表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/19

タイプ3は書かないの?

 祝日だった月曜日が明けた火曜日、少しのだるさを感じつつも朝早くから登校した川谷は珍しくも青山より先に着いて青山を迎える事になった。


「あれ? 早いな」


「おはよう」


 青山は川谷の席のすぐ後ろにある自分の席に座ると早速ネタ帳を開いて川谷に見せる。


「お前テンプレ嫌いみたいだからちょっと考えて来たわ」


「別に僕に合わせなくても良いと思うけど」


 少し呆れた様子を見せた川谷の肩を叩きながら青山は語り出した。


「ロック○ンを異世界モノでやろうって構想だ」


「イマイチ想像出来ないけど」


「異世界って精霊おるし、精霊界あるから契約精霊送り込んで精霊界改変したら現実にも影響する的な感じでやるっていう」


「まあ、悪くは無いと思うけど」


 川谷が感想を述べると青山は気合を入れたように。


「何にせよキャラをしっかり書かんといかんから、エニアグラムの続き頼むぞ」


 と拳を握った。


「じゃあ、タイプ3だね。 タイプ3は割と理解しやすいと思うよ」


「それは助かるな」


 川谷は『タイプ3について』とノートに書きながら続ける。


「タイプ3は褒められた時に自分じゃなくて成果を褒められたんだって思いがちな人達だね」


 その言葉に青山は首を傾げる。


「どう言う事だ?」


「例えば親の手伝いをして褒められた時、手伝いをした事を褒められたって思うって事」


「ん? よくわからんぞ」


「手伝いをしなかったら褒められなかった、つまり素の自分は褒められるような存在じゃ無いってこと」


 それに青山は目を見開いた。


「全く意識して無かった感覚だわそれ」


 川谷は青山の感想に微笑みながらノートに『タイプ3=自身の存在意義は何かの対価』と書き込んだ。


「善行を積み、見栄えを整え、成果を上げて出世する。 そうしないと自分は生きる意味の無い人間のままだっていうのがタイプ3の苦しみだという事だね。 やりたい事より褒められそうな事を優先する傾向もあるよ」


 青山は目を瞑って川谷の発言を吟味している様子を見せたがやがて目を開く。


「なんか本人も辛そうだし、周りも大変になりそうだな」


「確かに成果を横取りしたり失敗を押し付けたりという事をやってしまいがちだから注意が必要なタイプではあるよね」


 青山に同意する川谷だったが青山は何かに気づいた様にニヤリと笑う。


「でも、どのタイプも周りに迷惑かける事があるからお互い様だよって言いそうだな」


「あ、確かに似たようなこと言おうとはしてたかも」


「で、そろそろ分裂だな」


 更に当てにくる青山に川谷は一つ苦笑を返してから『タイプ3→ストレス→タイプ9』と書き込む。


「タイプ9は泰然として器が大きく、癒し系と言われることも多いタイプだからタイプ3からしてみるとそこに居るだけでありがたがられるタイプだと感じ強い感情を抱きやすいみたいだね」


「自分はこんなに頑張ってようやく認めさせてるのにあいつらは居るだけで周りを癒して認められてる。ズルいじゃないかって事だな」


「そういう事だね」


 川谷は一度深く頷いてから続ける。


「タイプ3は挫折を味わう事で自分が役立たずな事を受け入れざるを得ないと考え、タイプ9に分裂する事であらゆる物事に無関心になって坦々とした日常を過ごしていくようになるよ。 面倒くさがり&良いとこどりで顰蹙を買うかも」


「分裂をしっかり書けたらシリアス物上手くなりそうだけど、暗いの嫌いなんだよな」


「理論を頭に入れるだけでも大分違うと思うから聞いてくれると嬉しいな」


 そう言いながらも『タイプ3→成長→タイプ6』と書き込む川谷。


「さて、統合だね。 タイプ3はタイプ6へ統合する」


 そこで一旦話を切った川谷に胡乱げな視線を向ける青山。 川谷は恥を感じた様子を見せ説明を続けた。


「タイプ6は堅実かつ万が一の備えを常に欠かさない姿勢を持つタイプで、自らの責任をしっかりと果たし期待に応えようとするタイプ」


「後半部はタイプ3と似ている気もするな」


「そんなタイプ6の素質を得る事でタイプ3はチームを成長させる事に喜びを感じるようになるよ」


「いまいちピンとこないな」


 首を傾げる青山に対して川谷も首を傾げながら。


「通常、タイプ3が教え導く時は、教師である自分凄いだろうってアピールする為であって相手が学び成長する事への興味はあまり無いんだけど、統合する事で自分が関わる事で成長した事自体をプレゼントだと感じる傾向が強まるんだよ」


「わかるようなわからないような」


「あと自分がすごい存在で無ければいけないという価値観は自分の弱さを認める事を許さないけど、統合によって助け合いだから助けを求めて良いって気づくよ」


「まあ、なんとなくわかってきたかもしれん」


「ただ、素の自分を知られると失望されるから功績をアピールしなくちゃいけないっていう焦りと向き合っていく事は本当に大変だと思うよ」


 そこまで言い切って息を吐いた川谷だったが青山は辺りを見渡すと。


「まだ結構時間あるな、なんか話せ」


「えっ、今からタイプ4は絶対無理だし他に話題なんかあったっけ?」


「なんかあるだろ」


「えっと、あっそうだ、分裂のタイプは逆から見ると統合のタイプだよ。 要するにタイプ3なら、分裂はタイプ9だけどタイプ9から見たらタイプ3が統合タイプになるよ」


頭の中で整理している様子の青山を見やりながら川谷は続ける。


「タイプ3はタイプ9に強い感情を抱くけど実際はタイプ9の方がタイプ3をお手本に成長する関係な訳だね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ