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引きこもり魔女さんとスローライフ始めました!  作者: らぴんらん
第三章: 小さな体の大冒険
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ねことリスとそれからわたし

小さくなって穴を滑り落ち、辿り着いたところはどうやら地獄の入り口。

警護係か何かをしているリスたちなのでしょうか。

もう、目つきだけで人一人殺せそうな感じです。そんな目つきをしたリスが、何十匹もわたしと小人さんだけを敵とみなし、取り囲んでいます。

それはもう、恐怖という感情以外生まれません。


「あ、あのー。わたしたち、怪しいものではないのですが……」


おずおずとわたし。

小人さんにいたっては胸ポケットに頭から突っ込んで足が出ています。彼流の死んだふりでしょうか……危機管理能力は素晴らしいのですが、頭かくして尻隠さずとはまさにこのこと。プルプルと震える足だけが見えています。


「(食べられる! 食べられる!)」


「(大丈夫ですよ。小人さん)」


多分。保証は無いですが。

というか、ネコさんはなにをしているのでしょうか、助けに来てくれてもいい頃合ではないでしょうかね。相変わらずのマイペースっぷり。

わたしは警戒しながら身じろぎ、距離をとります。

いくらわたしが猫になっていたとしても、この数のリス相手に一人で立ち回るのはそれこそ無謀というものでしょう。相手は武器を持っていますし、戦力差は歴然としています。

すると、一匹のリスが口を開きました。


「――宣戦布告か……? 猫組」


宣戦布告?

猫組? 

何のことでしょう?

右も左も分からないので、とりあえずごまかしてみます。


「そういうつもりではなかったのですが……」


「ではどういうつもりなのだ。正直に言わないと容赦はせんぞ!」


「……」


敢え無く失敗。


「なんだ、言い渋るつもりか? さっきも言っただろう容赦はせん、と」


「いや、それは分かっているのですが……」


分かっています。ぼこぼこにされるのでしょう。

ですが、都合のいい理由も思いつきませんで、困りました。

猫組がどうとか言っていましたし、もしかしてリスと猫の間には何かしらの対立関係のようなものがあって、それでピリピリしている……とか? 

もしくは、この武装したリスたちは親を猫に殺されいて、猫という種族そのものを根本的に恨んでいる……とかでしょうか。

まあいずれにしても状況は変わらないわけですが、ここは一つ勝負に出てみます。


「――わ、わたしは、あなたたちとの和解を申し入れに来ました……!」


 さすがに苦しかったでしょうか。

 目つきを変えないまま、一匹のリスが口を開きました。


「お前、俺らリスにしたことを帳消しにして、その上で和解を申し入れたいと、そう言っているのか?」


怒声混じりの、強い口調。


「は、はい。理解が早くて助かります」


「……お前らがいままで俺らにしたこと、お前は覚えているか?」


「あーその、どんぐりをおもちゃにしちゃった? みたいな……?」


「違う! ――お前らは俺らリスという存在をことごとく暴力で押さえつけ、宝や金銭といったものを根こそぎ奪った挙句、今に至っては毎月またたびの枝を献上することを義務付けて、自分たちは悠々自適に暮らしているという始末だ! これ以上俺らに何かを要求するようなら、お前だけでもいまここで……倒す!」


結構ひどいことしていますね、猫。

あながちわたしの予想も外れていなかったようです。まあ、いまはそんなことを言っている暇も無いわけでありまして……。

リスたちは一匹の合図とともに、一斉に武器を構えなおし、戦闘陣営に広がりました。

構図にすると、わたし一人の前に三十匹以上のリスたちが三角形に広がっているという感じです。先に進むなら、俺ら全員を倒していけ、みたいな。


「あのーわたし、戦うつもりはないのですけど」


「問答無用! お前らがそのつもりなら、容赦なく叩き潰す!」


「これはもう、考え直してはもらえないですよね……?」


「ああ」


といった矢先、


「――いくぞお前ら! 全軍突撃ぃいいいいい!」


大声で掛け声を叫び、リスたちが飛び掛ってきました。


「あーもう! なんでこうなるのおおおおおおおおお!」


本当にいっつもいっつも!

なんでこうも裏目に出るの!


「勘弁してくださあああああああああい!」


わたしは全力で、後ろに駆け出します。

囲んでいた陣営から三角形の戦闘態勢になったことで、後ろが手薄になっていたのでした。最初は逃げるのかと怒声をあげていたリスさんも、どうやら気付いたようです。


「……賢いやつめ! 逃がすな、追え!」


それを追いかけてくるリスの大群。

わたしはとにかく全力で、先の見えない通路を逃げ続け-―


「――いたっ!」


行き止まりで派手にぶつかり、後ろに倒れこみました。

すると、かなり距離を離していたつもりだったのですが、リスたちがわんさかやってきたではありませんか。


「あー、ええっと、その」


「今度こそ逃がさんぞ。もう話をきいてやるつもりもない」


「…………」


「一人で乗り込んできたことを後悔するんだなあああああああ!」


リスさんの怒声が当たりに響き渡り――わたしはとっつかまりました。


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