タイプ1は書かないの?
早朝の学校、そこはそれなりの生徒で賑わう。 しかし彼らは朝練の為に早く来ただけであり既に教室で待っているのは二人だけだった。
「そういえば川谷、俺の小説読んでくれたか?」
電車の都合により教室で暇を潰していた青山がそう切り出すともう一人が読んでいたスマホから目を離し、渋面を作った。
「一応読んだけど評価を求められても困るから」
突き放す様に言われると青山としてもちょっとムキになった様に。
「何が悪いんだよ、あれか、お前もキャラが薄っぺらいっていうのか?」
と返す。これには川谷も困った様に頬をかいた。
「そもそもチーレム好きじゃないのもあるから気にしなくていいと思う。 たしかに性格面はちょっとと思ったけど」
川谷としてもいいにくい話で、だからこそ青山の「どうすれば良い?」に対しても即座に答える。
「エニアグラム使ってみればいいんじゃない?」
「エニアグラム?」
聞きなれない言葉の様でオウム返しする青山に対し川谷は引き出しから現国のノートを取り出しながら説明を始めた。
「性格をタイプ1からタイプ9までに分類する性格論の事だね」
そこで一旦言葉を切った川谷に青山は胡散くさそうな目を向ける。
「じゃあタイプ1から説明してみろよ。納得したら俺の小説で使うからさ」
その言葉を待っていたと言わんばかりに川谷はノートから最後のページを破り取り、シャーペンで『タイプ1について』と書き出す。
「ところで青木は感情によって行動が変わる事ってある?」
「感情で?」
何を言っているのだろうと首を傾げる青山に川谷は深く頷いて続ける。
「だるいから学校行きたく無いとか、嫌な奴と喋りたく無いとか、好きな事やる時はやる気出るとかそういう事」
「それって当たり前だろ?」
「タイプ1はそれが難しいと考えてるみたいなんだ」
そこまで話した川谷にますます首を傾げる青山。それを見ながら川谷はさらに続ける。
「理由としては親が気分屋で迷惑したとか、感情自体が希薄でそもそもピンとこないとか、個人差が大きいみたいだから何とも言えないけど、とにかく感情で動けないから代用品、行動指針が欲しいと思ってる人がタイプ1に分類されるみたいだね」
そう言う間にシャーペンも動き『タイプ1=正しさへの固執』と書かれる。
「その代用品ってのが正しさって事なのか?」
「そう、やらなくてはいけない事、やってはいけない事が明白なら迷わず動けるから、使命に突き動かされているのが楽という事になるんだ」
と言ってから川谷は「でも」と続ける。
「実はタイプ1にも感情はあるんだ。 だけど自分の中の強い感情に気づいていなかったり、抑え込めていると勘違いしてたりするんだ。
「それってもしかして『キレて無いっすよ』って奴か?」
何処と無くドヤッとした顔でそういう青山に対して川谷は曖昧な笑みを浮かべる。
「その言葉は知らないけどそんな感じ。 怒りを自覚していないから、周りから指摘されても困惑してしまうっていう」
「そんなガチな悩み事だったのか」
目をパチパチさせた青山にさらに川谷は。
「これはタイプ4への分裂、つまりストレス過多によりダークサイドに落ちちゃうパターンによく見られる現象とされているんだ」
と続けた。それに対して青山は「タイプ4?」と疑問をもらす。
「うん、タイプ4は感情探究者ともいうべき一面を持ったタイプだからタイプ1としては憧憬や憎悪といった強い感情を抱きやすいといえるタイプなんだけど、タイプ1が大きなストレスを溜め込むと何故かタイプ4っぽい言動をとるとされているんだ」
「そうなんか、なんかタイプ1がストレスを溜めやすい原因とかあったりするのか? それともやっぱり個人差がでかいのか?」
それなりにタイプ1について理解して来た様子の青山の問いに川谷も『タイプ1→ストレス→タイプ4』と書き込みながら答える。
「基本周囲との軋轢かな、タイプ1は周りがサボっているからといって、自分もサボれるほど器用じゃないから『なんで自分だけ頑張っているんだろう』って思いやすいんだ」
それには青山も納得した表情を返す。
「器用じゃないというか正しい行動以外をどうやってやったら良いかわかんないんだろうな。アイツら要領良くやりやがって、羨ましいって感じだろうな。俺がタイプ1ならサボってる奴に怒鳴り込むわ」
そう言って虚空にジャブし始めた青山に川谷は苦笑しながら説明を続ける。
「強い負の感情を制御できなくなったタイプ1は今まで出来なかった感情で動く特性を備える反面、今までの方針だった正しさに真っ向から歯向かう行為な為自責に苛まされることになる。その姿がタイプ4の悪い所『感情的かつ現実逃避癖がある』っぽいっていう」
「なんかタイプ4悪い奴みたいだな」
川谷の説明を聞いた青山がポツンと洩らす。 それに川谷は否定を返す。
「タイプ4はありふれた平凡な物を豊かな創造性と表現力で素敵な物にする力を持っているよ。 感情のコントロールが上手く出来ないのも、人を感動させる独特の感性も自らの感情を探求するからこそ。 表裏一体なんだよ」
「そうか、うーん」
まだ少し納得できない様子の青山を横目で見ると川谷は話を切り替える。
「分裂の逆は統合と言ってタイプ7っぽくなる」
『タイプ1→成長→タイプ7』とノートに書きながら続ける。
「タイプ7はいつも楽しそうな感じで、好奇心旺盛。 目を離すとフラフラーとどっか行く感じ。 ようするにこの好奇心のままに動くっていうのを正しさの代わりの行動指針として持って来るっていう」
「なるほどな、結局正しさをなにで置き換えるかっていうのが大事なんだな」
しみじみと言った青山に川谷が頷いた。
「ただ、正しさの鎖で縛っていた自分を解放してしまう事に対する恐怖は根強いから根気よく向き合っていくことが大切だよ」
とここでチャイムが鳴り響く。 二人は全く気付いてない様子だったが既に教室には生徒たちが集まっていた。
「やっべえ、ありがとな川谷。 エニアグラム使ってみるわ」
こういう形式で書いてみてわかりました。
私、『どこがわからないかがわからない』傾向があるみたいです……
なのでわかりにくい所や疑問点などが絶対に出て来るかと思います、冗談抜きで全く察せないので教えてくださいお願いします。