったんだろう


 俺は気になり、また鑑定スキルを使ってみた。


ーーーー


死神の恐怖(100%のうち0.001%使用)

説明:上位SSランクの死神が使える恐怖スキル。死神の恐怖にかかったものは死の恐怖を感じることにより、パニック発作を引き起こす。闇属性の最上位スキル。


ーーーー


 す、すごい……死神のスキルも使えるのか……


 ていうか、威力は0.001%だけなのに泡を吹くのかよ……

 

 もし100%を使ったらと思うとゾッとする。

 

 てか、今はそんなことを考えるべきじゃない。

 

 とにかく、この場から離れた方が良かろう。


 なので、俺はカバンとぷるんくんを抱き抱えて全力でクラスを出た。


「あ、臼倉くんちょっと!待て!!」


 後ろから秋月さんの声が聞こえたような気がするが、俺は振り向くことなく走って人が来ない穴場である校舎裏にやってっきた。


「はあ……はあ……これは……本当に……やばいかも……」


 と、息切れしていると、ぷるんくんが俺の腕から降りてきた。


 そして俺の足を優しく突いて申し訳なさそうに俺を上目遣いしてきた。


「ぷるん……」

 

 気のせいかもしれないが、「暴れてごめんなさい」と言っている気がしてきた。


 俺はそんなぷるんくんを見て、


「ぷふっ!あはははははは!!」


 笑った。


「ぷ、ぷるん!?」

 

 突然笑い始める俺がおかしいのか、ぷるんくんはかわいく小首を傾げる。


 なので、俺はぷるんくんを両手で抑え、高く持ち上げた。


「ぷるんくん!俺を守ってくれてありがとう!よくやったよ」

「ぷるん……ぷるん!!」


 ぷるんくんは目を潤ませて、俺の顔に飛び込んできた。


「ぷ、ぷりゅんくん……息ができない……」


 自分の顔を俺の顔に擦りまくるぷるんくんを両手で辛うじて引っぺがし、地面にそっと置いて、俺は体育座り。


 校舎裏で陰キャとスライム。


 一見シュールだが、悪くない組み合わせだと思う。


「学校、やめちゃおっかな」

「ん?」

「なんか全部いやになった。ぷるんくんと秋月さん以外はな」

「ぷうう……」


 ぷるんくんは俺の方に体をくっつけて俺を慰めてくれた。


 そんなかわいいぷるんくんをしばしなでなでしたのち、俺は立ち上がった。


「んじゃ、退学届出しに行くか。この学校を辞めたら、俺は中卒……名門華月高校生から中卒底辺Fランク探索者に成り下がるのか……」


 俺は皮肉めいた笑みを浮かべて立ち上がる。


 でも、ぷるんくんとなら大丈夫な気がしてきた。


 その時、


「臼倉くん!!!!!!」


 俺のいる校舎裏に向かって走ってくる美少女が目に入った。

 

 その子はこの学校におけるマドンナ的存在で、正義感が強く、いつも俺を助けてくれる女の子だ。


 俺と住む次元が全く違う存在。


 秋月グループの社長令嬢。


 秋月花凛。


「秋月さん!?」

「ぷるん?」





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