いろんなタイプ3を書き分けないの?
「はよって寝てるわ」
いつもの早朝の教室で青山より早く来て寝ていた川谷。 わざわざ起こすような事はせず青山は静かに席に座るも退屈そうに貧乏ゆすりしてしまう。
するとそれで起きてしまったのか眠たげな目を青山に向けた川谷。
「そういえば何だけどさ、テンプレって主人公が革命起こすよね」
起き抜けにそんなことを言われた青山は首を傾げた。
「何言ってんだ? 寝ぼけてないではよ起きろ」
「だからさ、転生者か転移者が革命起こしてさ、チートで貴族とか全排除したら混乱起こるじゃん」
「起こるな、で?」
「そこで死ぬか還るかして、大変な事になっている世界の現地主人公が統一を目指して頑張るぞ的なやつ無いよね」
「無いな、あるわけ無いな」
呆れ顔ながら付き合う青山だったがやがて川谷の目が完全に覚めて不思議そうに青山の目を見つめた事で青山の努力は無かったことになった。
「あれ? そうだ今日はタイプ3だね。 自分の存在意義は何かの対価でしかないという価値観を持ち生きるために栄達を目指すタイプだったね」
「いきなり本題入るなよ」
「タイプ3のウイングはどの様にして存在を認知してもらうかの方法で分岐する」
「無視すんな、いやもういい」
「ウイング2は多くの人から好感を持たれていることを根拠に存在が認知されているとみなす傾向があるみたいだね。 『求められている偶像』を察知するとそこにいらない要素を自分からオミットする事で求められる姿を体現しようとする」
名称の付いていない表情を浮かべて川谷はそう言うと無言で聞く青山を確認してから続ける。
「ウイング4は苦手な事からは徹底的に逃げて得意な事で全力投球する事でそこで成果を上げて賞賛を得ようとするよ」
「実績で賞賛を得て存在を認知する。 まさにタイプ3だな」
「そうなんだけど、傲慢だったり黙々とした態度で働く姿を見てタイプ3だとはまず思われないみたいだね」
台風一過の日差しが照りつける校庭に目をやりながら川谷が話すと青山が手を叩いて次を促した。
「ごめん、じゃあ次は生得本能、自己保存だね。 タイプ3は自分の存在意義が失われたらどんなに衣食住が揃っていても意味がない、全てを喪失してしまうという認識があるから自己保存的欲求はそれが喪失したらどうしようというリスクを大きさを左右する要素となるよ」
「というとどうなるんだ?」
「高いと時間をかければじわじわ、早急にやると一気に存在意義が失われると考え短い期間で準備をしっかりして進めようとする。 低いと『失うものは何も無い』とばかりに突っ込んでいくみたいな感じかな」
「高いとなんか過労死しそうだな、低いとまぁ失敗するまでは精神的に楽だろうな」
黙って聞いていた青山に川谷が促すとそう感想を言った。 それを聞いてから川谷は次に進める。
「ソーシャル欲求が高いと自分がやっている事が周囲にどう評価されているかをかなり頻繁に確認するんだけど、正直これタイプ3全体の特徴って思わない?」
「思うな、ソーシャル欲求弱いやつどうなるんだ?」
「ソーシャル欲求が低いと目に見えるものや直接的に自分を求められる等、実感がしやすい形での存在肯定を求める傾向があり、謎の評価基準で高い役職に付けられても失って恥をかくだけなんじゃないかと感じる……だと思うけど難題だね」
「タイプ3と弱ソーシャルとか完全に矛盾してるもんな、でもいるんだろう?」
「実在されている方がいるみたいだね。 直接お話を伺ったわけじゃないから何というかあれなんだけどね」
「何だそりゃ」
半眼で川谷の方を見る青山。 川谷はそんな青山から目をそらし話を進める。
「セクシャル欲求。 セクシャル欲求が高いとみんなから求められる理想像に近づく事自体を楽しむ事がある感じかな、そして理想像的な自分と関わる事自体が相手にとってのステータスであり、魅力的な相手と関わる事が自分にとってのステータスと感じる傾向もあり、タイプ3の中では一番人を育てる傾向があるみたいだね」
「育てるっていうのは相手を魅力的にすれば近くにいる自分の価値も上がるって事でいいのか?」
「そんな感じだね。 セクシャルが低いと存在を認知されるためにいやいや成功を目指そうとする傾向があるみたい」
「セクシャル欲求は強い方が良さそうだな」
「強いと『本当の自分は価値がない。 嘘で塗り固められた存在なんだ』って感覚が強まるから良し悪しな部分もあると思うよ」




