タイプ7は書かないの?
土日が明け、ダルさを感じる平日始めはいつも眠そうな川谷だったがやはり今日も早朝の教室にやってきていた。
「今日はタイプ7だっけ?」
半分目が開いていない川谷が問いかけると青山が頷く
「そうだが、その前に一ついいか?」
「何?」
「性格論ならこれ聞くべきと思ったんだ。 『性格は変化するのか』をな」
青山の問いに対して川谷は眉をしかめる。
「それね、それはあれだよ。 分裂と統合をどう考えるかだよ」
「そうか分裂と統合するもんな。 タイプ自体は変わんないって事でいいのか?」
「うん、タイプ自体は変わんないよ」
青山がそれで納得した様子なので川谷は『タイプ7について』と書き込み説明を始めた。
「タイプ7は自分が天才的な能力を発揮するための方法や自分は何の為に生まれて来たかを考えるタイプだよ」
「それ、そんなに重要か?」
青山が呆れたように両手をひらひらさせると川谷は重々しく頷く。
「重要だよ。 だって例えば野球の天才だったとしても野球がマイナーな国生まれだったら才能を充分に発揮できない可能性が高いとか、そういう事が起こるから」
「その例えなら野球の才能を他のスポーツに応用するとか出来るんじゃないか」
青山の問いに川谷は眉を寄せて続けた。
「確かにそうだけど、そもそも本人が自分の適正把握しているわけじゃないから」
「試せばよくね?」
「うん、試せばいい、納得がいくまで探し続ければいい。 実際タイプ7の人って百歳超えても探し続けている事もあるしね」
「それダメだろ」
川谷は突っ込んだ青山に対し目を背けるようにノートに目を落として『タイプ7=試行錯誤による仮初めの満足感』と書き込む。
「まぁ、探し物がいつまでたっても見つからないから、いつまでも不安を抱えているっていうのがタイプ7のアレではあるかな」
「アレってなんだよ」
「アレはアレだよ、試行錯誤自体を、つまり新しいチャレンジに対してワクワクする事で不安から目を逸らそうっていうのがタイプ7の特徴っていうアレだよ」
「納得はできるけど、アレは何に対する答えではないよな」
青山が言うのを無視しつつ川谷は続ける。
「だからタイプ7に悩み相談とかすると露骨に話題逸らしされて失望しましたってなりがちだよね」
「ん? 何でそうなる?」
「だって不安から目を逸らさないと『自分は何の為に存在するんだ』って凹むのがタイプ7なのにだよ、他人の悩み事なんて聞かされたら精神崩壊しちゃうよ」
「精神崩壊するんか」
「ごめん、それはいい過ぎた」
川谷は軽く謝ると次へ進む事にしたようで『タイプ7→ストレス→タイプ1』と書き込む。
「タイプ7の分裂はタイプ1、自分が何をすべきなのかいつもわかっている感じだから」
「確かタイプ1は衝動的に動くのが苦手だから仕方なく行動基準を明確にしてるんじゃなかったか?」
「そこをタイプ7は羨ましく思うんだよ」
しみじみと言った川谷にため息をついた青山。
「それが分裂なのはそろそろわかってきたけど、やりきれんと言うか何というか」
「そうだね。 それで分裂したタイプ7は物事を放り出す事をやめ、一つ一つ着実に進んでいこうとするんだけど試行錯誤をやめる事での弊害が現れてくるよ」
「なんだ? 聞くの怖いな」
「他者の批判だね。 他人の至らない点に目を向ける事で自分自身に対する不安から目を背けるよ」
「あぁ、気を紛らわしてるのか」
「そうだね、普通は新しいチャレンジにワクワクしているタイプ7だけど、それをやめちゃうから何か別の方法を必要とするんだ」
「なるほど」
青山は頷くが、川谷は『タイプ7→成長→タイプ5』と書き込んでいた為、気付いた様子はない。
「タイプ5は様々な情報を集めて整理、多角度的に一つのことを究明出来るタイプ。 その素質を得る事でタイプ7は一つ一つの体験・発見に留まるようになるよ」
「ん?」
青山が首を傾げながら続きを促す。
「 例えるなら車に乗って通り過ぎるのと、歩いて通り過ぎるのでは一つの風景から得られる情報量が大きく違うみたいな感じかな」
「車だと目立つとこしか記憶に残んないけど、歩きなら細かい所まで見えるってか」
「そうそう、最初の野球の例えを使えば、投打に守備とか走塁とかいくらでも細分化できるわけだから、新しいチャレンジと一つの事を継続するは両立できるんだよ」
「今日『例えば』多いな」
「例えないと説明難しかったからね」
苦笑する川谷を見ていた青山だったがふと首を傾げた。
「そういえば統合する上での課題は言ったか?」
「話脱線させたのそっちだけどね」
川谷は青山を半目で睨んでから続けた。
「通常のタイプ7はいろんな体験のいいとこ取りをして楽しくない部分は避ける傾向があるけど、一つの体験に留まるなら楽しい所も面倒な部分も関わっていく必要が出てくるからそこが課題かな」