表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

第3話-逃亡-

何か一日で書けてしまったので投稿!

 翌朝、私はベットの上で目が覚めた。

 正確には窓から日も指してない日の出前だが。


「あれ、何でベットの上に?私、確か通路で、通路で拳成(けんせい)君が。」


 困惑しつつベットから起き上がろうとベットに手を付くと、指先に触れる開きかけの日記が目についた。

 最後まで読んだはずのそれは、見たことの無いページが開かれていた。


「あ、れ?こんなページあったかな?じゃあやっぱりさっきのは夢?」


 私はそう考えて日記を読む。


<謝罪>


 日記の一文目にはそう書かれていた。


<すまない。私達の時は3日目に問題を起こしたので、城に潜む魔族についての警告を怠ってしまった。奴は城の使用人、もしくは重鎮に成りすまし、勇者を陥れる機を狙っているのだ。彼には悪いことをしたものだ。>


 ここまで読んで明らかにおかしいことに気づく。

 この日記は過去の白銀の勇者が召喚されてから7日間、毎日1ページずつその日のことを書いていたはずだ。

 その証拠に他の7ページは全て一文目に日付が書かれており、最後のこのページにのみ、見たことの無い文章が書かれている。そして何より、


「私の見たあの光景はやっぱり現実?でも、どうやって部屋に?」


 私が呟くとその言葉に反応するかのように最後のページの文章が消え、別の文章が浮かび上がる。


<回答>

<君は深夜彼の、いや、彼に成りすました魔族の行動を目の当たりにして錯乱し、力も持たないのにその魔族の前に飛び出そうとした。私はその行動を止めるため、日記を通じて君の行動を一時的に支配し、部屋に帰還させた。あぁ、安心してほしい。この力を使うにはあまりにも時が経ちすぎていたせいでもう使用はできない。>


 日記に浮かび上がった文字を見て私は目を見開く。


「そんなっ、あれは確実に拳成(けんせい)君だった!」


<回答>

<本当にそうか?顔もきちんと確認していないのに?それによく考えるんだ。何故ここに来たばかりで王を殺す?何故王の寝室の近くのナイフがある部屋を見つけられた?


<そして何より、何故王を殺しに行くのに音を立てずに動かなかった?>


「何故?」


<回答>

<目撃者を作りたかったからだ。残念ながら君の隠れ方が巧かったお陰で魔族は誰にも見られなかったと思っているだろうがな。>


「嘘よ!」


<回答>

<嘘じゃない。>


「ならなんで、何で廊下がこんなに静かのよ!」


<回答>

<王が殺されたのは数時間前ではなく、24時間前だからだ。>


「24時間、前?」


<回答>

<そうだ。君を通じて魔族の行動を見た私は君に"霊魂"を使った。>


「"霊魂"?」


<回答>

<本の背表紙に付いていた玉だ。あれは私の代の勇者達の能力がそれぞれに付与されている。"霊魂"は各人にあった物しか使えないが、使用すると一日行動できない代わりに莫大な魔力と能力を得られる。>


「そんなこと、王様も誰も言ってなかった!」


<回答>

<知らないからな。>


「なら、あなたの話の証拠も・・・」


<回答>

<証拠ならある。君には既に"霊魂"を使用した、と言ったろ?唱えるんだ。>


「何を?」


<回答>

<君の中に答えはある。>


 パリィン


 日記のその文章を合図として部屋が割れる。

 いや、そう見えたのは錯覚で、実際は部屋の壁、窓、扉の全てを覆っていた膜のようなものが割れた。


 バタバタバタ


 途端に聞こえ始める廊下を走る複数の足音。

 無音だった部屋が騒がしい現実と合流する。


「音が・・・みんなに伝えないと!」


 私は膜が完全に消えた部屋から飛び出すように出る。


真帆(まほ)ちゃん!目ぇ覚めたんか!」


 扉を開けるとほぼ同時に向かいの部屋から出てきたのは聡介(そうすけ)君だった。

 その声に反応して左右の部屋からみんなが出てくる。

 もちろんその中に拳成(けんせい)君の姿はない。


嘉多無(かたなし)さん!起きてすぐで悪いけど今の状況を・・・」


「犯人は拳成(けんせい)君じゃないわ!」


「説明、えっ!?」


 剣慈(けんじ)君の言葉を遮って放つ言葉にみんなが固まる。


「何で真帆(まほ)ちゃんが拳成(けんせい)の阿呆が逃げたこと知っとるんや?」


「説明は後!とにかく急いで城に居るみんなを広間に集めて!全員!」


 私はみんなの言葉に答えずにそう指示を出し、勇者であるという威光で王妃からメイドまで全ての城で働く者を広間に集める。

 その数、100名ほど。

 広間はかなり大きいのでその数もなんなく入った。


 広間に集まった者たちの反応は様々で、私たちに疑惑の目を向ける者、救いの目を向ける者、期待の目を向ける者と十人十色だ。


 そんな色々な視界に晒されつつ、私は眠っていた24時間で得た力を振るう。


「<虚なる勇者が命じる。汝、その身に纏う(じつ)を脱ぎ去り(きょ)を衆目に晒せ。>"虚像解除(シークオブジェクト)"」


 瞬間、私の体から半球形のドームが広がっていく。

 そのドームは広間に集まった者たちに触れ、その体を透過する。

 ただ一人を除いて(・・・・・・・・)


「きゃっ!」


 ドームが広間に広がりきる寸前に最後尾にいたメイドがドームに押されて尻餅をつく。

 その時の悲鳴で集まったもの達の列は割れ、みんなの視線がそのメイドに注がれる。


「あなたが犯人ですね?」


 私は尻餅をついてこちらを忌々しそうに見上げる左目の泣き黒子が特徴のメイドにそう告げた。










 24時間前。


「ぐっ、何者、がはっ!」


 ドサッ


 宵闇深い城の一室。

 他の部屋と比べ、格段に広く、格段にきらびやかなその部屋のベットにこの国の主が沈む。

 その光景を見つめるナイフを持った一人の男性。

 彼は目の前で腹部から血を流して倒れ行く中年の男性の姿を助けることもなく、ただただ見つめていた。


「あぁ。種は蒔いた。だが、誰も勇者が気付かなかったみたいだ。前回の勇者と比べて今回の勇者はポンコツ揃いだぜ。」


 ナイフを持った男性は誰もいない部屋で何かに向けて話しかける。


「これなら俺様一人で勇者どもを蹴散らせるぜ。・・・わかってるよ。神器を持った勇者を甘くみるな、だろ?全く。目撃者が居ないんで仕方なしに俺様が一芝居打たないとな。」


 そういうと男の体が歪み、左目の泣き黒子が特徴のメイドの姿に変化する。


「さて、魔王様方。私の名演技、しかと目に焼き付け、その席の一つを早々に明け渡してくださいませ。」


 メイドはそういうと倒れる中年の男性に手に持ったナイフをもう一度刺す。

 そして今度は引き抜かず、そのまま中年の男性の体に刺したまま少し離れる。


「<無知な者は私と踊る。>"人形喜劇(マリオネット)"」


 メイドの目の前に突如さっきまでメイドが化けていた男性が現れ、その男性はメイドに背を向けると中年の男性の刺さったナイフを引き抜く。

 その乱雑さから少し返り血を浴びるが、男は気にも止めずに部屋を出て、メイドが少し前に逃がした勇者である鞍馬拳成(くらまけんせい)居た(・・)部屋へと向かっていく。


 メイドはその男の姿を見送り、たっぷりと1分待った辺りで部屋の扉を蹴破るように飛び出す。


「だ、誰か!!誰か来て下さい!国王が、国王が勇者に刺されました!!」


 その後駆け付けた兵士にメイドは犯人の特徴を伝え、前日に召喚された鞍馬拳成(くらまけんせい)を犯人と断定した兵士が与えられた部屋に乗り込むとそこには、召喚されたときに彼が着ていたとみられる服が脱ぎ捨てられており、姿の見えない彼は国内だけでなく、近隣の国に対しても指名手配犯として周知された。




勇者たち


光園寺剣慈(こうえんじけんじ)

長身黒髪アシンメトリー系イケメン

神器:純白の剣。


氷村裕美(ひむらゆみ)

黒髪ボブ高身長女子

神器:獣の顔を伸ばしたような弓。


土居淳(どいじゅん)

ミニマムマッシュな眼鏡の男の子

神器:大きく武骨な盾。


鞍馬拳成(くらまけんせい)<指名手配中>

黒髪ウルフマッチョ厳つめ男子

神器:赤い爪の付いたグローブ。


火野阿樟(ひのあくす)

中肉中背坊主男子

神器:真っ黒の両刃斧。


風見聡介(かざみそうすけ)

金髪ツーブロックのチャラ男風関西人

神器:穂先が十字になった槍。


嘉多無真帆(かたなしまほ)

黒髪ポニテの図書委員長女子

神器:なし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ