第4話 吸血鬼化
そこそこ書き溜めができてしまったので消化します・・・w
あとポイントが増えててすごくうれしかった・・・
こんなつたない小説でもポイントつけてくれてありがとうございます。
4話も楽しんで読んでくれると嬉しいです。
第一章
第4話 吸血鬼化
私はそれを自分の太ももに押し付けて、吸血鬼の血を自分の中に取り込んだ。
本当に身体能力が上がるかもわからないし、本当は毒なのかもしれない。
それでも私だって、樹希が死ぬようなことは嫌だ。私だって樹希を守りたい。
そう思った瞬間、いきなり頭をガツンと殴られたような衝撃がした。
くらくらしつつもおとなしく衝撃が収まるのを待った。
衝撃が収まって目を開けて樹希を見た。
すると目の前では樹希が驚いた目で私を見ていた。
どうやら私の瞳は紅くなっているみたいだった。
樹希の瞳越しに私が見えて、その私は瞳が紅く光っていた。
「・・・な、鈴・・・?」
「ごめんね、本当はあの夢の男の人に、切り札として今のを渡されてたの。でも、さすがに言えないよね。こんな風になるのは。」
そう言い終わった直後、後ろの家が崩壊した。
夢と同じく破片がこっちに飛んできていた。
「・・・ねえ、鈴・・・お前は鈴なんだよね?」
「そうだよ。何があっても鈴だから。だから・・・信じてほしいな。」
「わかった。信じる!俺は何すればいい!?」
私は短く、隠れてといった。
そして、目前に迫っていた破片にキックを繰り出した。
バァン!バラバラ・・・
自分でもすごく驚いたけど、めちゃくちゃ強くなっていた。
確かにこれは人外並みのパワーだねなんて心で思いながら、化け物がいる場所を探そうと軽くジャンプした。すると軽くのはずが3メートルほどの高さまでジャンプした。
でもそんなことにいちいち驚いていたらキリがないと割り切って、あたりを見渡す。
すると、家の真ん中にあの物体はいた。
もしかしたらできるかなって思って空中でそのまま体勢を変えて、空気を蹴った。
一直線にあの物体のほうへと向かう私の体から察して、本当にできてしまったんだ・・・と思うのもつかの間、触手が物体から出てきた。
物体めがけて空気を蹴ったから物体にぶつかりそうになったけど、その力を使って体勢を変えてそのままキックの体勢に。
「うりゃあああああああああ!!!!!」
奇麗にキックが炸裂して物体は少しだけ吹っ飛んだ。
そして着地と同時に周りに迫ってきていた触手を避けず、また本体である物体に突撃する。
格闘はまるっきり素人なはずなのに、体が覚えてますと言わんばかりにキックや突きを繰り出す。
触手が後ろに迫っているのが分かっていたので、その場でブレイクダンスなどでよく使われる頭を軸とした回転技を使った。
そしてその体勢のまま腕の力だけで怪物の上にジャンプ。
足が下に来るようにもう一度空中で体制を変えてまたキック。
今度は少し後ずさりして倒れた。
そして私も少しだるくなってきていた。
多分、あの血液の力がなくなってきているんだと思った。
じゃあもう逃げるしかないと思い、私があの注射を打った場所までジャンプ。
「樹希、私につかまって!!」
陰から出てきた樹希を背負って高速ではしる。
多分40キロは出てるかな・・・なんて思いながら、必死に物体から逃げる。
何気なく触手が私の足にからもうとして来たり、樹希を引きはがしにかかったりしようとした時はジャンプや横にシュッっと移動して逃げ回る。
ふいに、奇妙な鉄の匂いが私の鼻を突いた。
私は咄嗟にその匂いがする方向へと体を向けて、どんどん逃げる。
少し走っていると強烈な鉄のにおいがして私は顔をしかめたけど、目の前には腕から血を垂らしている男の人が。
その男の人の瞳は紅くなっていて、きっとこの人が私をいざなってくれたんだと確信した。
「・・・ああ・・・鈴さんですね。良かった。あれのおかげで匂いが辿れましたか。良かった。それではもう、休んでいてください。後ろの人も、鈴さんを介抱してあげてください。それでは、行きますよ。」
そう言われたのでだいぶ後ろに下がって休むことにした。
「・・・・・・ねえ、樹希。私のこと、怖くないの?」
休んでいる間、樹希はいろいろしてくれた。
興奮してないか聞いて来たり、落ち着かせようと抱きしめてきたり撫でたり、挙句の果てには膝枕までしてくれていた。
でも、怖がってないか、私はかなり不安だった。
「・・・なんで怖いなんて思うんだよ。本当なら俺はお前もろくに守れずに死んでたんでしょ?なら、今ここでこうやってしていられるのはあれを使って助けてくれた鈴のおかげだから。本当は俺が守りたかったんだけどな・・・。でも、感謝以外に何か感情を抱くなんて今の俺にできないよ。」
そう言われて、とても嬉しくなったと同時に不安が解けた私は泣き始めてしまった。
わんわん泣いて泣き疲れて、私はそのまま眠ってしまった。
目が覚めると、病院のようなところに寝かされていた。
そばには樹希がいた。
「・・・たつ・・・き・・・ぇ?」
声を上げようとして、唇を動かして樹希を呼ぼうとした。
すると、唇と歯に違和感。
自分で歯を触ると八重歯ができていて、しかもとても鋭かった。
少しでも力を入れると、それこそ指なんかにはすぐに穴が開きそうなほどに鋭い牙のような八重歯ができていた。
私はすぐに思った。吸血鬼化してしまったんだと。
泣きそうになるのをこらえて、樹希を起こした。
「樹希、樹希!」
「・・・んん~、ぇ!?」
「樹希おはよう。」
「ぁ、おはよう・・・!?起きたの?!」
「うん。起きたよ。おはよう。」
「・・・・・・よかったああああ・・・」
まだ樹希には気が付かれていないみたいだったから、そのまま隠そうとしたとき、樹希の後ろのほうにあったドアからあの男の人が来た。
「・・・目が覚めたみたいですね、鈴さん。」
「はい。おかげさまで元気です。ありがとうございました。」
「いいえ。それは一応置いておきましょう。樹希さん、今の彼女を見て、どう思いますか?」
「・・・とても、きれいになりました・・・吸血鬼化してしまったら、こんな風になるんですね。」
私は樹希から吸血鬼化という言葉を聞いてくらくらしてしまった。
「・・・ぇ?待って、なんで吸血鬼化してるのに気が付いたの!?何で驚かなかったの!?」
「それは私が事前に説明したからですよ、鈴さん。」
私はさらに混乱した。
「ああ、そうですね。あの日から1週間たっているんですよ、鈴さん。貴方はその1週間で肉体が変異し、吸血鬼化してしまいました。1週間という期間は普通の吸血鬼化の期間です。次の日に目が覚めなかった時点で一週間の吸血鬼化が確定していました。なので必死に鈴さんのことを聞いてきた樹希さんには、あなたが吸血鬼の血を取り込んだことやあなたが吸血鬼になってしまうことなどすべてを話させていただきました。」
「・・・つまり、5%を引いてしまったということと、それを樹希は知ってるってことでいいの?」
「・・・そうなります。本当に申し訳ありません。」
いや、誤る必要はないと言いたかった。私が覚悟して、あなたの血を使ったんだからって。
でも、なぜか言えなかった。涙が込み上げてきた。
「・・・あああ、ああああああ・・・」
「鈴・・・」
樹希が抱きしめてくれた。言わなければいけない。樹希には、言わなければ。
泣きながら私は言った。
「・・・ねえ、樹希・・・っ」
「なに?」
「わ、私、吸血鬼になってしまったときのっ、ことも考えてたっ。それで、それでね・・・っ」
「うん」
「私、自分勝手だけどっ、樹希と一緒にいたいから・・・っ。だから、樹希に私の血を飲んでほしいのっ。」
すると樹希はその言葉を待っていたかのようににっこりと笑った。
「・・・もちろん。俺も、鈴と一緒にいたい。」
「・・・なんで驚かないの・・・?」
「全部、この人に聞いたから。鈴がもし俺から離れるって言ったら、無理やり噛み千切ってでも鈴の血を飲もうと思ってた。」
「っ」
私は、樹希が受け入れてくれた嬉しさと、私が吸血鬼になってしまって巻き込んでしまったという罪悪感でまた泣きまくってしまった。
その間、樹希はずっと頭をなでてくれていた。