パーティー 明けの明星
お久しぶりです
所変わりましてギルドの中。
「じゃあ改めまして!俺はコウ、日本のプレイヤーで、このパーティー「明けの明星」のリーダーをやってる。戦車の正位置だ」
「妹のユナです。死神の逆位置で、一応パーティーのサブリーダーをやってます。ゲームは人並みにやってました」
「なははは!俺とは真逆なんだよ!妹なのに!」
とコウは笑って言う。
けどそれってどっちの意味なんだろう…やり込んでいたのか…全くやらなかったのか…前者だとは思うけど。
「お兄ちゃんはもっとゲームをやるべきだったわね。初めてのゲームがアルカナなんて…」
まさかの後者だった!え?あれで初心者なの!?
「んなの大丈夫だって!もう始めて3ヶ月は経ってるしゲームにも慣れたよ」
3ヶ月で慣れた…ゲーム初心者がこのVRゲームで慣れるまでと考えたら現実世界での3ヶ月だろう。
一応説明するがこのゲーム内の時間は現実の4倍のスピードで進んでいる。
つまりゲーム内の一日=現実世界の六時間、リアルを忘れてゲームをできるのもこのゲームのウリだ。
ちなみに俺はどうなのかと言われたら…古今東西、様々なゲームを漁っていた程度のゲーマーである。
因みに今までやったゲームで一番の神作だったと思うのは鬼〇者3である。あのアクションは気持ち良かった。
「あの…そろそろ俺の自己紹介いいですか?」
「あ、悪い、悪いやっちゃてくれ」
「改めて…俺はリオって言います。俺も日本のプレイヤーで、愚者の逆位置です。」
「愚者の逆位置って…あれか…ハズレの…さっきは愚者ってだけで考えてたから…」
「お兄ちゃん…ハズレとか言うと傷つくから止めてあげて…」
すごく悲しいです。ユナさん、フォローありがとう。
「で、話は変わるがうちのパーティーには入るってことで良いんだな?」
「はい!流石に愚者の逆位置じゃソロは無理だと思ってたので」
そいつぁありがたいとコウ。
まーな。このゲームでバックパッカーいなきゃキツいよな。
一応、MMO経験が無い人の為に説明しよう。
MMOゲームは基本素材を集め装備を作る、もしくは特定のクエストで装備を手に入れる等々があるのだが…
まぁ、その素材というのがまた面倒で…
素材を入れておく倉庫、なるものが存在する。
しかし、このゲームでは国内でも地域が別になると倉庫が共有されなくなる、つまり他の場所では倉庫が空になるのだ。
普通のMMOならば倉庫はどこへ行っても共有されるのだが…
それが原因でひとつの場所に留まるプレイヤーも少なくはない。
そんな時、必要になるのはバックパッカーである俺達愚者だ。
愚者の共通スキル「旅人」は、無限アイテムバック。
名の通りの容量無限のバック装備出来るスキルだ。
愚者はステータスが低い。だからと言って需要がないわけではないし、正位置ならば全武器装備可能だ。
…逆位置は、うん。人間の少なさとその使い勝手の悪さで不人気だが。
「でも本当にこのパーティーに入って良かったのですか?もっと強いパーティーやクランもあったのでは…」
いやぁ…十分強いでしょ…あの剛毅の傭兵の力を差し引いても超バフ要員とこのゲームの数少ない回復要員揃ってんだぞ?
簡単に説明するとだな…卵かけご飯作るのに極上食材と一流シェフ揃ってるようなもんだぜ。
強いていうならどんぶりが無いところだろうか。バックパックだけに。
攻撃するのがコウさんだけだから、その分俺もバックパッカー兼アタッカーをせねばならんだろうね。
「どんぶりが無いよりマシなんで…ね」
「?…どんぶり?」
「丼は好きだぞ!なはははは!」
「何でも無いです…」
***
「ところで、これからどうするつもりですか?」
当然の疑問を投げ掛ける。これから一緒に活動する仲間になるんだから知らないとね。
「そうだな…ひとまずはこの街から出ていこうと思う。」
まぁそうだろうな。
「やっとって感じですね?」
「まぁな。今までバックパッカーを見つけらんなかったし。見つかっても既に他のパーティーとかクランにいたりとかでさぁ」
「リオさんの加入のお陰でやっと私たちの行動の幅も広がりましたし、そのうち、資金が貯まったらクランも建てようと思うんです」
「資金と言いますと…あれですか…日本円換算で500万…」
「ええ、でも先のドラゴン戦でそのほとんどが無くなってしまって」
んん?それってもしや?もしやのもしや…
「多分…その金、俺持ってますよ」
「え…?今なんと?」
「いや~異様にゴブリンから金がドロップしたな~って思ったらそういうことか…」
と言いながら俺は金の入った袋を取り出す。
このゲームではすべて硬貨のためこのような形でしか取り出す事ができない。
因みに銅貨=100円、銀貨=1000円、白金貨=1万円、金貨=10万円である。
金貨より白金貨の方が安いのは海外の価値観に合わせたものだから。(白金を黄金より美しいと思うのが日本人のみらしい)
ん~とどれどれ?
は!?350万円分……!?
あのとき拾ったのが「この二人達の金」じゃなく「今までのドラゴンに挑んだプレイヤーの金」ってことになるのか?
「…350万…です」
「はぁ!?」
「え!?」
「どういう事だよ!なんなんだよ!もー!」
「お兄さま…落ち着いてください!」
「ん…お兄さ」
「ああああ!聞かなかったことにしてください!」
「あぁ…はい。じゃなくて!二人とも!他の人に迷惑なので落ち着いてください!」
数分後、ようやく落ち着いた。
も~、いろんな人から白い目で見られちゃったよ…
「ユナ…今の所持金いくらだ?」
「320万円分…」
「リオ…お前は?」
「350万です」
「670万…」
「普通にクラン建てられるわ…」
「リオ…どうしよっか」
俺に振られても!
どうしようもこうしようも…
「…実力と人数的にはキツいと思います…でも、金銭管理が俺一人になるし、ドラゴンの時のように金が減ることもあり得ます」
つまり…
「使っちゃいましょう。戦略的散財です!」
「かっくいいー!」
「何ですか…戦略的散財って…」
かくして、三人だけのちっちゃいパーティーは組んでいきなりクランを創立させることになりましたってね。
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