八國の変化
『黙祷』
山に囲まれ、少し発展してきた故郷だった。
静かで自然に恵まれているのが唯一の取り柄であり生まれ育った平和なこの地が好きだ。だからこそこの事件は平和ボケした僕らにはあまりにも非日常的であり、信じられない出来事だった。
八國学園高等学校 2年3組 統木 栄火
6月20日早朝 八國駅近くの草叢にて統木栄火の死体が発見された。
殺人事件と断定され、十数年ぶりの殺人事件が起きた事実に住民たちは愕然とした。殺されたのはまだ高校2年生の男子生徒。若すぎる命が何者かによって奪われたのだ。
『亡くなった生徒、キョーの弟と同じクラスだったんだって? 酷いよな…まさかうちの学校の生徒が殺されるなんてよ』
僕の名前は春雛叶一郎
八國学園高等学校三年で弟は叶士。叶士は亡くなった統木君とはあまり親しくなかったらしいが、やはり落ち込んでいたようで朝は珍しく僕と一緒に登校したいと申し出るほどだった。
『信じられないよね…叶士も落ち込んでてさ。いつも1人でさっさと学校行っちゃうくせに今日は兄貴と行くって待っててくれたよ。殺人だっていうし怖いもんね…暫くは一緒に登校しようかな』
『それがいいって。聞いたろ? 学校付近の自治体が登下校の見回りするってさ。殺人事件なんて何十年も起こってなかったから見回りなんて殆どしてなかったけど、殺されたのがまだ子どもだからな。先生たちも慌ててパトロール強化してるよ』
統木君の事件について本当に少し集会で話されたが殆どニュースで見たのと同じ内容だ。深い部分は全く話されていないけど、やはり殺人事件だった。
つまり、統木君を殺した犯人がいる。しかもそいつはまだ見つからずこの近辺に潜伏している可能性があるというのだ。パトロールせずにはいられないし、生徒は1人で登下校しないよう先生たちから話が伝わった。家の近い者同士がグループを作り、教師或いは保護者…それでも足りない場合は学校関係者の大人が着くこと。それを最低でも一週間は続けたいとのことだった。勿論、保護者からの送迎が出来るならそうしてほしいとのこと。実際に被害者が出ているため、保護者側からは特に批判はなくむしろ宜しくお願いしますといった感じだ。
『善介は? 登下校はどうするんだ?』
『うちは送迎だって。親父が仕事の前やら合間に乗せて帰るとさ。キョーんとこは弟いるし2人で帰るのか?』
『それが2人は駄目だって。徒歩や自転車組は大人と一緒が前提らしいよ? だから僕は叶士とどこかのグループに入るのかな。最低一週間の辛抱だしね』
そうして僕はこの日の下校からグループで登下校することになった。
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