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引きこもり魔女さんとスローライフ始めました!  作者: らぴんらん
第三章: 小さな体の大冒険
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雑貨屋さんと小人さん

「――――あれ?」


 激しく足を滑らせて木から落下しました。

 おおよそですが、七メートル足らずの高さから落下したはずですけれど、


「わたし、いきてる」


 体が無残に飛び散るわけでも、大怪我を負うわけでもなく、無傷。

 足は少しじんじんと痛みますが、かすり傷一つありませんでした。

 一体何があったんでしょうか。……瞬間移動?


「ネコさんに小人さん。わたしいますよね?」


「なにいってんだお前」


「いる! いる!」


「あらー」


 あきれた様子で言葉のナイフを投げてくる彼ら。

言葉のナイフがずきずきと痛みますので、夢でもなんでもなく、紛れも無く生きているのでしょう。わたしって、考え方めんどくさい。

うんうん唸っているわたしにネコさんが語りかけてきました。


「お前半分猫になってるだろ? 猫っていうのは身長の何倍かの高さのところから落ちても怪我しない仕組みになってんだよ。まあ、本当に高いところから落ちたら怪我するけどな」


「はー、なるほど」


ぱちんと両手を合わせます。なるほど理解しました。

猫になってるから高いところからおちても大丈夫! というチート能力のようです。

これは強い。

でもまあ、万能って訳でもないんでしょう


「まあ、落ちても怪我しないだけでお前じゃ上れないだろうなぁ」


「運動音痴! 運動音痴!」


 けらけらと笑うおふた方。


「悔しいけど正論……どうやって入りますか?」


「そうだなぁ」


 はしごでもかけて上るか、とネコさん。


「で、はしごは誰がかけるんです? わたし、無理ですよ」


「――それは俺がやるから、お前ははしごでも借りてきてくれ」


「はぁ、わかりました。ほかに無いですしね」


 「よし、じゃあいってこい」


 「小人さん、いきますよー」


 「ついてく! ついてく!」


足元をちょこちょこ走り回っていた小人さんをひっ捕まえて、肩に乗せます。

もはやわたしの肩に小人さんが乗っているのは至極当たり前のことになっていて、どこかのなにかのトレーナーみたいな……イメージはそんな感じ。

そしてわたしと小人さんは来た道を折り返して町へ戻ります。


「――――小人さん、小人さんってお花とか好きなんですか?」


「すき! すき!」


「ほお? では今度、魔女さんも入れてしっかりとしたお花見にでも行きますか」


「いきたい! いきたい!」


「あ、そうだ、小人さん。この花びら抱いてみてください」


「こう? こう?」


 適当に目をつけた綺麗な桜の花びらを小人さんに抱かせたわけなのですが、


 「こ、これは……かわいい」


 一言で言うなら、天使。

 二言で言うなら、小人さんまじ天使。

 三言で言うなら、花びら抱いてる小人さんまじ天使。

 四言で言うなら……(えとせとら)

 とまあ、とんでもない破壊力をもっていたわけなのです。


 「小人さんかわいい! ああ、こんなときスケッチブックがあったら……」


 丹精こめて描いたのに、と言いかけるわたし。

 すると、声をかけられました。


 「――あら、先ほどの人探しの方ではないですか?」


 「あ、あなた先ほどの」


振り向くと、先ほど道を教えていただいた方がいました。――雑貨屋の女の子です。


「どうしました? 道、迷っちゃいました?」


「いいえーおかげさまで無事につけましたよ」


「それは良かったです。その……お人形さんですか? かわいいですねー」


「ああ、これは小人さんです。かわいいですよね。特に花びら持っているところとか……」


本当に鼻血もので、

というのはさすがに控えておきました。

なんかちょっと困った感じの顔していますし、


「え、ええ。そうですね」


若干愛想笑い引きつっています。

おそらく彼女の視点では、人形を連れて歩いている、関わらないほうがいいタイプの人間だと思われていることでしょう。悲しいことです。

あはは、と軽く流して彼女は話し始めました。


「ところで、こんなとろで何を?」


どうやら彼女にとって、道草を食っているわたしたちが気になったようです。

特に隠すようなこともないので、事の経緯を簡単に説明します――


「――ということで、はしごを探しに戻ってきたんです。どこかで貸していただけないかと思いまして……ご存じないですか?」


とわたしが猫なで声(猫だけに)で言いますと、


「よければわたしのところでお貸ししましょうか?」


と笑顔で言ってくださいました。


「いいんですか!? ぜひ! ぜひお願いします!」


「ええ、だいじょうぶですよ。では付いてきてください」



「ありがとうございま――「感謝! 感謝!」



わたしが言いかけたそのとき、小人さんが割り込んできました。


「(ちょっと小人さん! 人前で話しちゃだめっていったでしょ!)」


「ごめん! ごめん!」


「(それを話しているっていうんですよ!)」


「初耳! 初耳!」


「(あーもう! 小人さんの馬鹿! あほ! ちび!)」


と軽く口論をしていますと、雑貨屋の女の子はくすっと笑って言いました。


「あはは、仲がいいんですね。うらやましいです」


「……え?」


「驚いた! 驚いた!」


「どうも、小人さん。あなたしゃべれたのね、もっと話してもいいんですよ」


「しゃべれる! しゃべれる!」


「あは、かわいい」


「…………」


喋ってしまった小人さんと、雑貨屋の女の子が談笑しています。

てっきり、驚いてそこら中を走り回った挙句、情報を拡散するくらいのことはするものだと思ってました。だって、さっきまで人形だと思っていた物体が話し始めたんですよ? 

わたしだったらそうします。……しませんでしたけど。

とまあ、わたしみたいな変な環境で生活している人を除けば、それくらい一般的には知られていないわけで、


「――あの、驚かないんですか?」


と質問するのでした。

すると雑貨屋の女の子はあっさりと言います。


「え? ああ、小人さんがお話していることですか? 驚きませんよ」


「驚かない! 驚かない!」


鉄のハートでも持っているんでしょうか、彼女。

うーんと少し考えていますと、彼女から答えが告げられました。


「うちの雑貨屋の看板、小人さんのシルエットが書かれているんですよ。それでいつか会えたらお話してみたいな、って。だから驚かないんです。むしろうれしいくらい」


「へぇ、そんなことが」


「そうなんです。わたしとしてはむしろ……あなたのコスプレ? のほうに驚きましたよ」


「っえ!? こ、こここ、コスプレ?」


「あら、違うんですか? かわいいネコ耳が頭についてますが」


「――――あ、あああ! 帽子、帽子被ってないじゃんわたし!」


「あはは、よくお似合いですね」


「うう、恥ずかしい。これはいろいろあってですね……」


「言いたくないこともありますでしょうし、深追いはしませんよ」


「……すみません」


はいはい、と軽く促されます。

どうやらわたし、帽子を被ってなかったようで、ネコ耳を周囲に晒しながら歩いていたようです。道理で周りからやけに視線が来ると思ったら……。

おそらく、木から落っこちたときに帽子が飛んでいったのでしょう。

 なんで気付けなかったんだわたし。後悔が後を絶ちません。

そんなことを考えていますと、


「あ、そろそろ着きますよ」


と女の子が手でわたしを促しました。


「――ここが、わたしの働いている雑貨屋さんです」


小人さんのかわいらしいシルエットが描かれた看板を携えた、おしゃれの塊のようなお店がそこには建っていました。


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