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引きこもり魔女さんとスローライフ始めました!  作者: らぴんらん
第三章: 小さな体の大冒険
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牢獄と脱走

 あれから、わたしと小人さんは抵抗むなしく捕まり、牢獄にいれられました。


 捕まったときこそ袋叩きにされるものだと思っていましたけど、なんだかお偉いさんに止められてしまったようで、わたしたちは怪我無く牢獄に入っています。

 牢獄と言っても木の格子のようなもので、その気になれば開けられそうな簡素なもの。その格子の前には一匹のリスがいて、こちらをじっと監視しています。


 命令されたのでしょうか。

 下っ端って大変ですよね。


「小人さん、小人さん」


わたしは、隅で縮こまっている小人さんを呼びます。


「どした? どした?」


「これからどうします? 逃げようにも監視されていますし」


「待つ! 待つ!」


「待つって、もしかしてネコさんのことを?」


「そう! そう!」


「うーん」


正直、それはあまり現実的じゃないのですよね。

常に監視の目に晒されているわけですし……リスって夜行性?

ふと、「夜行性だったら少しは可能性がある」と思いましたが、よく考えれば窓も何も無いので時間がわからないんですよね。困った。


「さて、どうしましょうか」


全く持ってその一言に尽きるのでした。


格子を無理やりはずして脱走する?

いや、それだとリスさんに見つかってしまうし、あんまり物を壊すって言うのも気が進まないですね。却下。

では、穴を掘って脱走する?

そもそも地面木ですから。猫の手では無理です。却下。

じゃあ、監視のリスさんの目を出し抜いてカギを取ってしまう?

そんなことができたら苦労しません。却下。


「いや、これは……なにも名案が思いつかない」


普段なら割と何とかなるのですが、今回ばかりはちょっときつい。

いまさらですが簡単に構図を説明させていただきますと。


 わたし 小人さん

 格子 格子 格子 格子

 リスさん


 という始末。

ちなみに、わたしたちのいる部屋は格子を覗いた三方が壁で囲まれています。こんなのどうやって抜け出せばいいというのでしょうか。ええ、どうすれば。

小人さんの言うとおりに助けを待つのが確実なのでしょうが、そんなことが起こるかすら謎です。連絡手段なんて持っていませんから。


「小人さーん。なんかいいアイデアないのー?」


行き詰ったわたしは小人さんにしがみつきます。とてつもない投げやりでした。


 「しってる! しってる!」


 すると、調子を取り戻した小人さんがそんなことを言いました。


 「へ? 何かアイデアでも?」


 「ある! ある!」


 「ほお、教えていただいても?」


 「いいよ! いいよ!」


 あっさり了承。すると、小人さんはどこからかどんぐりを一つ取り出しました。

 聞いておいてなんですけど、小人さんにアイデアがあるとは思っていませんでした。ごめんなさい、小人さん。こんなわたしを許して。


 「で、このどんぐりをどうするんですか?」


 「投げる! 投げる!」


 「投げる……? ああ!」


 しばし考えまして、ひらめきます。

 おそらくですけど、小人さんが言うには……。

 どんぐりを投げる。

 リスがどんぐりに注意を向ける。

 その隙に何らかの方法で脱出。

 と、こういうことなのでしょう。なるほど、小人さんにしては名案です。でも、一つ欠陥があるとすれば、最後。なんらかの方法で脱出ということ。


「なんらかって、何?」


格子を破壊すれば音がでますし、注意を向けさせたところで無意味でしょう。

言うと、小人さんはぴょんぴょんとはねてあるところを指差します。

そこは、


「ダクト……?」


なんというご都合主義! ご都合主義ばんざい!

そこにはなんと、劣化してぼろぼろになったダクトがありました。

すっかりさび付いていて、猫になっているわたしの力でもこじ開けられると思われます。

これならば、隙を突いて脱走することが出来るかも。


「小人さん! ないすアイデアです!」


「ほめて! ほめて!」


「すごいすごい。小人さんはすごいなぁ」


「うれしい! うれしい!」


「では、善は急げですよ小人さん。とっとと脱走してしまいましょう」


「脱走! 脱走!」


「では、3、2、1で投げましょう。どちらが投げますか?」


「そっち! そっち!」


 そういって、小人さんは小さな手を精一杯に伸ばしてどんぐりを差し出してきます。


「よし、確かに受け取りましたよ……では、作戦の最終確認を」


「かくにん! かくにん!」


「まず、わたしが思い切りどんぐりをなげます」


「投げる! 投げる!」


「投げられたどんぐりに注意がそれている間に、ダクトをはずして脱走。です」


「了解! 了解!」


「では、いきますよ。3、2、」


「1! 1!」


――あれ、そういえばこのどんぐりどこから……?


「えいやあ!」


「投げた! 投げた!」


「小人さん静かに。さ、ダクトをはずして逃げますよ」


「静かに! 静かに!」


リスさんがころころと転がるどんぐりを見てじゃれ付いています。

よっぽどどんぐりが好きなようで。そのすきにわたしと小人さんは、さび付いたダクトをはずして脱走します。あまりにも劣化していて、はずすのは容易でした。


「……よーし。では、とりあえず進みましょう」


「進む! 進む!」


「それより小人さん」


「どした! どした!」


「あのどんぐり、どこから取ってきたんですか?」


「ポケット! ポケット!」


「ポケット……」


ふと思い当たる節があり、ポケットを探してみますと。


「あ、ない! あのお店で買ったどんぐりの懐中時計がない!」


あったはずのものが、無かった。


「小人さん……」


「どした! どした!」


「どんぐりの懐中時計、あのどんぐりって……」


「かったやつ! かったやつ!」


「小人さんのばかあああああああああ!」


 どうやら、あのお店にはまたお邪魔することになりそうです。


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