中学生
◇中学生
週明けの放課後。ファストフード店で里見中の制服を来た女子生徒がテーブル席で話していた。
「ああもう、だるい。いじめは良くありませんとか何度も言うなっつーの。別に関係ないし」
本郷友麻はムカつきながらコーラをストローで音を立てて飲んだ。
「本当、授業が始まる度に言われてうんざり。そんなの隣のクラスで言えばいいのに。あいつらが悪いんだからさ」
友麻の友達の榎並玲美がスマホの画面を見ながら気だるい口調で答えた。
二人の隣のクラスでいじめの自殺が起きてから学校ではいじめ対策に追われていた。
「アンケートに書かせるよりチクリ箱でも置いて情報集めた方が良くない?」
友麻はそう言うとポテトを口に入れた。
「それよりメールでチクるのが楽だよ。誰にも気づかれないし」
麗奈はスマホを触りながら答えた。
「そうよね」
友麻もだるく言いながらスマホの画面を見た。
「みてみて、この子可愛いよね」
玲美がスマホの画面を友麻に見せた。
若い男が歌っている動画だった。
友麻は「そんなのが好きなの?」と軽く鼻で笑った。
「悪い?」玲美は不満そうな表情になった。
「悪かったよ。ほら」
友麻はスマホの画面を見せた。
同じ男が踊っている動画が流れていた。
「何だ、友麻も好きなの」
「顔だけ。こいつ喋るとガキっぽくていまいちなんだよね」
二人でスマホをいじりながら雑談した。
「それでさ、変な記者にしつこく訊かれて凄くうざかった」
玲美は顔をしかめた。
「ああ、私もそう。髭を生やしたキモいオッサンが色々訊いて最後はコーヒーおごるから店で話さないかって言われてすぐ断って走って逃げた」
友麻はハンバーガーをかじって言った。
「うわっ、そんな奴いるの?」
玲美が笑いながら答えた。
「そうだよ。誰がてめえなんかと一緒に行くかよってムカついたわ。ガキなら食い物で簡単に釣れると思っているんだろうな。馬鹿にして大っ嫌い!」
友麻はハンバーガーをガツガツ頬張った。
「友麻はそういう男っぽいところがなかったら可愛いのにね」
「何だよ。別に今は彼氏なんか欲しくないし面倒くさいだけだしな」
「デートとかキスしたいとか思わないの?」
玲美の質問にコーラを飲んでいた友麻が咳き込んだ。
「キス? 早くしたからって何って感じ。セックスはガキ相手だと面倒くさいしオッサンと寝るなんて絶対無理。大学に行ってからでいいかなあ。同じサークルの奴とかとさ」
「あんた色々すごいわ」
玲美は呆れた表情で言った。
「うちの兄貴が家にいた時はずっとパンツ一丁でその辺を歩き回ったり部屋で声上げてオナニーしていたからね。男なんてって割り切っているからかな。お父さんも毛深い胸毛を見せてテレビを見ながら寝転がっているしもう動物園にいる気分」
「ハハハ、ちょっとそこまで言わなくても」
玲美は大声で笑って急に思い出した表情になった。
「あっそう言えばさあ、1年にいじめられて学校に来なくなった子がいるって知ってる?」
「な、何よ。急に」
玲美の話の切り替えについていけずに友麻は戸惑った。
「その子の親が昔同じクラスの奴をいじめて転校させたんだって」
「ああ、それはいじめられるわ。よっぽど親が馬鹿だったんだね。可哀想だけど仕方ないわ」
友麻がポテトをつまんで答えた。
「何だかさあ、うちの学校って面倒くさいよね」
「ド田舎の学校だからな。早く兄貴みたいに東京の大学に行きたいな」
玲美と友麻は談笑しながら店で過ごした。