第4話 出会い、そして名前
· 僕は歩いた。冒険者ギルドを探してとにかく歩いた。しかし一向に冒険者ギルドに着かない···そう僕は迷ったのだ。いつの間にか気づけば薄暗い路地裏に来ていた。うん···どうしようか
と、そこで話し声が聞こえてきた。男の人と、女の人の声のようだ。道でも聞こうかと思い近づいてみたのだけど···
「えっと···これは·····どうしたのですか?」
近づいたら囲まれました。
「どうしたもこうしたもねぇ、貴様、なぜここをしっている?」
「えっと道に迷ってしまって···よければ道案内してくれます···?」
うわー···怖い人たちに出会ってしまった、道案内だけでよかったのに···ここはこいつらのアジトかなんかなのか?···しかしそこの後ろにいる赤髪で、僕と同い年ぐらいそして髪が後ろに三つ編みで、整った顔のかわいい女の子はだれだろう?
「えっと道案内の前にそこの女の子は誰ですか?少し困ったような怒っているような顔をしていますが」
「そんなことはどうでもいい!」
男が答えた。しかしそれと同時に
「返してお母さんに貰った私の宝物を!」
この言葉で僕は瞬時に事態を把握した。ようするにそこの男たちはそこの女の子一人に群がってその娘の物を奪ったということ。そこの女の子はそれを返して欲しいと足掻いているというところか···あっ、解説している間に女の子がある行動にでた。
「しょうがありません。あまりこの手は使いたくなかったのですが···私はこの町の領主、ブィッシュ·ドラゴノードが娘、エレン·ドラゴノードです。あなたたち、私や、私の物、この町の人たちを害する者であればただではすみませんよ!」
脅しのつもりだったのだろう。だがかえって逆効果だったようだ。
男は
「そうかお前は領主の娘だったか、だからこのような高い物を持っているのか···あっ、そうだお前ら」
そこで男は悪そうな顔···いや悪い顔をして言った。
「お前らこの領主の娘を人質にとって領主さんと取引したらいくら貰えると思う?」
「そりゃ金貨1000枚ぐらい貰えるじゃないですかね~ww」
「そりゃ違いねぇww」
金貨1000か計算すると10億円ほどか···うわっすごい金額だ。どこのお嬢様かよ
でもこの状況は悪いなんとかせねば
「ねぇ、そこの領主の娘さん?ちょっといいかな?」
「なっ、貴様いつの間に!?」
僕は無視して言った。
「僕があなたの宝物と、あなたを助けてもいい。ただし条件がある」
「ああん、調子のってんじゃねぇぞ」
そこで男が口をはさんだ。
しかし僕は動じないぞ。なにせこの町に来る前にどれだけの力をもらったのか試したからな。さて、どうしたものか···
そこまで考えたところでお嬢様が口を開いた
「あなた、そのような体であの人たちを倒せるのですか?」
なるほど、確か元いた世界の僕なら無理だろう。しかし今は違う。
「倒せるかどうかはわかりません。しかし僕はこの世界に来ていきなり野宿かもという危機と、食べ物が無いという危機に陥っているのです。考える余裕はありません」
そう告げた瞬間、僕は男たちに向かって走った。
「なっ、速い」
腹パン、肩パン、すねキック
「グハァッ」
「痛って」
「足がぁぁぁー」
ところどころでいろんな声が···まぁ僕がやったんだけどね。
「お、お前は何者だ···」
「僕ですか···」
あれ?僕の名前は?·····僕が考えている間に
「ハッ、隙ありだ」
男が顔を殴りかかってきた
「遅い」
僕にはそれがスローモーションに見えた。遅すぎる。
僕は普通にかわし、男のうなじに手刀をいれて気絶させた。
「あなたはいったい···」
お嬢様は驚き、男の仲間はびびっていた。
戦う意思のない奴とは戦う気はない。
僕は振り返りお嬢様の手を取り路地裏から抜けた。
「約束どおりあなたと、あなたの宝物は回収しました。お願いを聞いてもらってよろしいでしょうか?」
「!?わかりました。約束ですものね。あなたのお願いとは何ですか?お金ですか?貴族の家紋ですか?それとも···」
そこまで言われて僕は正直に言った。
「いえ、僕は、この町のギルドへ案内してくれればそれで。あっ、でもお金をくれるのであれば銅貨1枚貰えると嬉しいです。なにせ僕お金1円···じゃなかった、銅貨1枚たりとも持っていなくて宿に泊まれなかったんです。なので銅貨1枚貰えると嬉しいです」
「えっ?銅貨1枚ですか?」
「はい、1枚です」
「わ···わかりました。はい、銅貨1枚です」
そう言われ差し出された銅貨を受け取った。
「ありがとうございます!はぁ、よかったこれで野宿と、ご飯の危機は救われた」
あっ、安堵のあまりつい本音が、そこでお嬢様が口を開いた。
「銅貨1枚でここまで喜んでくれる人は初めて見ました」
なぜか驚かれた。しかしそれと同時に
「しかし明日からはどうするのですか?」
「あっ、それなら大丈夫です。明日からはギルドで稼ぐので」
「そうですか、あなたの強さでは簡単にモンスターに勝てるでしょう」
こうしてその他の会話をしてギルドへ案内してもらった。ところどころで、顔を赤くしたり、チラチラ見てきたり···かと思うと目が合うと急に反らしたり、なにかとかわいいなこのお嬢様は。しかし、残念だがもうお別れだ。外も暗くなってきたしな。
「では、ギルドの案内ありがとうございました。おかげで明日からは安心して暮らせますよ」
「そうですか···それはよかったです」
「では、僕はここらでお別れします。気をつけて帰ってくださいね。お嬢様」
「エレンです」
「え!?」
「エレン·ドラゴノード、それが私の名前です」
あっ、名前か、少しビックリした。
「わかりました、エレンお嬢様」
「エレンでいいです」
えっーと、お嬢様を呼び捨てはダメですよね···考えていると
「お嬢様なんて言葉いらないです。それでもお嬢様と呼び続けるのであれば領主の娘を止めます」
え!?止める?そんなことできるの?···てか何この展開??それはさすがにまずい
「わ、わかりました。エ···エレン」
「敬語は要りません」
「わかったよエレン」
そういうとエレンは機嫌を良くし言った。
「はい!···そういえばあなたの名前聞いていませんでした」
「僕の名前ですか···」
そう、僕の名前なんだ···思い出せない
「どうかしたのですか?」
考え込む僕の姿を見てエレンは心配そうに見つめてきた。
僕は正直に言った。
「えっと、僕···名前覚えてないんだよね」
「え!?覚えていないんですか?」
エレンは驚いた。まぁそれはそうだろうね。なんだってそんな人と一緒にいたんだから···
「うーん、そうですね···では私がつけてあげます。名前」
「え!?それはありがたいのですが···」
"良くないでしょう"を言いかけた瞬間エレンは言った。
「なら問題ないですね」
え!?そういうもんなの?まぁつけて貰えるのはありがたいしそうしてもらおう。
「では、シルフォード·ドラゴノードでどうでしょう?今日から私たちは家族です!」
は!?いやいやそれはダメだ。知らない領主の家族になるのは、ましてはエレンが勝手に決めるのはな···
「エレン流石にそれはダメだよ。僕はこれから冒険者になるんだ。冒険者になって何をするかわからないし、どうなるのかもわからない。そんなことで領主さんに迷惑をかけるのもいけないしね」
「そうですね···確かに度がすぎました。うーん、私の名前に···しっくり···のが···いいな」
最後らへんはぶつぶつ呟いていてよく聞き取れなかった。
「決めました。あなたは今日からシルフォード·システリアを名乗りなさい」
「シルフォード·システリアですか···わかりました」
「じゃ、よろしくね、シル」
ん?よろしく?···社交辞令か?とりあえず返しておいたほうがいいよな。
「よろしく、エレン」
こうして僕とエレンは出会い、僕に名前がついた。
よし、明日からこれからの生活のため頑張るぞ。
そう心に誓ったその夜、夜中までゲームをしてしまった···
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