いろんなタイプ4を書き分けないの?
いつものように早朝の会話を楽しむ二人。今日最初に話題になったのはウイングについてだった。
「ウイングも人によって意見が異なる事が多いね。 ウイング無しを含めた三種類派と二種類派とかウイングは変化する派と変わらない派みたいな」
「お前はどんな派閥なんだ?」
「僕は強いて言うなら二種類派で基本的に変化しない派かな。 でも逆派閥にもちょっと惹かれるものがあったりするんだよね」
「そういう時は中立派とでも言っとけ」
青山は呆れたように首を振ってから川谷に本題に入るよう促した。
「じゃあタイプ4だね。 タイプ4は自分とは何かについて悩み自分の感情を探求していくタイプだったね」
「そうだったな」
「まずウイングからだね。 タイプ4のウイングは自己探求の方向性かな。 タイプ4は自分の事を周りの人が理解してくれないと思い孤独を感じるんだけどなにげに自分でも自分のことわかってないんだよね」
言葉を選ぶようにゆっくりと言葉を継いで行く川谷。
「ウイング3は相手の要求に対して自分らしい解答を返す事を好むよ。 要するに相手の望みに完全に反する事は避ける一方で相手がここはどうでもいいと思っている部分がタイプ4ウイング3の自分らしさ全開の場に利用される形だね」
「基本的には合わせながら一部を探求に使わせてもらうのか、賢いやり方だな」
「確かにそうなんだけど、自分らしさを探求する部分と相手の期待に応える部分のバランスがね」
「それは確かに難しそうだな」
そこで息を大きく吐いた川谷は今度は大きく吸って口を動かす。
「ウイング5はとことん自分の感情を探求する。 『今楽しいって思ってるこの感情はどのような根源から生じているのだろう』とか『自分をこのような環境においた場合どのような感覚を得るのだろうか』みたいな感じかな」
「なんというか、研究者だな。 テーマ自分だけど」
「そうだね。 悩んで仮説立てて実験したらレポートの代わりに絵を描いたり曲作ったりダンスで表現したり。 うん、研究者だね」
頷く川谷に合わせて青山も頷く。 ひとしきりそうしてから川谷は次に進めた。
「じゃあ次は生得本能だね。 自己保存はタイプ4とかなり対立関係にあると言えるよ。 なにせタイプ4はなんとなく欠損感や劣等感をかかえている人たちだけど、それが物質的な幸福で満たされる事は無いからね」
「ようわからんな」
「食べては虚しく寝ては欠落感、これじゃかえって『自分は何やっても幸福なんて感じれない』という気持ちを強めてしまうだけになっちゃうって感じ」
言葉を選ぶようにゆっくりと口を動かす川谷。
「だからタイプ4に限っては自己保存が高いと現実逃避で貧乏くじを引きに行く事があるんだ。 自分を不幸の中において、そこから自分らしさを見つけてきて表現する事で多少なりは穴を埋める事が出来るみたい」
「なんかタイプ4って壮絶なんだよな」
「だから人気があるのかもね。 ともかくソーシャル行くよ」
一つ息をついて整えてから進める川谷。
「タイプ4にとってソーシャル欲求は少し扱いが難しいものになるよ。 なにせ欠落感や劣等感がある中で集団と関わりたいわけだから」
「自分より凄いやつと仲間になろうってのは確かにきついかもな」
「うん、だからソーシャル欲求が高いと欠点を隠しながら関わったり隅でしれっと参加してたりする一方で欠陥のある部分を含めたありのままの自分を認めてほしいという欲求が高まり、多数派に馴染めないような集団の中に混ぜてもらったりなんかもするみたいだね」
「いろいろ考えているんだな」
感心したような声を出す青山に「当たり前だよ」と川谷が頷いた。
「よしじゃあ最後、セクシャルだね」
「なんか一番タイプ4な気がする」
「確かにそうかも、タイプ4は自分自身が欠けている素質を身につける……つまりは完全な人間になる事は無理だろうっていう気持ちがどっかにある。 だから自分が身につけれないならその素質を持っている人と深い関係になればいいという方向性にセクシャル欲求が働く傾向があるんだ」
「自分がコンプレックスを持ってる分野で活躍しているやつに惹かれるってことか? でもそんなの他のタイプのセクシャル欲求もそうなんじゃないのか?」
首を傾げる青山。 それに川谷は苦笑を返した。
「そうだね。 でもタイプ4の場合、自分が面白みのない人間だと思われたら『他の人でも良くない?』って思われるんじゃないかという恐怖が強いから自分らしさを追求するとともに素の自分を知られないよう距離を置こうとする傾向があるのが他のタイプと大きく違うかな」
「確かにそこは違うのかもな」
「あとは自分の持ってないものを持っている事に対する嫉妬とかもあるだろうし、相手に向ける感情は複雑かつ強烈だろうね」