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友達



学校に着くと、既に瀧阿が失踪したことが何処からか流れたらしく噂が広がってしまった後だった。僕や叶士も瀧阿と最近親しくしていたこともあり学校に入るや否や直ぐに沢山の生徒から詳細を問われたものの“わからない”の一点張りで通してきた。



しかもその後に放送で職員室にまで呼ばれて先生たちにも話を聞かれることになった。それでも一度話せば何処から情報が漏れるかわからない。家でそう話し合っていたから僕と叶士はお互いにまだ見つかっていないし詳しいことはわからないと伝えるとすぐに解放された。



『凄いね、もう学校中の人間が瀧阿がいなくなったこと知ってるんじゃないかな』



『普段ならここまで大事にはならねぇだろ…事件続きだから、どうしたって皆気になるんだろうな』



誰もが思うのだろう、きっと…次は瀧阿が死ぬのかと。



僕だって一昨日はそう思っていた。何時間も連絡がとれなくて、あの踏み躙られた花を見て…もう会えないんじゃないかと。瀧阿を大切にしていたであろう栄火君さえ出てこなくて、もう駄目なんだと思ってしまった。



『……瀧阿は絶対、死なせない。もう誰も死んでほしくない…』



あの笑顔が二度と見られないなんて、もう僕らの妹のように可愛がっている瀧阿がいなくなるなんて



もう、耐えられないだろうから。



『当たり前だろ。瀧阿だけでも、今度こそ…守ってみせる』




職員室を出て叶士と廊下を歩いていると、ふと近くの部屋の扉が開いて中から見知った女子生徒が出てきた。


保健室から出てきたのは瀧阿の友達 十華ちゃんだ。



『では九重(ココノエ)さん、あまり無理をしないようにね』



保健室の中から聞こえる神之井先生の声に返事をして扉を閉めた後、十華ちゃんは僕らに気付くとハッとしたように目を見開いた。



『…おはようございます。丁度、伺おうかと思っていたんです』



『おはよう。瀧阿のことだね?』



僕がそう問いかけると彼女は頷き、ポケットからスマホを取り出した。



『瀧阿は無事なんですよね…? 何度連絡しても返事ないし…電話も。あの子に何か悪いこと、起こったりしないですよね!』



泣き声混じりの声で十華ちゃんは僕らに詰め寄った。瀧阿には友達にも居場所を知らせては駄目だと夜丸君から言われている。無事だと知られれば居場所も聞いてくるに決まっている…少しでも安全性を高めるために友達と連絡をとらないようにしているのだ。



『あの子は何も悪いこと、してないわ…。誰かに恨まれるなんて有り得ない。なのになんで…なんであの子の周りで! 何も悪くない瀧阿を巻き込もうとするのよ…』



あの子は悪くないのに



そう小さく呟いた十華ちゃんは、眼鏡を外して目をゴシゴシと乱暴に拭うと今度は力強い目で僕らを見た。



『先輩方は私よりも落ち着いています。瀧阿を見つけてるんじゃないですか? お願いです…あの子の無事を確認したいんです! どこにいるんですか?!』



『…十華ちゃん、瀧阿は無事だよ。それだけは君に伝えておくね』



兄貴! と叶士から批難の声がしたが、それでも友達である彼女に何も伝えないのは心苦しかった。すぐにほっとした表情を浮かべる彼女が口を開く前に僕は続けた。



『居場所を伝えるわけにはいかないんだ。少し事情があって教えられない。でも約束するよ…瀧阿は必ず僕らが守るから、全てが終わったらまた…君の元に瀧阿を行かせるよ。だからそれまでは待っててほしいんだ』



十華ちゃんはすぐには何も言わなかった。それでも彼女はわかりましたと答えると廊下を歩き出して思い出したように僕らを振り返った。



『あの子、早くにお母さんを亡くしてお父さんも海外に赴任してるんです。本当はお父さんと海外に行くはずだったけど…海外で大規模な事件があったとかであの子は日本にいるんです。


ずっと言ってたんですよ。お兄ちゃんやお姉ちゃんが欲しかったなぁって…よく言ってた。あの子はいつだって悪くないのに理不尽にあの子は追い詰められる』



『でもここ何日かは、違います』



振り返った十華ちゃんは、嬉しそうに顔を綻ばせていて何よりも誰よりも楽しそうに話すのだ。


まだ入学して数ヶ月……そんな短い間に、こんな風に思ってくれる友達が出来たのかと。やっぱり君は……そういう子なんだ。



『お兄ちゃんが沢山出来たみたいで嬉しいって。普段会えないお父さんを思い出せる、優しいお母さんにまた会えたみたいって。みんなが良くしてくれて幸せだって、あの子言ってました。


だから…だからお願いします。あの子のこと…どうか』



そう言って十華ちゃんは去って行った。


初めて瀧阿の気持ちを聞いて、なんとも落ち着かない気持ちになる。隣も同じだったらしく二人してニヤニヤ笑う僕らは心底気持ち悪い兄弟だったに違いない。



ポケットからするバイブの音に気付いてスマホを起動すると、一件のメールが入っていた。それは匣辺楽さんからのものでたった一言シンプルに



【わかった】




ハッとして振り返ると、そこには背を向けて歩く匣辺楽さんの姿があった。どうやら人払いをしながら話を聞いていたらしく僕の視線に気付いて振り返った彼女は一つ頷くと階段を上がって行ってしまった。



どうやら匣辺楽さんも無理に瀧阿の居所を知るつもりはないらしい。ずっと瀧阿を探してくれていたし、匣辺楽さんには後でこっそり教えた方がいいかな? と叶士に提案するが、秒で否定されてしまうことになる。



『今日は学校でもかなり騒がれてるから瀧阿のとこは行かないでおこうか…』



『そうだな。明日になれば少しは落ち着いてるだろ。瀧阿に暇つぶしに本でも差し入れてやろうかな…』







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