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いろんなタイプ8を書き分けないの?

「おはよう」


 ST前の教室に入って来た川谷が青山に声をかけると青山は不思議そうにそちらを見やった。


「珍しいな。 つってもまだ時間はめっちゃあるけど」


「まあ、いろいろあってね。 悪いんだけど今日はちょっと駆け足で説明させてほしいかな」


「まあ教えんのはお前だから別にいいぞ」


「ありがとう」


 そこまで会話を進めた川谷は呼吸を整えてから話し出した。


「タイプ8は他人の指揮に従う事を恐れて自分の力で運命を切り拓いていこうとするタイプだったね」


「嫌いとかじゃなくて怖いっていうのが意外だと思った記憶があるな」


「そうなんだ」


 青山の言葉に不思議そうに頷く川谷。


「じゃあウイングだね。 タイプ8のウイングはスタンスの違いかな」


「どのウイングもスタンスの違いだった気がするんだが」


「気にしては負けだよ。 ウイング7は困難な状況に身をおき、強敵に挑戦する事でレベルアップをはかったり実力を証明したりする事を好むよ。 スリルジャンキーだとよく言われる感じだね。 戦う事自体が目的になってしまって『他人による脅威を受けたくないから自立したい』じゃ無くなってしまってる感じ」


「タイプ8だとそのイメージが強いな」


 頷きながらもタイプ8全般の特徴だろうと指摘する青山に首を横に振りつつ川谷が答えた。


「ウイング9は表向きには人に従っている事も多いよ」


「ん? タイプ8はそれが怖いんじゃなかったか?」


「恐いよ。 ウイング9の場合は上に立っている『つもり』の人が自分で決断してウイング9に命令している『つもり』だけど実はウイング9が裏から手を回してました。 全部ウイング9の手のひらの上ですって事がよくあるんだよね」


「怖えな、ウイング9が、いや、ウイング9が」


「意味わかんなくなってるよ。 言いたい事はわかるけど。 ぽやぽやおっとりかと思ったら強烈で攻撃的というような二面性があるイメージでいればいいかな」


 そう言って頷く川谷。 そこから少しもったいぶって進める。


「生得本能行こうか。 タイプ8はどの本能ともそんなに対立してないからシンプルだとは思うよ」


「タイプ8は自分の力で戦わないと怖いんだったよな? まあ確かに対立はしてないか」


「うん、自己保存は防衛への関心。 自分の所有物や大切な存在が守れる範囲内にある事を確認したい。 自分に充分な防衛力がある事を確認したいっていう感じ」


「まあ意外でもないな」


「タイプ8の本質はどちらかといえば攻めだから、常時臨戦態勢とか遠征部隊を送っている時に本拠地をしっかりと守れるようにしておくっていうイメージかな」


 付け加える川谷。 一方の青山は予想を超えてこない言葉に少しつまらなそうな雰囲気を醸し出している。


「ソーシャルは仲間や部下に対する関心。 自分以外は明確な敵もしくは潜在的な敵というのがもともとのタイプ8的な世界観だからソーシャル欲求が全くもって満たせないんだ。 でもその中からいろいろあってこいつは信頼出来るぞって人を見つけるとその人達でソーシャル欲求が満たせるようになる」


「じゃあそいつらを敵から防衛したいって感じになるのか?」


「うん、まあ予想つくよね。 その通りだよ。 ただ信頼できる少数の人で欲求を満たすという事は裏切られた時のダメージがとても大きいんだ。 その為に時々その人達が本当に味方か試すような事をするし裏切り者には容赦は本当にないよ」


 時計を横目で見ながら川谷の口調が早まってくる。


「最後にセクシャルだね。 セクシャルの欠落や足りないものを手に入れたいという欲求は支配欲や束縛欲といった形でもろに出ちゃうかな。 ただ一方で関心を寄せる対象が大人しく支配下に入ってしまうのは望まないよ」


「支配欲あたりはわかるが後半はよくわからんな」


「要するに本気になりたい熱中させて欲しい。 これもセクシャル欲求の一面だよね。 拒絶をはねのけて支配下に置き、それを奪いに来た敵と本気でぶつかり合いたい。 それがこの虚無感を埋めるんだっていう強い気持ちだよね。 まあ『自分が』自分の欠落を埋めるって辺りはタイプ8だなぁって思うけど」


 そこでチャイムが鳴り出し、川谷はギリギリで説明を終える事に成功した。


「どこの俺様だよ」

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