(21+1)×2のカード
また新連載です
西暦2135年
20年前に作られたVRゲームハードERムーヴは世間に大きな影響を与えた。20年たった今でもその影響は大きく、昨年はERの五世代目が発売された。
親がERの開発に関わってる事もありゲームが大好きな『俺』こと新山 理央は今年5月に五世代目を手に入れた。
え?親がERの開発員なら簡単に手に入るだろって?そう思うだろ?残念ながら俺は親からERを貰ったことがない。αテストもβテストも両親がやってる。ヤツら曰く
「お前が先にやったら俺らがお前に追い付けないだろ」
とのこと。
そう実は家族全員がゲーム好きなのだ。
自由な時間が多い学生の俺と仕事が多い両親を比べたら俺が圧倒的に有利にゲームが出来る。
さてゲームの話をしよう。
俺がERと共に買ったのはアルカナソウルオンラインと呼ばれるソフトだ。五世代目ERと同時発売のソフトで毎月の更新で新しくクエストが増えるシステムだ。
課金要素はないがここまで人気なのはすごい気がする。
このゲームの特徴として挙げるならその個性の多さだ。
プレイヤーは最初にひとつの職業をランダムで手にいれる。
カードはタロットカードが元で、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、教皇、恋人、戦車、正義、隠者、運命の輪、剛毅、吊るされた男、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、世界、そして愚者。この22枚とそれぞれの逆位置合計44種のカードがある。そこから更に剣、聖杯、ワンド、コインの小アルカナ4つのアイテムを選ぶ。二つの組み合わせは176種にものぼる。そこが人気の秘訣なのだろう。
もちろんこの個性やアイテム、スキルにはそれぞれ特徴があるのだがそれは追々話すとしよう。
お次はこのゲームを買ったきっかけを話そうか。
このゲームのマップは実際の地球と同じ大きさと同じらしい。俺はその大地を踏みしめたいと思ったのだ。え?だったら外出て散歩でもしろって?それが出来たら良かっただろうな。2か月前…俺は交通事故に巻き込まれ、下半身不随になった。勉強も通信制でいまだに病院から出れていない。そのため地面を踏みしめる足が欲しかった。それがきっかけだ。
…っと前置きが長くなったがそろそろゲームを始めるか。
首にERを取り付け、付属のバイザーを装着。
しばらくするとロード画面に切り替わる。ワクワクしながら待ってると辺りが暗くなり、スポットライトがつく。スポットライトの下には少女が立っていた。
「こんにちは~まずは名前を教えて~…あ、ワタシはサポートAIのロットね~よろしく~」
「俺はリオだ。よろしく」
AIの動きも人間らしい。
「うん、じゃあ早速だけど~次は~個性を決めようか~」
そう言ってロットは22枚のカードをどこからか取り出してシャッフルする。それを積み重ね、ロットが一番上のカードを引く。
(世界こい世界こい!)
プレイヤー評価が一番高い世界の正位置を祈りつつその手元を見る。
「………愚者の逆位置だね~ドンマイ~」
それを聞き俺は石のように固まる。
愚者の逆位置…それは体力は高いがもっとも使い勝手が悪いカードと呼ばれるものだった。
「固まってないで何か反応しなよ~リオ君~」
それは無理ッス。
「まあいっか~キャラメイクはどうする~?………オイ、聞いてんのか?」
とロットが苛立ちながら聞いてくる。てかロットちゃん…素はそんな性格なのね…(AIだから素もくそもねぇが)
「じゃあ………」
結果
茶髪!ケモミミ(髪型が)!金の目!
そんなところかな。
「他は変えなくてもいいの~?」
「髪型変えるだけでも現実とのイメージが変わるからな」
ま、個人の自由だからね~とロット。
そうだよ自由でいいんだよ。
「じゃあ次は~……」
と言って4つのアイテムを取り出す。
「右から~剣、聖杯、コイン、ワンドだよ~。この最初のアイテム選択で所属国が決まるからね~」
それは初耳だな。
「国についてちょっと詳しく説明をおくれ…」
「ん…はーい。剣の王国は…戦士が多いね~。剣士、闘士戦う人が多いね~。剣は攻撃力アップだよ~。お次に聖杯の皇国~国民が皆優しいね~。回復魔法を覚える人がいっぱいだな~。次にコインの帝国。お金稼げるけど攻撃力は低くなるね~。最後にワンドの国~。畑とか牧場が多いな~。ワンドを選ぶとスキルによる攻撃力があーっぷ!さぁーて…どれにする?」
…どうしたものか……
攻撃力なら剣の国だし、回復なら聖杯、カネはコインでワンドがスキル攻撃………
回復はパーティー組んだときに一人いりゃあいいし、クエストこなせば金に困ることは無いかもしれんな…残るは剣かワンド………
とここで愚者の逆位置の持つスキルを思い出す。
カードの持つスキル、それはそのカードの意味に合わせたものになっており、死神の逆位置なら回復強化、戦車なら広域攻撃などがある。愚者の逆位置は体力が二分の一になったときステータスが2倍になると言うスキル。ただし体力が高いがためそのスキルは発動しにくい。それが愚者の逆位置が使いにくい理由だった。
なら最初の攻撃力が高い方がいいだろ。
「剣で」
「りょーかい~」
「これでひとまずキャラメイクは終わったよ~。あとはあっちに飛ばすだけだね」
ん?飛ばすだけ?
「え…チュートリアル…は?」
俺がそう聞くとロットは笑いながら
「『習うより慣れろ』だね~。いってらっしゃーい」
と言い指を鳴らした。
すると俺の足元に穴が空いたではないか!
ってまてまてまてこれって飛ばすんじゃなくて………
「落としてんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
じゃーねーとロットは手を振っている。
かくして俺のVRゲーム生活が始まったのであった。
愚者の逆位置のスキル等をここで
HP 500
スキル 愚者の怒り
アイテム マジックバッグ
ウェポン 愚者の剣(sword of a fool)