第1話 明智深夜と朝比奈玲
久しぶりの投稿なので、拙い文章かもしれませんが、その点につきましてはご容赦のほどよろしくお願いします。
「朝比奈さん相変わらず凄い人気だなぁ……」
「あはは……そうだね」
僕こと明智深夜の隣で、親友である佐藤徹が教室の一室で発生しているあまりの人ごみを前にそう口を溢した。
ただ彼がそう言いたくなるもの仕方がないことで、何せ今教室の一角には一人の少女を中心にドーナッツ状の円が人によって構成されている。
少女の名は、朝比奈玲。
腰まで伸ばした漆黒の髪に、切れ長の眼に赤い瞳。
すらりと伸びた手足に純白の美しい肌、端正な顔立ちをしたまごうことなき美少女である。
大変社交的で、誰に対しても分け隔てなく、優しい性格をしており、困った人を見ると見捨てることのできないお人好し。
それでいて勉強も運動もできるときたものだから、彼女が学校の人気者になることは至極当然なわけで、今繰り広げられているこの光景は、そんな彼女に近づきたいクラスメイト達が必死に彼女にアピールしている姿なのである。
「あ、朝比奈さんこの後俺デートに……」
「ちょっと‼ 何言ってるの‼ 朝比奈さんは私とスイーツバイキングに行くの‼」
「ふざけんな‼ 妄想はお前の頭の中だけにしろ‼」
「なんですって‼」
本当集まるのは勝手だけど、喧嘩だけは勘弁して欲しい物だ。
お前達が振り向いて欲しい当の本人は、あんなに困り顔をしているというのに、それに気が付かないとは全くもって滑稽である。
「深夜はいかなくていいのか?」
「僕が? なんで?」
「なんでって……お前な」
徹は僕の態度に呆れたのか、大きくため息をつくとやれやれと首を振っている。
「お前と朝比奈さんは幼馴染なんだろう?」
「……」
確かに僕と朝比奈玲は幼馴染である。家も隣同士で、僕たちは幼稚園の時からずっと一緒に育った。仲も悪くはない。
むしろ世間一般的な幼馴染達よりは、遥かに仲の良い自負はあるし、僕はそんな彼女の事をずっと思い続けている。我ながらもう少し現実をみろと言いたくもなるのだが、好きになってしまったのだから仕方がない。
さてそんな大事な幼馴染様だが今現在とても困った様子をしている。ここは幼馴染として、なにより思い人である彼女が困っているのだから助けに行くし、なんなら普段の僕ならそんな彼女の姿をみたら一目散に助けに行くだろう。でも今日の僕は、いくら彼女が困っていようと助けに行く気力がなかった。
「深夜?」
僕の普段と違う様子に、徹は心配そうな顔をしてこちらを見る。
「……悪い。今日はちょっと体調が悪いんだ。だから僕の代わりに玲を助けに行ってくれないか?」
「そ、そうだったのか。おし。わかった。俺に任せとけ」
徹はそう言うとあの集団の中に飛び込んでいった。全くもって勇敢な男である。
そんな男に僕は嘘をついたのだと思うと、少し罪悪感に苛まれる。
(でも言えるわけないよな。玲が僕とセフレになりたいと告白されたなんて……)
チラッと玲を見ると玲は、先ほどの困った表情とは一転して、こちらの事をジッと見つめていた。
その口元からはどこか笑みが零れていて、まるで僕の考えを見透かしているようで、少し怖かった。
(本当……どうしてこうなってしまったんだろう)
深夜と玲の関係が変わってしまったのは、つい昨夜の出来事であった。