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引きこもり魔女さんとスローライフ始めました!  作者: らぴんらん
第三章: 小さな体の大冒険
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第三章プロローグ:いたずらリス

 昼夜の逆転した日々が続いていました。


 昨夜もひたすら編み物に熱中してしまい、就寝したのは午前4時過ぎという始末。

 始まりは小人さんの「服ほしい!服ほしい!」という言葉にあります。

 小人さんサイズの服は探しても売っていないので編むことにしたのですが、それがダメでした。


 長い時間をかけて築き上げてきた生活リズムはあっさりと崩れ落ちますが、再建は困難なのです。

 遅くとも12時には寝ようと思って生活しているのですが、連日「明日からやろう」状態。

 こんな生活を続けていたら魔女さんのような引きこもりになってしまいそうです。


 「それだけは、避けなくては…」

 

 身を引き起こし、思いまぶたを持ち上げて、ダルい体を無理やり覚まします。

 就寝時間をずらせないのであるなら、起きる時間を変えればいいのです。

 時刻は午前7時、睡眠時間はたったの3時間未満。

 これで昼寝さえしなければ夜自然と眠ることができ、それは生活リズムの修正を意味します。


 ぼんやりとした頭を抱えてソファーに座り込みます。

 もうここでの生活も長くなりました。魔女さんとも長い付き合いです。

 調度や家具の配置もすっかり覚えて我が家のように生活を送っています。

 お湯を沸かして目覚ましのモーニングコーヒーを淹れて、飲み込み……


 ……んだところで目が覚めました。昼過ぎでした。


 まさかの夢落ちです。

 朝に無理やり起きたわたしの夢を見るという不思議な構図になっていました。

 もう魔女さんも起きて活動を始めているようです。すっかり自分の方が堕落してしまっている…。

 むっくりと半身を起こして、目を擦ります。


 わたしが起きたのが分かったのか魔女さんが声をかけてきました。 

 「今日のご飯は小人さんの佃煮?付け合わせはねこさんの毛和え?

 飲み物は魔女さん特製ジュース?一体わたしが寝ている間に何があったのですか?」

 のっそりとテーブルに向かって椅子に座ります。

 魔女さんの緑と紫の混ざった不思議な色のドリンクを口に運ぼうとしたところで目が覚めました。


 「えええーーーーっ?」


 飛び起きたわたしは即座に時刻を確認します。午後二時でした。

 どうやら起きたと思っていた二度目の起床も夢だったようです。

 夢のなかで起きた夢をみたわたしを夢のなかで起きたわたしが見て……。どういうこと?

  

 連日のように夜更かしをしていましたが、ここまで酷い寝坊は初めてでした。

 家に人の気配がありません。同居人の魔女さんたちご一行は庭かテラスでくつろいでいる時間です。

 のっそりと歯を磨いて顔を洗います。

 どうせ急ぎの用事も無いのでゆっくりと身支度をすることにしました。

 

 寝癖でボサボサになった髪をぼんやりとブラッシングしながら卓上に目を向けますと。


 「……ふふふ」


 にんまりと溢れる笑みを抑えることが出来ないのでした。

 卓上にいくつも並ぶ小人さんの衣類。

 ふんわりとしたニット帽に、二つがくっついた手袋、暖かそうな靴下。

 ひときわ目立つ大きな編み物は、小人さんの敷き布団です。


 わたしが作っていた編み物と言うのは服だけでなく、小人さんの生活用品にまで至ります。

 主にわたしの持っている服や寝ているベッドを模倣して編んでいます。

 最初は服だけつくって終わらせるつもりだったのですが、編んでいくうちにあれがほしい、これがほしい……際限なく物欲が暴走してしまっていまの生活に至るということでした。


 自分でいうのもアレですが、中々によい出来映えです。

 もともと細々とした作業が好きで、前々から編み物や手芸、お菓子作りなどをしていました。

 

 「あ、ここちょっと緩い…」

 

 窓から差し込む光に晒してすり抜ける光を見ては、少しほどいて編み直します。

 そうして何度も編み直すことしばし。

 

 「これなら」


 納得のいく作品に手直しが終了しました。

 手直しした編み物を机に置くと、より一層の満足感を得ることができます。これが気持ちいい。

 この編み物を早く小人さんに身に付けていただきたい……。

 その時、キッチンで食器の割れる音がしました。


 「……ん?」


 行ってみると、何かを置いていたのであろうお皿が床に落ちて真っ二つになっていました。

 窓は空いていますが風が強く吹き込んでいる訳でもありません。

 お皿の破片を片付けているわたしの前を黒い影が走りさっていきます。


 「ちょ、ちょっと」


 声を掛けられたことにビックリしたのか、一度こちらを振り替えりました。

 目が合います。一匹のリスでした。

 数秒ほどこちらをみたリスさんはすぐさま逃げてしまいました。

 どういうことでしょうか…。リスさんがお皿をわって逃げた。

 

 「……まあ、いいか」




 

 魔女さんたちのもとへ行ったのは15時でした。


 「やっと起きたんですね~」


 予想通りの言葉をかけてくださった魔女さんは、丸まった猫に囲まれながら大の字になっていました。

 暖かい日の元でまったりとした時間を過ごしているようでした。


 「魔女さん、リスについて心当たりありませんか?」


 「リスですか?」


 「お皿を割って逃げてしまって」


 魔女さんはしばらく怪訝な顔をしていましたが、納得したように眉を動かして言いました。


 「……またですか」


 「前にもあったんですか?」


 「たまに忍び込んではイタズラして何処かへ行ってしまうんですよ」


 「それは困ったものですね」


 「いつもはねこさんが追い払ってくれてるんですけど、

 こういう部屋を開けている時に忍び込んでいるようなんです。」


 「なるほど…」


 このリスによって、思いもしない大冒険にあうはめになります。


 この時のわたしたちはそれに気づくことができませんでした。


 

 

 


   


 

 

 


 


 


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