いろんなタイプ2を書き分けないの?
「テンション下がるな」
「下がるね」
いつもの早朝の教室で川谷と青山は沈んだ顔を見合わせていた。 明け方の台風警報解除が後3分遅ければ昼からの授業になっていたからだった。
「やる気でないわ」
「そうだね」
それからしばらく机に突っ伏していた二人だったがやがて気を持ち直して話し始めた。
「今日もおさらいからだね。 タイプ2は自己承認力が貧弱かつ事実より実感で承認を受けたいと考えているタイプだった」
「おう、覚えているぞ」
「まずウイング。 タイプ2のウイングは承認の得かたに多少の差異が出てくるよ」
川谷はゆっくりと言葉を紡いでいく。
「ウイング1は相手の立場と献身の量に注目する傾向があるよ。 相手が迫害されていたり弱者であるほど献身の価値が高くなる。 でも弱っている人はタイプ2が満足する感謝が出来ない事が多く、八つ当たりをされる事もあるからタイプ2的には期待してたから頑張れたのに裏切られたという気持ちになってしまいがちだね」
「それは……なんとも言えんな」
「あとはみんながやりたがらない仕事を率先して引き受けたりという事も多いみたいだね」
「それはなんとなくわかる。 というかタイプ2のイメージってそんな感じだわ」
「そうかもね。 それを考えるとウイング3はちょっとイメージと違うかも。 ウイング3の場合目的、つまり自己承認力が弱い為他人に承認してもらう必要がある事に対して長期的、計画的に取り組む傾向があるよ。 だから『あの人はありがとうっていう時の笑顔が素敵だから積極的に助けよう』みたいな事を考えることもあるみたい」
「確かにイメージと違うな」
頷く青山。 それに合わせて川谷も頷いた。
「あとは高度な技術なんかは秘匿される事が多いからそれを習得して相手に惜しみなく与える事でより質のいい承認を得られると考えたり、自分の個性や気持ちを大切にしてもらいたい、ギブアンドテイクを好む傾向もあるみたいだね」
と川谷は言うと少し目を閉じ、開くと再び話しだした。
「じゃあ生得本能だね。 まず自己保存」
「タイプ2に自己保存か? なんかイメージわかないな」
「実のところタイプ2は自己保存欲求が高かろうと低かろうと自分の時間や体力を人の為に使おうとすることに変わりはないんだ」
「ならタイプ2に自己保存は関係ないってことか?」
首を傾げる青山に川谷は首を振った。
「自己保存欲求が高いと自分の時間や体力を価値の高いものだとみなすから『こんなに献身したのに見返りはないの?』という気持ちになりがちな傾向が出てくるよ。 相手も自分に対して献身してほしいと要求する事も出てくるから下手するとありがた迷惑+お礼と称して働かさせる迷惑な人になる危険性もあるみたいだね」
「それだと自己保存が低いとこの程度の献身ってなるのか?」
「そうだね。 低いとそんなに尽くした感覚にはなりにくいから自分でも気づかないうちに頑張り過ぎて体壊したりしやすいよ」
手で高い、低いと示しながら話した川谷。
「次はソーシャルだね。 タイプ2にとってソーシャル欲求は自分に承認をくれない人がいることに対するストレス度合いを左右するバロメーターになるよ」
「というとどういう事だ?」
「タイプ2の身近にタイプ2に対して無関心だったり嫌っている人がいた場合どれだけ精神的に不安定になるかという事だね」
「つまりソーシャルが強いと周りの全員から好かれる必要が出てくるわけか」
確認するように声に出す青山。 それに対して川谷は頷く。
「そう。 だからソーシャル欲求が高いと組織の重要な役割を担ったり有名人をサポートしたりする事で間接的に承認を得ようとする事が多いみたいだね」
「なるほどな」
青山が納得したように何度か頷いてから次に行くよう川谷を促した。
「最後にセクシャルだけど、そもそもタイプ2にとって足りないのは承認である事は明確なんだよね」
「なら強くても弱くても変わりはないのか?」
「実はそうでもないんだ。 ソーシャルとは完全に逆なんだけど特定の一人、もしくは少人数からどれだけの承認を得る事が出来るのか、どれだけ相手のことを理解して相手からも理解してもらえるのかという事に拘るよ」
「どうしてだ? 承認が欲しいなら多くの人から貰えば良くないか?」
「そう聞かれると難しいけどやっぱりセクシャル欲求は自分に無いものを持っている人に惹かれる傾向があるから、誰から得た承認なのかで価値が変わってくるって意識が強いのかな」
「そう言われるとそんな気もするがどうなんだろうな?」




