クラン創設
MMOVRって書いてて楽しいんですよね(じゃあ早く書け)
クランの設立に500万円分かかる…と言うのはあくまで「最低金額」の事を指しており、実際は500万以上かける事もある。
にしても、あまりにも高くないか?とも思うだろう。
それには大きな理由があって…
「これください!」
「毎度あり!」
クラン専用移動式集会所…通称「クランギルド」。
その購入費に持っていかれるから。
ちなみにうちのクランは馬車を大きくしたような物になっている。
クランによっては飛行船だったり海賊船だったり…大きいものだと町レベルの大きさのクランギルドが存在するという話もある。
いや、ソレどんなシ〇シティだよ。
「これでクランの仲間入りか~」
「ここまで長かったわね……」
「いや~なんか…すいません」
なんやかんやでこの人達の願いを一瞬で叶えてしまう形になってしまったな。
「そんな謝るようなことじゃないだろう?むしろこっからなんだから」
「ええ、だから胸を張ってください」
ま、そうだよな。クランを建てて終わりなんかじゃない。
これから、クラン限定クエストもクラン対抗戦だってあるんだ。
「よ~し!浮かれてる暇はありませんよ~!まずはレベリングです!レベリング!個人もクランもレベルを上げて実績を見せつけるんです!」
「だな!強くなくちゃあ面白くない!」
***
とは言え、だ。
この人数じゃ無理があるというのが現実。
他のクランだって少なくとも10人程は集まっている。
というか少なくともそのくらい居ないとクランクエストもすぐ失敗するし、対抗戦に至っては参加権がない。
「そこは私に任せてください」
と、ユナがどこからともなく画材を取りだした。
「これでポスターを作るんって募集するんです。そうすれば少しは加入申請も来ますでしょうし…」
「じゃあそこは任せます。俺らはクエスト行ってくるんで」
「んじゃ!行ってくる!」
***
クエストはスライムの討伐。
あの有名なモンスターの討伐なのでそれ以上の説明は不要だろう。
「一応レアドロップのスライムのコア目当てでいきましょう。クランを建てたとは言え、これから金に困る事もありますでしょうし」
「もとよりそのつもりだ!それに、いくらスライムのコアとは言え交換にも使えるだろうしな」
ある程度のレア度のアイテムはプレイヤー間のみならず、NPCとの交換にも使える。
簡単には手に入らなかったり、金での入手が不可能のアイテムは大抵の場合こうやって手に入れる。
到着したのは剣の王国北の平原。初心者向けのエリアではあるが、王国内では随一のスライム発生率を誇る。
「じゃあ一撃で仕留めたいのでバフお願いします」
「あいよ」
本来ならコアを狙えば確実に倒せるのだが、そうするとコアの入手率がゼロになるためゲル状の体にダメージを与え続けるしか入手方が無い。
そこで、戦車によるバフ使ってこちら攻撃力を上げて殴らなければ効率が悪く、途中でバテる。
「ところで、武器は変えないのか?やりにくいだろ」
「あ…っと…」
それもそうだ…けど、
『弱いプレイヤーには興味はないからね…』
強くなりたいからな。
武器で、じゃなくて自らの力でね。
「個人的な趣味趣向ですよ。なので大丈夫です」
「なるほどねぇ。んじゃ気にしないことにするわ」
***
二時間後…
スライムの核が集まった。
その数15。
「二時間でこれだけかよ…」
「レアドロップなんてそんなもんですよ。むしろ多いくらいだ」
「そう、なのか…」
オンラインゲームでは周回は基本だもの。てかそれも知らずに今までどうやって稼いでたんだ?
まさか全部クエストクリアの報酬だけで…?
そう考えると背筋が凍る。
「とにかくこれを売って活動資金に当てましょう」
「普通に拠点で売っていいんだよな」
「ええ。まぁでも普通に売っちゃ意味がないんですよ」
***
「そこの君、このスライムの核はいらないかい?相場より安く…そうだなぁ、白金貨2枚のところを白金貨1枚と銀貨五枚でどうだい?」
「相場より安く!?良いんですか!?じゃあ買います!」
「交渉成立だな」
俺たちの作戦はこうだ。
ゲーム序盤~中盤で武器の強化に役立つスライムの核を初心者に売りさばくという方法。
もちろん普通に売っても面白くない。
「本当にこんなことして大丈夫かよ…」
「でも実際に相場よりは安く売ってますよ。銀貨二枚分」
そう、ちょっとした詐欺である。
初心者に相場を高めに教え込んでかつ本来の相場より安く売る。
買った本人は銀貨5枚分得したと思うだろうがその実、2枚分の得でしかない。
しかもバレても「安くしたこと」には変わりはないので、買った側も「どっちにしろ得だし、まいいか」みたいな気分になって、言及しないだろう。
安く見せることで買いやすくする。いい作戦だと思いませんか?
「罪悪感が…」
「だまされるのが悪いんです。無知は罪です」
「完全に悪役のセリフじゃねぇか…でも良いのか?それでも銀貨2枚損だが」
「良いんですよ。高く売るなんて素人にゃ無理ですもん。高値で買ってもらうより、安く多く買ってもらった方が儲けがあります。それに初心者たちには早く強くなって前線に出てもらわないと」
「さらっと酷いことを…」
「なに言ってるんですか、それがMMOの楽しみじゃないですか」
「そんなもんか」
そんなもんですとも。弱けりゃ使われないってそれじゃ楽しくないでしょう?
***
この日はスライムの核が11個売れた。完売には至らなくとも白金貨11枚と銀貨55枚。16万5000円の儲けだ。
残りを自分たち用にとっておいて俺たちは帰路についたのだった。
次回は帰ります