いろんなタイプ5を書き分けないの?
「はよっ」
いつものように早朝の教室、何やらノートに書きつけていた川谷に青山が挨拶するとさっとノートをしまった川谷がいきなり本題に入った。
「おはよう、よしじゃあ今日はタイプ5のバリエーションいろいろだね」
「その前に何書いてたか見せろよ」
「ごめん、サプライズだからって言っちゃダメか」
「言ったら意味ないな、よし忘れてやる」
「ありがとう」
そんなたわいのない話をしてから川谷は改めて本題に入った。
「タイプ5は自分はエネルギーに乏しいと感じている事からリスクの低い思考に重点を置く傾向があるタイプだったね」
川谷がおさらいを言うとそれに青山は黙って頷く。 そんな青山を確認して川谷は続けた。
「タイプ5のウイングはやっぱり思考の方向性かな」
「普通に考えてそこだよな」
「うん、まずウイング4は様々な事がなぜ行われているのかを考える傾向があるよ。 意味があって行われている事でも時代が変わると必要なくなる事があるけど伝統だから続いている。 それはどうなんだって考えるのがこのウイングだね。 他の人が考えることを避けるようなアレなジャンルに踏み込むことも結構あるよ」
「気持ちはわかるが嫌われそうだな」
「あー、ウイング6の方が嫌われてしまうかも」
川谷が複雑そうな顔でそう言う。
「そうなんかウイング6はどういうのだ?」
「ウイング6は実際に直面するだろう問題に対して情報を集めて考察していく事を好む傾向があるよ。 その為他の人も研究しているテーマでの考察が多くなり意見対立するケースが多いんだ」
「それで嫌われるのか? いろいろな意見があったほうが楽しいと思うんだが」
「ほらタイプ5的にあんまり感情に頓着してないから、相手が正論だけども……ってなったり実際にやってみるまで他の人には理解できないとか」
「それは嫌われるな、俺はいいと思うんだがなあ」
「僕もそう思うよ」
そこからしばらく二人でしみじみと言い合っていたが川谷が気をとりなおしたように次に進めた。
「生得本能いこうか、自己保存は何だろ、タイプ5と対立してるようで実はそうでもなかったりするかなあ」
「よくわからんのだが」
「えっとね、タイプ5は頭の中で失敗しても失うものが少ない、頭を動かすのにあまりエネルギーを使わないっていうタイプだから自己保存に必要な資源も少なくて済むんだよね。 逆に言えば頭が十分使えない場面ではエネルギーが必要だからそうならない為にも安全な場所や時間をどれだけ欲するかっていうパラメーターになるかな」
「ん? 要するに自己保存が強いと安全地帯を獲得・維持したい。 低いと別にどこでも考え事できるだろってなるでいいのか?」
「そんな感じだね。 あと高いとあらかじめ知識をたくさん集めといて考察に役立てようっていう考えにもなりやすいかな」
そう言うと鞄から水筒を取り出して飲む川谷。 一息つくと再び話し始めた。
「ソーシャル。 人と関わりたい欲求だけどもタイプ5的に人と関わっていくのはエネルギーがたくさん必要って考えだから辛いよね。 もちろん飲み会とかに参加するだけ参加して端っこで他の人の会話聴きながら考察してたりってのは好きみたいだけど」
「なんだそりゃ」
「人間観察って楽しいよ、僕は多分タイプ5じゃないけど人間観察は好きだな」
「それはいいからソーシャルの説明しろ」
脇道にそれる川谷に青山がムッとした顔を向けると軽く謝ってから話を戻す川谷。
「ソーシャルが高いと相手が知らないであろう知識や衝撃的な新発見を教えてあげたいという欲求が高まり専門的な話や高度な分析を話したがる傾向が出てくるみたいだね」
「なるほどな、頭で話のネタを見つけてこようとするわけだ」
青山が何度も頷くのを不思議そうにみる川谷だったがやがて気を取り直すようなしぐさを示した。
「最後にセクシャルだね。 セクシャル欲求はタイプ5と矛盾してるかな。 欠けてる部分を埋めたくて好奇心や執着に関わってくるセクシャル欲求は頭の中で完結させようとするタイプ5の戦略と激しく対立するよ。 言い換えるなら求め、手に入れる事で満足するセクシャル欲求と求めず、ミニマムな生き方をするタイプ5ってなるかな」
「来たな完全対立」
「来たね。 セクシャル欲求が高いと知識を集め考察した結果を共有してくれる。 自分の欠けた部分にピッタリはまるような人を探し、それ以外の人には特別な知識を分け与えたくない傾向があるよ」
「そうなのか。 人なんだな」
「うん、知的好奇心という部分はもともとあるから人になってくるよね。 ちなみに特別な人以外にもそれほど重要じゃない知識は教えてくれるみたいで特に興味がある分野で議論するのは好きみたい、これは頭で熱中したいから誰か付き合ってって事なのかな? もちろん一人で考えるのも好きみたいだけど」
「今のところタイプ5ぽいミニマムさは出てこないな」
「意外と出てきてるんじゃないかな? 知識、頭って言葉ばかりで行動とか物って単語無いし」
「確かにそうだな」
「特別な人に対しては知識を共有したいけど、うまく説明できない、というか専門的すぎて無理がありすぎる為に負い目というかなんだろう、よそよそしい感じになってしまいには引きこもって顔を合わせなくなるっていう。 説明難しい、ごめん今回はこれで終わりにするよ。 またうまく説明できるようになったら聞いてくれると嬉しいな」
「おう」




