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夜丸の事情



飛尾 夜丸


弟のクラスメートで、喧嘩っ早い性格で実力もある。地主の家族や政治家もいてかなりのお金持ち。故に学校で彼に逆らえる者はなく、二年生では夜丸君が圧倒的に影響力のある人物だ。



そんな彼が裏側のトップまで務めていたとは知らず僕は勿論、兄さんもかなり驚いていた。



夜丸君は室内に入ると真っ先に瀧阿の元へ向かい、一言二言交わすとすぐに僕らの方へやって来た。それに続いて瀧阿と白田(シロタ)君に黒井(クロイ)君も寄って来て、やっと今日起きた事の次第が話された。



『じゃあ、無事に夜丸さんから許可も貰ったし今日の事を話そうか。いいんだよね?』



『…ああ』



朝狩さんがスマホを弄ると、その画面を僕と兄さんに見せてきた。そこに写っていたのはとても綺麗な女性とまだ幼さの残る夜丸君だ。



『夜丸さんと、夜丸さんのお姉さん…飛尾(トビ) 夜津芽(ヤツメ)さんだよ。腹違いの姉弟だったんだけど、夜津芽さんはとても面倒見のいい人でね。本当の姉弟じゃないことなんて気にせず、夜丸さんと仲が良かったんだ』



『はぁ…でもなんで夜丸君のお姉さんの話なんて…』














『行方不明なんだよ。不確かだけど、いなくなって二年は経ってる』



ハッとして夜丸君を見るも、彼は瀧阿の方を見ながら会話に耳を貸さずにいる。僕らは最近仲良くなった瀧阿がいなくなり、一日中心配してずっと気が気じゃなかった。気持ちばかりが焦って憔悴して……それでも見付からなかった。


朝狩さんに案内してもらわなければきっと……会えたかどうかもわからない。



彼は、少なくとも半分は血の繋がったお姉さんと二年も……会えていない。無事さえ、確かめられずにいる。





『…俺が』



ふと立ち上がった彼は、静かに歩き出して瀧阿の前に立ち止まる。小さく……上げては下ろし、上げては下ろしていた右手をゆっくりと瀧阿の元へ持っていく。何故か震えるその手を見て、瀧阿は夜丸君を安心させるようにその手を両手で包んだ。



『…栄火をいじめ続けたのは。暴力を振るい続けたのは…』



悲しげに笑う瀧阿を見て、彼は顔を(しか)めながらもその手を振り払うことなく……真実を語る。



『…アイツが、姉さんがいつも持っていた昔俺が姉さんに贈ったネックレスの欠片を…一年の初めに俺に渡して来た』



力を失ったようにしゃがみ込み、涙を流しながらも瀧阿の手を握り続けた。怒りと悲しみ……あらゆるものが心に残った夜丸君は、叫ぶように言った。



『アイツは…っ! 何度問いただしても姉さんのことを喋らなかったんだ…。何度も何度も姉さんのことを問い詰めた……でも、何も言わねぇっ! その内、殴って痛めつければ吐くと思ったんだ。それでも何も言わなくて……やり過ぎてたのは、わかってんだ……でもっ……



アイツ以外姉さんのことを知ってる奴は居ねぇんだよ! 姉さんがいなくなって母親は都合がいいからって警察も動かさねぇ…アイツに聞くしか、なかったんだっ……』



ボロボロと涙を零す夜丸君を見て、瀧阿は静かに彼を連れて立ち上がると僕らから離れて黒と赤のソファーへと移って行った。白田君と黒井君もおろおろしながら朝狩さんの方を見ると、彼が頷くのを見て慌てて彼らも二人を追って行った。



『君たちも見ただろう? 裏側にいた警察が夜丸さんを探していたのを』



『ああ。…やはり栄火君の事件か?』



そうだ、と朝狩さんが肯定する。苦々しい顔でカップに淹れられた水面を見て……溜息を吐いた。



『夜丸さんは例のあの日、夕方頃に栄火君に集団で暴行を加えている。


…こんなことを言っても今更信じてもらえないと思うが夜丸さんはあの日いつものようにお姉さんのことを聞いて、口を割らないと思ってすぐに帰って来てる。取り巻きが必要以上に暴行を加えたとは聞いたがね…。俺に言わせるなら、痛い目をみるとわかって何故…栄火君は何も言わなかったのか不思議だよ。今ではもう…栄火君が亡くなって一つの手掛かりもなくなってしまったしね』



夜丸君が栄火君をいじめていた理由は、お姉さんの手掛かりを聞き出すため。何度も暴行を加えられたにも関わらず栄火君は何も言わなかった…そして事件が起きた日にも暴行を受けたが、当の夜丸君はすぐに帰ってしまった…。



そして暴行のことを警察が知り、夜丸君を追っているということ。



『…なるほどな。しかし、わからないことがあるんだが…』



首を傾げる朝狩さんに兄さんは離れたところにいる二人を指差す。


白田君がコーヒーを持って慌てて駆けてきて、黒井君は心配そうにタオルを差し出し、瀧阿は何も言わずに夜丸君の背中をさすってやっている。



『何故、瀧阿を誘拐した?


それに…そんな事情を抱えている夜丸君がどうにも瀧阿に心を許しているような気がするが』



姉に似ているのか? と兄さんが問えば、朝狩さんは全く似ていませんよと苦笑いで答えた。確かにさっきの写真を見ても二人が似ているとは思えない。夜津芽さんは綺麗で大人っぽいが、瀧阿はまだまだ幼さ残る可愛らしい系だ。



『昔ね……会っているらしいんです、あの二人。状況的に瀧阿ちゃんは夜丸さんを覚えてなかったらしいけど、夜丸さんの方はしっかり覚えてた。だから彼は彼女を守ってるんですよ』



『思い出の女の子で、夜津芽さんの何かを変えた女の子らしいんで』





次話は、幼少期 飛尾夜丸 編です。瀧阿との出会いです。


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