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踏み躙られた想い



多くの人手が投入され、瀧阿の捜索が続いた。学校や家の近くの森……勿論瀧阿の家の周辺もくまなく探した。賑わう町の商店街なども捜索されたが見つからず、一向に瀧阿の足取りを掴めずにいた。



『兄さん! 駅の中にもいない…何人か声をかけたけど、誰も見てないって…』



『こっちもだ…。こんなに探しても見つからないなんて……っくそ! 叶、もう一度駅の周りも探しに行くぞ 』



駅から出て、僕はふと昼間のことを思い出した。まだ河原は探していない……もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれない。



そして何より……何故彼は出てこないんだ?



『兄さん、河原! 河原はまだ探してないよ。行ってみようよ』



星一兄さんと河原に向かって走りながら僕はずっと考えていた。何故、栄火君は出てこないのかということ。瀧阿のことを彼が守っていたのは間違いないはずなのに、何故……瀧阿は帰ってこないんだ?



もしかしたら本当は……彼が、瀧阿を守っていたということが……間違っていたのか?



『…これは』



河原に着いて、僕らが見付けたのは()(にじ)られた花だった。



瀧阿が今朝早くから叶士と共に摘んで供えるために大切に持っていた花に違いなかった。明らかに何者かによって意図的に踏み躙られ……バラバラに散らされた花。



『そんな…嘘、だろう…』



星一兄さんが震える手で(すく)った花弁(はなびら)。それを持ちながら辺りを懐中電灯で照らしてみるが瀧阿の姿はなかった。



『ここで何かあったのか…それとも、誰かの悪戯で花だけ散らされた…?』



『わからない…だが、これが唯一の手掛かりとはな…』



荒らされた花を見て、何故だかとても泣きたいほど胸が痛んだ。見れば見るほど花だけじゃない……瀧阿の栄火君への想いまで否定され、踏み躙られたようで嫌だった。



何を知っているっていうんだよ……彼女は何度も苦しんで、誰にも言えないことを一人背負っているのに……。



『父さんたちと瀧阿の友達にも連絡をいれておいた。ここに瀧阿はいない……今は、他を探しに行くぞ』



後ろ髪を引かれる思いで、僕らは河原から離れて別の場所を探しに行くことになった。町外れのほうの捜索がまだとの情報があったので一番近い僕らが向かうことになった。


町外れは正直……あまり治安がよくない。まだまだ田舎の町だから暴走族だの不良グループだのはまだいい方で……。廃墟(はいきょ)なんかもあり、僕も行ったことがないから知らないけどとにかくあの辺りにいる大人も子どもも普通とはかけ離れているという噂だ。



よく“裏側(うらがわ)”と呼ばれている。



『裏側か……。正直、ここは夜は最も来たくない場所だな。しかし瀧阿がここにいる可能性もゼロではないからな』



『僕初めて来たんだけど…なんだか閉まってる店ばかりだね』



我が家では叶士が一番反抗的なイメージが強いが実は三兄弟で一番手のかかったのは星一兄さんである。成人して大人しくなり家事に料理に昔から家庭的なところもあったのだが学生時代は酷かったと両親は語る。家で世話を焼いてくれる兄さんしか知らない僕らだが……兄さんは裏側も何度か訪れていたらしくスタスタと進んで行く。



こんな時まで兄さんは頼もしい、なんて思いながら暫く瀧阿を探して歩き回っていた。



『すみません。少し宜しいですかね』



目の前に現れたのは二人組の男性だった。すぐに兄さんは僕を背後に追いやると二人組の男性と向き合う。



『なんでしょう。今少し急いでいるんですが』



『申し訳ないね、時間は取らせないさ。この写真の男…何処かで見てないか?』



一人の男が出した写真。



そこに写っていたのは、最近会ったことのある人だった。



『……あ』



僕の声に反応した男性が兄さんを躱して僕に近寄ると写真を近くに持って来た。すかさず兄さんが僕と男性を離すよう体を割り込ませて庇ってくれる。



『いやいや、驚かせて申し訳ない。我々はこういう者でね…君、心当たりがあるね?』



内ポケットから出されたのは、警察手帳。彼らは私服警察だったらしい。すぐに警戒を解いた兄さんと僕は改めて写真をまじまじと見る。



『心当たりというか…弟のクラスメートです。昨日は普通に学校で見かけてますが…』



飛尾 夜丸……写真に写っていたのは、叶士のクラスメートである夜丸君だ。


警察が何故夜丸君を探しているのかと疑問に思っていると二人組の警察官は何やらまじまじと僕を見ていた。



『学校で……。君は学生か? こんな時間に、しかもここにいるのは感心しないが…』



補導されそうな勢いに焦って兄さんを見るといなくなった瀧阿の捜索隊に加わっていて、現在瀧阿の身を預かる立場のためこうして探していると説明すると彼らは納得してくれた。



『あなた方は警察官…なんですよね? 瀧阿の捜索は…』



『ああ、すまないね…。部署が違うのと我々の仕事はある事件の捜査なんだ。だから重要参考人である彼を探している。君たちの家族も勿論捜索命令が出ているからちゃんと他の警察官が導入されているからね』



だから君たちはあまり遅くならない内に自宅に帰るようにね、と言われついでにガシガシと頭を撫でられた。どうやら相当不安そうな顔をしていたらしい……でも、ちゃんと瀧阿を探すため警察も動いてくれていて嬉しかった。



『彼を見掛けたら警察まで連絡を。気を付けて探すように』



『では、失礼します。ご協力ありがとうございました』





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