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第7話 彼女の決意、俺の決意

いつもは鈴視点だから今回は樹希視点です。

拙い小説ですがそれでも読んでいただけるととても嬉しいです。

                 第一章

           第7話 彼女の決意、俺の決意



          -これは樹希が吸血鬼になる前の話ー



 俺は今、彼女が家に来ることになって相当焦っていた。


 というか、ピクニックして買い物して家に帰ったと思えば親から「今日鈴ちゃん来るからね。」って言われてビックリする間もなく鈴がきた。


 そしてそのまま泊まる流れになって、いつの間にか一緒にご飯を食べたりお話したりして過ごしていた。


 食事の時にはもうそれは恥ずかしかった。なんせ親父が付き合ってるんだろとか、最後までやらなければいいからとかいうから、本当に恥ずかしかった。


 そしてお風呂に入ってパジャマに着替えようとした。


 でもこのままだとなんか凄く危ない気がした。主に俺の理性がどうにかなりそうだった。


 だから、普通の服に着替えて鈴を散歩に連れて行った。


 あ~涼しい、理性が戻ってくるな・・・。


 そして、鈴の顔を見ると鈴もこっちを向いて何か話をしようと口を開いた瞬間。


 「オォォォォォォォォォ・・・」


 横から得体のしれない音のようなものがした。


 鈴は強張った顔でそっちを向いた。


 つられて俺もそっちを向く。


 ・・・なんだよ、これ。


 そして、昼間に聞いた鈴の夢の話を思い出した。


 確か丁度こんな感じのでかくて丸くて黒い何かに追いかけられて、俺は確か家の崩壊と共にできた破片で鈴を守るためにかばって死ぬって、言ってたような・・・


 とりあえず置いておいて鈴と逃げる!


 そして逃げている間に鈴に言葉で確認を取った。


 すると、ものすごく複雑な顔をしながら何回かうなずき返してくれた。


 でも反応するので精いっぱいで言葉にまではできないみたいだった。


 少しして突然鈴がこけた。


 「っ、鈴!!大丈夫か!?」


 声をかけるとすぐに起き上がって気丈に言った。


 「大丈夫だよ、早く逃げよう!」


 でも俺は鈴のすぐ後ろまであの何かが来ているのをその目で見ていた。


 鈴を失いたくない一心で、恐怖を抑えて叫んだ。


 「鈴!!!!!後ろを見ろ!!!!」


 鈴は俺の言葉の通り後ろを振り向いた。でも近すぎて恐慌状態に陥ったのか逃げたくても体が動かないみたいだった。


 ふと見ると何かは触手をわさわさと出して鈴に迫っていた。


 このままじゃ鈴が食われる!!


 「っ鈴!!!」


 何とか間一髪で鈴の手を取って触手から離して、そのまま走った。


 何とか引きずられるようなこともなく普通に鈴はついてきてくれた。


 このまま直線的に走っていてもそのうち捕まるだけだと思ったおれはジグザグに角を使って一時的にあの何かを撒いた。


 「はあ、はあ、はあ、はあ、はああああ。」


 俺は荒くなった息を整えた。


 そして、鈴を見た。


 すると鈴は何かを決意したかのようにでも少し怖そうに、でも確実に小さくうなずいて俺に向いた。


 「・・・ねえ、樹希。私、ちょっと今から化け物にならないといけないかも。」


 どういう意味なのかさっぱり分からず、瞬間的に言葉に出てきた。


 「何を言ってるんだよ?」


 すると、鈴はわからなくてもいいというかのように話を進める。


 「時間がないけどこれだけは言っておくね?」


 ・・・何か嫌な予感がした瞬間。


 「樹希。大好き。」


 そう言って俺の頬にキスをして、謎の細長いものを鈴は太ももに押し当てた。


 すると、鈴は誰かに軽く頭を突かれたかのようにふらっとしてそのまま少しだけくらくらしていた。


 くらくらが収まって鈴が目を開けると、鈴の瞳は紅くなっていた。


 俺はものすごく驚いた。


 やっと口を開いて鈴、何それと聞きたかったが全く声が出なかった。


 「・・・な、鈴・・・?」


 すると鈴は少しびっくりした顔をした後、とても申し訳なさそうな顔をして言った。


 「ごめんね、本当はあの夢の男の人に、切り札として今のを渡されてたの。でも、さすがに言えないよね。こんな風になるのは。」


 鈴がそう言い終わると俺の後ろの家が崩れる音がした。


 ああ、本当ならここでかばって死んでたのかな・・・?


 そんなことを思いながらこっちに向かってくる大きな破片を見た。


 そして、それを見て今自分が何をしたいのかを考えた。


 ・・・鈴を、守りたい。どんな姿だろうと、鈴を守りたい。


 鈴が鈴じゃないっていうのなら守る必要もないのかもしれないけど、もし鈴が鈴なら、俺はもう何があっても鈴を守るんだ。


 そう決めて一つだけ鈴に聞いた。


 「・・・ねえ、鈴・・・お前は鈴なんだよね?」


 「そうだよ。何があっても鈴だから。だから・・・信じてほしいな。」


 即答でそう帰ってきた。多分鈴はだいぶ怖いはず。


 もう信じるしかないと思った。


 「わかった。信じる!俺は何すればいい!?」


 そう叫ぶと、一言「隠れて」といって目の前まで来た大きな破片を蹴って粉々にした。


 俺はもう隠れてるしか道がないと悟るとすぐ目の前にあった別の角の裏に隠れて鈴を見た。


 今の蹴った衝撃で目の前の石瓶は崩壊したみたいだった。


 でもまだあの何かが見れるようなところではなかったのか鈴は高くジャンプした。


 そのまま空間を蹴って家の敷地に入っていったと思ったらその直後、鈴の声が響いた。


 「うりゃあああああああああ!!!!!」


 何してるのか気になるけど隠れていないときっと足手まといになってしまう。


 そんな確信があったから、俺はここで待っていた。


 しばらくすごい音が向こうから聞こえていたけど、急にこっちに戻ってきて一言。


 「樹希、私につかまって!!」


 そうして鈴に背負われて逃げること数分、鈴は何かに気が付いたように進路を変えてぐんぐん進んだ。


 そして前のほうに男の人が立っているのが見えたとたん、鈴は苦虫を食べたような顔をしながら、でも少し安心したような顔をして彼に近づいた。


 彼に近づくと、彼もまた瞳が紅いのが見えた。


 「・・・ああ・・・鈴さんですね。良かった。あれのおかげで匂いが辿れましたか。良かった。それではもう、休んでいてください。後ろの人も、鈴さんを介抱してあげてください。それでは、行きますよ。」


 なぜか鈴の名前を知っていたが、鈴はそれをスルーして後ろに下がった。


 俺も一緒に下がって鈴のことをいろいろ気遣った。


 戦いの後だから興奮していないかとか、逆に怖くなかったのかなと思って、落ち着かせようと抱きしめたりなでたりとか、いつでも寝てしまえるように膝枕までしている。


 すると急に鈴が申し訳なさそうな、でも強張った顔で聞いてきた。


 「・・・・・・ねえ、樹希。私のこと、怖くないの?」


 少しだけ何を言ってるのかわからなかった。でも少しして言ってることが分かった。


 瞳が紅くなったり、それに伴って急に身体能力が化け物並みになったりしたことで俺に怖がられていないか、気になるんだ。


 でも、助けてくれた鈴に対してそんな怖いなんて感情は沸いてこなかった。


 むしろすごいと思った。逆に俺が守れていればと思った。


 すごいと思ったことは言わないでおこうと決意して、俺はこういった。


 「・・・なんで怖いなんて思うんだよ。本当なら俺はお前もろくに守れずに死んでたんでしょ?なら、今ここでこうやってしていられるのはあれを使って助けてくれた鈴のおかげだから。本当は俺が守りたかったんだけどな・・・。でも、感謝以外に何か感情を抱くなんて今の俺にできないよ。」


 すると、鈴の少しだけたまっていた涙がダムが崩壊したかのようにポロポロと流れ始め、大泣きしてしまった。


 そして、泣き疲れてそのまま眠ってしまった鈴をなでながら目の前の戦闘を見た。


 とてもハイレベルな戦いが繰り広げられていた。


 その戦いを見ているうちに、いつの間にか寝てしまった。




 翌日、目を覚ますと家の布団。


 横の布団には鈴が寝ていた。


 服もパジャマに着せ替えられていた。


 昨日のことは夢なんじゃないかと思ってきた直後、俺の膝にあった蝙蝠のぬいぐるみが喋った。


 「おはようございます。よく寝られましたか?」


 「!?!?!?」


 人形だと思っていたものが喋ったので驚きに驚いた。


 「・・・人形でもレプリカでもなく本物の蝙蝠ですよ。それで、昨日の記憶はありますね?」


 なんなんだと思いつつ質問に答える。


 「・・・はい。」


 そしてそこからは驚きのオンパレードだった。


 あの男の人が今目の前でしゃべっている蝙蝠だということ。


 昨日あの後この蝙蝠がここの家に運んでくれたことや自分が吸血鬼だということ。


 彼女にはその吸血鬼の血を取り込んでもらって、二人が死ぬ未来を変えたこと。


 彼女があと2時間ほどで起きなければ確実に吸血鬼になってしまうことなどを話された。


 そのほかに聞きたいことはと言われて、いろいろと質問した。


 もし鈴が吸血鬼になったときどうなるのか、俺も吸血鬼になれるのか、どうして吸血鬼になってしまうのかなどを聞いた。


 はじめは吸血鬼になれるのかどうかの部分だけは答えてくれなかったが、何度も頼み込んだら教えてくれた。


 そして、俺は決めた。


 もし鈴が吸血鬼になってしまったら、その場合は俺も吸血鬼になってやろうと、決意したのだった。

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