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臆病か、勇気か



『タキアンを狙っている者がいるのは確かだよ。恐らく統木栄火君を殺害した犯人もまだ町にいる可能性が高い…発展し始めたとは言え、俺たちが網羅(もうら)する町だ。それらしい人間が町から出た様子は見受けられなかったよ。


だから俺たち裏側は、君たちと協力関係を結びたい。君たちも色々事情があって犯人を探してるんだろう? うちもトップが望むなら手駒の俺らは従うしね。タキアンを攫ったのは犯人から彼女の行方をわからなくするためさ。タキアンの行方がわからなくなれば、奴は必ずなんらかの行動に移すはずさ……まずはそれを待つべきだ』



朝狩さんの目線を追えば、そこには白田君と黒井君と共に楽しげに話をする瀧阿の姿がある。


僕らの視線に気付いた瀧阿がこちらに来ようとするのを二人が必死に気を引かせて止めようとするので、瀧阿も諦めてこっちに手を振るとまた三人仲良く話し出す。



『もう二人死んだ。…一人は栄火。もう一人は、志島だ。警察は事故の方で捜査を続けてるらしいがな。




志島は殺された』




『なんだとっ……?!』



夜丸君の言葉に思わず兄さんが身を乗り出してその答えに問い詰める。今まで事故だろうとされてきた志島君の死が、事件だった…。思わずそうでなくてほしいと願っていた思いが砕かれるように夜丸君から告げられること。



『志島が事故死したとされる場所はアイツにとって何の用もないだろう場所だ。家からも遠いしあの辺りにいたなんて話は一度も聞いていない。俺たちと一緒になって栄火をいじめていた取り巻きの一人だったが、アイツ自身が栄火に手を上げたことはねぇよ。ただ連んでただけ……むしろアイツは俺が警察に疑われ始めてるって気付いて何とか疑いを晴らそうって警察にも話すって言ってたらしいんだよ。



……志島は警察に話そうって仲間に相談した日に死んだ。相手にされるわけないって皆が止めたけど、それでも俺がやってないのが真実だからって息巻いてたらしいんだ』



『犯人にしてみりゃ、俺ほど栄火を殺したのに都合のいい人材もいないだろ』




事故死に見せかけた殺人




また新たに浮かび上がる黒い影に、僕はもう……耳を塞ぎたかった。



『…雨座瀧阿を、ここで預からせてくれないか』



『瀧阿を……?』



その問いかけに、夜丸君は深く頷いた。



『俺も暫く身を潜める。雨座も同様に狙われてる今、雨座を狙っている奴は居場所がわからなくなったはずだ。ここは…アンタらも身をもって経験したと思うが隠れ場所ならうってつけだ、簡単には割れねぇ』



確かにと感心している僕とは反対に、兄さんは暫く腕を組んで思案している様子だ。夜丸君が嘘をついている可能性もあるが、今までの対応を見ると瀧阿に対しては彼も誠実に見える。僕ら同様に守りたいという意思がなんとなくだけど伝わってくるのだ。



『兄さん……』



だから僕は、彼らに任せても大丈夫だと思うのだ。僕らの側では危険なら……彼女を守るためなら、そうするべきだろう。


その一声に負けたのか兄さんも渋々同意し、瀧阿はここ……棚蔵へ預けられることとなった。



『心配は要らねぇ。棚蔵に入る時も客には見せてない。知ってるのはここにいる人間と後は僅かな奴らだけだし、そいつらなら信用してる。マスターにも話を通すから衣食住全て任せて問題ない…あの二人もここに住んでるから、退屈もしないはずだ』



『セキュリティも万全にしておくから安心してよ。タキアンの身の安全は保障するし、俺たちは犯人を突き止めるだけだ』




瀧阿には話せる限りのことは話した。少し不安そうな顔をしていたが、また顔を出すしメールもするよと言うと顔をほころばせてうん、と頷き白田君と黒井君と一緒になって僕らを見送ってくれた。



『私が狙われてるなら、先輩たちにも被害が出るかもしれません…そんなのは絶対に嫌です。だからここで大人しく待ってます…先輩たちや警察の方たちが頑張ってくれてるから、出来ることがあったらいつでも言って下さいよ?』



白田君と黒井君にも、どうか瀧阿を宜しくねと頼むと彼らは僕たちには目も合わせなくて言葉も話してくれなかったけど小さく……とても小さくだけど首を縦に振り、すぐに夜丸さんの後ろへと走って逃げて行ってしまった。



『悪いねー…あの二人訳ありで。自分より背の高い人間や特に知らない男なんかには全く近寄らないんだ。


でも大丈夫。タキアンのことは二人して大好きらしいから、ちゃんと守ってくれるよ』





帰りも来る時と同じく朝狩さんに案内してもらいながら元の場所に戻って来た。まだ二度通っただけだが、全く覚えられる気がしない。瀧阿と約束した手前、なんとか覚えたかったが……どうにも難しく兄さんも同じくだった。



『流石に無理だよねー。じゃ、俺のアドレス送るから来たいときは連絡してよ。でもつけられる可能性もあるし頻繁(ひんぱん)には来れないからね? 今まで裏側に来なかった君たちが突然通うようになったら怪しまれる。だから捜索を(よそお)って来るように…約束ね?』



『わかりました。


…あ、あの自己紹介まだでしたよね。そっちばかり疑ってしまって申し訳ないです! 僕は春雛 叶一郎です。まぁご存知かとは思いますけどね…』



『兄の星一です。もう一人末の弟がいますが、そっちの夜丸君と同級生だし紹介するほどじゃないな…では、瀧阿を宜しく頼む。こちらも預かった子をそちらに頼むのは心苦しいが…こうなってはそうも言ってられないからな』




こうして僕らは、瀧阿を置いて二人家路に着いた。父さんと母さん、そして叶士には瀧阿のことは包み隠さず話して了承された。


叶士にも夜丸君のことを話したら警察に追われてることや裏側を統べる人物だったことに驚いた様子だったけど夜丸君なりの事情も話すと少しは受け入れられたらしい。



『夜丸が瀧阿を(かくま)ってくれたのか…。確かに瀧阿は隠れてた方がいいよな…何かあったら、嫌だし…』



『…うん。すぐ会えるよ、メールも出来るし何かあっても側に夜丸君たちがいるからさ』




夜が明けて、次の日にまた捜索の名の下に僕らは瀧阿へ会いに行った。棚蔵でも不自由なくやっていると瀧阿から聞き、叶士は夜丸君と少し話し合うとなんとなくお互い仲直り出来たのかこの前のような険悪(けんあく)な気配はなくなった。


理由を知り、守るべきものが出来、それが同じだったせいもあるのか。まだ夜丸君を思い出せていない瀧阿は呑気にも、白田君や黒井君にせがまれて遊び疲れてしまい三人仲良く昼寝をしている。




平和な休日の後、瀧阿のいない登校をした僕ら。学校では何処から情報が入ったのか……一年生の女子生徒の失踪が密かに(ささや)かれていた。





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